続・コンビニの店員さん   後編


2人が乗った車は、山道を走っていた。
乗馬クラブを出てから、1時間近く走っているだろうか。
沖田とセイは、先ほどから乗馬の話で盛り上がっていた。
少し小腹が空いた2人は、途中コンビニで買ったお菓子を食べジュースを飲んで、ドライブを楽しんでいた。


「馬に乗ってるときの沖田さんて、カッコよく見えましたv」
「えぇっ?? 馬に乗ってる時だけですかぁ??」
「あっ そういう意味じゃないんですけどっ!!」
「あははっ 冗談ですよぅ。 ありがとうございます♪」

セイは、今日のこの日がデートなのかどうか、もうどうでもよくなっていた。
それほど沖田と過ごしている時間が楽しいと感じている。

日が短くなっているこの時期、既に辺りは真っ暗になっていた。
暗い山道を車は山頂に向かって登っている。

「この先に何があるんですか?」
セイはだんだん対向車もなくなり、淋しくなってきた辺りを見て訪ねてみた。

「ふふっ とっておきの場所があるんですよ♪ 何かはついてからのお楽しみです」
沖田は楽しそうにもったいぶっている。
セイは、沖田となら何があっても楽しいと思っているので、不安はなかった。


「そろそろ着く頃ですね。 申し訳ないのですが、富永さん目を瞑って下を向いててもらえませんか?」
突然予想外のお願いをされ、セイは何だろうと思ったが、言われたとおりに目を瞑って下を向いた。

車は失速し、どこかに止まったようだ。
運転手側のドアが開く音がし、沖田が降りたような気配がした。
その後、助手席のドアが開いた。

「私が先導しますから、そのまま目を瞑ってついてきてもらえますか?」
沖田はセイの手を取り、ゆっくりと車から降ろした。
そして少し歩いたところで立ち止まった。

「目を開けて良いですよ」




「うわ・・あ・・」

突然目の前に広がった一面の夜景に、セイは圧倒された。
「きれい・・」
あまりの綺麗さに、セイは言葉を失って見とれていた。
セイのその横顔を見て、沖田は嬉しそうに微笑んだ。

「気に入って頂けましたか?」
「はいっ! すっごく綺麗です! 普段東京の夜景見てますが、こちらのほうが空気が澄んでいるせいか、
何倍も綺麗に見えます!」
そういうセイの瞳は、感動で少し涙ぐんでいた。

「良かったぁ。 もし気に入ってもらえなかったらどうしようかと思いました。
 実は、ここも学生時代の仲間と適当にドライブしている時に偶然見つけたんですよ。」

沖田は一旦言葉を切り、夜景に目を移した。

「それで、その時に好きな人が出来たら1番にここに連れてこようって決めたんです」


夜景に見とれていたセイは、一瞬沖田が何を言ったのか理解できなかった。
そして沖田を見上げた。

視線を感じた沖田は、セイを向き直った。

「え・・?」
やっとの事で、セイは言葉を発した。
しかし、それ以上何を言って良いのか分からない。

「私の言っている意味分かりました?」
何も言わないセイに、沖田は少し困ったような笑みを浮かべてセイに訪ねた。

「あ、あの・・」
やっと沖田の言っている意味が分かったセイは、急に恥ずかしくなって真っ赤になって下を向いてしまった。

「私は富永さんの事が好きです。 コンビニに通ってくれてる頃からずっと気になってたんですよ。 
 あなたからのメールがくるのがとても嬉しくて。 返す時も何を送ったら良いのか毎回緊張してました。
 今日誘ったのも、結構勇気がいったんですよ?」
とてもそんな風には見えないように、優しい笑顔を浮かべながら言う。

「わっ 私もいつもメールが来る度に嬉しくて、ドキドキしてましたっ!」
セイは思わずそう言い返していた。
しかし、恥ずかしくてそれ以上自分からいう事が出来なかった。

「富永さんの気持ちを聞かせてもらえませんか?」
沖田は突然真剣な顔になった。

セイは沖田のそんな顔を見てドキッとした。

「あ、あの・・  私も沖田さんの事が・・ す、すき・・です。」
セイは、ありったけの勇気を振り絞って告白した。

その瞬間セイの体は優しく抱きしめられた。

「やっと触れられました」
沖田のぬくもりの中で、セイは幸せを感じていた。

「今日1日、ずっと緊張してました。 もし富永さんに断られたらどうしようっとずっとドキドキしてたんですよ」
「とてもそんな風には見えませんでしたけど・・」

今日の沖田の行動を思い起しても、全く緊張してるようには見えなかった。
「ふふっ 頑張って平静を装っていたんですよ」

そう言ってそっとセイを離し、顔を覗き込んだ。

突然沖田の顔が至近距離ある事に、セイは恥ずかしくなり思わず顔を背けようとした。
そのセイの顔を、優しく沖田の両手が包み込んだ。
そして優しく唇が重ねられた。
セイは暖かくて柔らかい感触にうっとりと目を閉じた。





漸く唇を離した沖田は、セイの顔を覗き込んだ。
セイはそっと目を開き、沖田の顔を見る。
思わず沖田は、セイの潤んだ瞳に吸い込まれそうになった。

沖田はふふっと照れ笑いをして、もう1度セイを強く抱きしめた。
セイも沖田の背中に腕を回した。




それから2人は肩を寄せ合い、飽きることなく夜景を眺めていた。