闇
セイは寝苦しくて目が覚めた。
時計を見ようと手を伸ばそうとしたが、全く体が動かない。
声を出そうとしても、声も出ない。
かろうじて、目は見えるので周りを見渡してみる。
真っ暗な部屋の中にぼやっとした人影のようなものがセイの目に映った。
セイは息を呑んで目をこらしてその人影を見る。
暗くて良くみえないが、長い髪が見えた。
その人影はどんどんセイに向かって近づいてくる。
セイは恐怖で目をつぶった。
それはもうセイの真横まで近づいてきている気配がする。
ふと顔に何かがかすった。
そぉっと目を開くと、その人物の髪が自分の顔にかかっている。
びっくりして思わず目を開けてしまった。
すると、セイの顔をわずか10cmほどのところに見た事もない女の顔があった。
表情は全くなく、ただセイの事を見ている。
セイはあまりの恐怖に意識を失った。
「おはよー」
大学へ向かって歩いていると、親友の里乃が声をかけてきた。
「あ、里乃おはよ」
「何か、顔色ひどくない?」
里乃がセイの顔を覗き込んで心配そうにたずねてきた。
「うん、ちょっと・・」
「何かあったの?」
セイは昨日の夜あった事を里乃に話した。
「そうなんだ・・ 怖い夢見たんだね。」
「夢・・ なのかな、やっぱり。」
何だか昨日の事は妙に現実的で、夢とは思えない。
かといって、あれが何だったのかと言われれば、良く分からない。
「取り合えず、彼氏の顔見たら元気出るんじゃない?」
といって、里乃は前の方を歩いているセイの彼氏である沖田総司の方を指差した。
「あ、総司くん」
「じゃ、私は先に行ってるから、彼氏と仲良く来たら?」
と言って、里乃はウィンクしてセイから離れて先に歩いていった。
その途中、総司に声をかけ、セイがいる事を伝えてくれた。
「おはよ、セイ」
「おはよ」
付き合い始めて半年になる彼氏の総司は、とても優しくセイを大事にしてくれていた。
そんな総司をセイはとても好きだったし信頼していた。
「何か元気ないね、何かあった?」
「ううん、何もないよ」
セイは、総司に心配をかけたくなくて、昨夜の事は言わないでいた。
「そっか。 何かあったら何でも言ってね。 あ、今日帰りさ、用事ある?
おいしいって評判のケーキ屋さん見つけたんだけど」
と嬉しそうにセイをケーキ屋に誘ってきた。
そんな笑顔を見ると、昨日の事など忘れて幸せな気分になった。
「うん! 行きたい!」
「セイも今日は3間目で終わりだよね? 門で待ち合わせね♪」
「うん! 分かった。 楽しみにしてるね」
そう言って、2人は手をつないで仲良く学校へ入っていった。
その様子をじっと見ている髪の長い女がいる事に気づかずに。
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