「タイムスリップ 59」
総司は、ふらふらとしながらバスルームから出てきた。
見られた…
ばっちり見られてしまった…
しかも1番見られたくない人に…
どうせ見られるなら、もっと違う形で…
いやいや、そうじゃなくてっ!!
真っ青になったり真っ赤になったりを繰り返しながら、恐る恐るリビングのドアを開けてみた。
案の定そこにはセイの姿はなかった。
ホッと息を吐きながら、ソファに座ってみた。
何となくセイがいる場所は分かっているのだが、どうもセイの元へ行く勇気がわかない。
一体どうしたものかと考えながら、頭を抱えて下を向いてしまった。
一方セイはというと、泣きながらまだ布団の中にもぐっていた。
頭の中は、先ほどの事がぐるぐると渦巻いている。
男だらけの屯所にいる為、今までも何度か見たことはある。
でも総司のものとなれば話は別だ。
どんな顔で総司と会えば良いのだろう。
『あ、沖田先生♪ さっきはどうもでした!』
『いえいえ、こちらこそ! 何だか粗末なものをお見せしちゃったようで』
『何をおっしゃいますかっ! その… とってもご立派でした』
『かっ 神谷さんてばっvv』
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
そんな会話出来るかーーーっ!!
セイは、自分の頭をポカポカと叩いた。
『沖田先生、さっきは勝手に見てしまってすみませんでした』
『何を言っているんですか。 減るものではなし。 気にしないで下さいね』
『そんな… 私ばかりが見てしまって申し訳ないので、お返しに私のも… 見ますか?』
『えっ 良いんですか?? じゃあ遠慮なく…』
って、アホかーーーーーーーっ!!
そんな事出来るかーーーっ!!
セイは自分の顔を両手で覆いながら、ぶんぶんと顔を振った。
いつまでもここでこんなアホな妄想している訳にはいかない。
取り合えず、皆が帰ってくるまでにはお風呂に入って何事もなかったように出迎えなければならない。
そっとセイは布団から顔を出した。
リビングに人の気配を感じる。
きっと、総司がお風呂から上がっているのだろう。
セイはベッドから降りると、ドアノブを震える手でつかんだ。
きっと見た自分よりも、見られた総司の方が恥ずかしいに決まっている。
自分がこのまま顔を出さなければ、更に総司は落ち込むはずだ。
意を決して、セイはドアを開けた。
リビングに入った途端、こちらに背を向けて座っていた総司が、驚いたように立ち上がりこちらを振り返った。
「かかかかかっ」
神谷さんと言いたかったのだろうが、舌がもつれてうまくしゃべれないようだ。
セイは真っ赤になりながら下を向いて静かに総司の元まで来ると、固まったまま動けないでいる総司の隣に座った。
「・・・・・・・・・・・・」
2人は沈黙したまましばらく時間が過ぎた。
「お、沖田先生…」
「はいっ!!」
突然呼びかけられた総司は、ピンと背筋を張って元気よく答えた。
「あのっ… …お風呂… 入ってきます…」
ずるっ
思わず総司は脱力した。
「あ、はい。 ど、どうぞ…」
セイは無言で立ち上がると、リビングを出て行ってしまった。
総司は訳が分からないまま閉まったドアを見つめた。
セイは、服を脱ぎながらため息をついた。
何とか普通に話そうとしたのだが、やっぱり無理だったようだ。
恥ずかしくて顔を見ることも出来ない。
浴室に入ったセイは、シャワーを出した。
そして思いついたように、浴室のカギを閉めた。
総司に限って覗く事は考えられないが、自分のように何かあって総司が飛び込んで来ないとも限らない。
疑っているような行動を、後ろめたく感じながらもセイは髪を洗い始めた。