「タイムスリップ 58」
食事を終えた5人は、今日1日で撮った写真やプリクラを見ながらワイワイ騒いでいた。
セイと総司は肩を寄せ合い嬉しそうにお互いの写真について何だかんだと言っている。
瀬奈は、土方と下山が写っているプリクラを土方に見せながら何やら嬉しそうに言っている。
それを颯太が肘をつきながら拗ねたように見ていた。
その時、颯太が何か思いついたように手をポンと打った。
「そうだっ! スパに行きませんか!?」
颯太の言葉に、一同颯太を見た。
「スパ?」
「スパって何ですか?」
スパという単語を知らない総司とセイが不思議そうに首をかしげた。
「温泉ですよ。 都内でも天然の温泉があって、色んなお風呂が沢山あるんです。マッサージとかもあるし、きっとすっごい気持ち良いと思いますよ」
颯太の話に1番興味を示したのは土方だった。
「面白そうだな。 マッサージとは何だ?」
「肩とか腰をもんでくれるんですよ。 多分経験した事ないくらい気持ち良いと思います。 どうですか?」
「行ってみてえな」
すっかり乗り気の土方だが、セイは困った顔でそれを聞いていた。
「それじゃあ早速行きましょう! ここからだと徒歩で行けるんです」
そう言いながら立ちあがった颯太に、総司は言いにくそうに口を開いた。
「3人で行って来てもらえますか? 私は神谷さんとお留守番してますから」
その言葉に、全員が「えっ!?」と総司を見た。
「どうして? みんなで行こうよ」
瀬奈が不思議そうに訊ねる。
「いえ、私たちは大丈夫ですから… ね、神谷さん」
そう言ってにっこり微笑んだ総司に、セイは驚いて総司を見た。
「沖田先生は皆さんと一緒に行って来て下さい。 せっかくなんですから。 私はやけどの事もあるし、それに…」
そこまで言ってチラッと土方を見た。
土方は、「あぁ…」と納得したように呟いた。
颯太や瀬奈も納得したように「あっ」と小さく声を上げた。
颯太や瀬名はセイが女だと知っているが、土方はセイが例の病気だと思っている。
なので女風呂にも男風呂にも入る訳にはいかないのだ。
土方がいなければ、堂々と女風呂に入れるのだが。
「総司は行かねえのか」
土方は総司に訊ねるが、総司はにっこりとほほ笑んだ。
「神谷さんだけ行けないのも可哀相でしょ? 私たちはここでお風呂頂きますから、どうぞ皆さんで楽しんで来て下さい」
「そんな… 沖田先生も行って来て下さい。 私なら1人でも大丈夫ですから」
申し訳なさそうに総司に訴えるが、総司は笑顔でセイを見ると、「一緒にお留守番しましょ」と言った。
それを見て、一瞬スパへ行くことをやめようかと思った颯太だったが、ある事を考え2人を残して行く事にした。
「やっぱり行くのやめない?」と言った瀬名に、颯太は耳打ちをした。
すると、嬉しそうに微笑んで、颯太の言う通りにした。
「では行ってきますね。 ちょっと帰りは遅くなると思いますが、どうぞ2人でごゆっくりしていて下さいね」
颯太は、あえて”ごゆっくり”を強調して言った。
それに総司はどういう意味が込められているのか気づいてポッと頬を赤くした。
セイは全く理解していないようで、笑顔で3人を見送っている。
ドアが閉まり2人になると、急に家の中が静かになった。
「何だかいきなり2人になると、照れちゃいますね」
えへへっと笑いながら、セイが総司を見上げた。
その顔が妙に可愛らしくて、総司の心臓がドキっと鳴った。
「え、ええ。 そうですね…」
総司も急に恥ずかしくなってポリポリと頭をかいた。
2人は顔を見合わせると、どうして良いか分からず取り合えず笑った。
「じゃ、じゃあお風呂頂きますか。 瀬名さんがわかしておいてくれてるみたいだし」
「そうですね… 先生からお先にどうぞ」
「そうですか? ではすみません、お先に入らせて頂きますね」
何となくぎくしゃくしながら総司はセイに微笑むとお風呂に入って行った。
1人になったセイは、この後2人になったときどうしようか考えていた。
想いが通じたのがつい昨日の夜の事。
目が覚めると何と土方がいて、それどころではなくなってしまった。
なので、2人きりになるのはそれから初めての事だ。
何をどうするという訳ではないのだろうが、何しろ両想いになったのが生まれて初めてなので、どうしたら良いのか分からない。
真っ赤になりながら両手で顔を覆うと、はぁ〜〜〜〜っと深いため息をついた。
こちらでも大変な事になっている人物がいた。
颯太に教えられたシャンプーで頭を洗い、ボディソープで体を洗った総司は真赤になって湯船につかっていた。
決して長湯で赤くなっていたのではない。
颯太が出て行く前、誰にも気づかれないよう総司にこっそりと耳打ちしてきた事が、先ほどからぐるぐると頭の中をよぎっていた。
「せっかく2人きりになるんですから、何もしないなんて事絶対になしですよ」
驚いて顔を上げた総司に、颯太はにっこりほほ笑むと、Vサインでウインクしてきた。
そんな事出来る訳ないじゃないかと思うのだが、したい気持ちもとってもとっても強い。
かと言って、いきなりセイに迫って泣かれたらどうしよう。
今後の隊務に支障が出る。
頭を抱えてうーんうーんと唸り始めた。
どうするべきか…
したい…
したいけど出来ない…
でもやっぱりしたい…
総司は悩みすぎてどうしていいか分からなくなり、ぶくぶくと湯船に沈んでいった。
「沖田先生遅いなぁ…」
総司がお風呂に入ってからだいぶ時間が過ぎた。
いつもならとっくに上がって来ても良い時間だ。
セイは不思議に思い、浴室へ行ってみた。
「沖田先生?」
外から声をかけてみるが、返事がない。
もう1度呼んでみるが、何も聞こえない。
セイは悩んだ末、そっと浴室のドアを開けてみた。
「あれ? いない…」
中を覗くと、電気はついているのだが誰もいない。
おかしいなと思いながら中に入ってみた。
「!!!」
そこには、お湯の中に沈んでいる総司がいた。
「沖田先生っ!!!!」
驚いて、セイは浴槽に近づくと、急いで総司の腕を掴んでひっぱりあげた。
上半身を浴槽から出した状態で、名前を呼びながら顔をペチペチ叩いてみる。
すると、ようやく総司が意識を取り戻した。
「大丈夫ですか?!」
涙目になりながら総司の顔を覗き込んだ。
「先生?」
セイの呼びかけに、総司は焦点のあっていない目でセイを見る。
しばらくして、左右に動いていた目がセイを捕らえた。
「…あれ? 神谷さん?」
意識もはっきりしてきたようで、不思議そうにセイの顔を見る。
「あぁ〜っ! 良かったぁ! 大丈夫だったんですねっ!」
ホッとしたように笑顔でその場に座り込んだ。
「え? 良かったって? 私、いったい…」
そこまで言うと、総司はやっと働いてきた頭でこの状況を理解し始めた。
周りをぐるっと見渡すと、自分の体とセイを見比べる。
セイも、総司の顔から視線を下に落とした。
「・・・・・」
「・・・・・」
「「きゃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ」」
総司は叫びながら急いでセイに背を向けた。
セイは真っ赤になりながら、浴槽を飛び出る。
バンッとドアを閉めると、セイは泣きそうになりながら寝室に逃げた。
見ちゃったっ!!
見ちゃったよーーーーーーっ!!!!
最悪だっ!!!!!
どうして良いか分からず、セイはパニックになってベッドの中にもぐりこむと、布団を頭からかぶった。