「タイムスリップ 57」
「では私はそろそろ失礼させてもらうよ」
腕時計に目をやりながら、残念そうに下山が言った。
「もうお別れなんですか〜??」
セイが淋しそうに下山のスーツの裾を掴みながら見上げる。
「仕事が残ってるんでね。 もしまだこちらに長くいるようならいつでも連絡してきなさい。 オフィスにもいつ来てくれても良いからね」
「はいっ! ありがとうございます!」
セイを見てニッコリ笑うと、下山は土方へ顔を向けた。
「土方くん、色々と大変だと思うがきっと君なら大丈夫だろう。 頑張って」
「あんたに言われなくてもそうするよ」
土方はぶっきらぼうに言った。
「副長っ! そんな言い方ないじゃないですか!」
すかさずセイが土方を責める口調で食って掛かる。
「まぁまぁ、神谷さん。 土方さんは、下山さんとお別れするのが淋しいんですよ。 それを素直に言えないから、そんな言い方になっちゃうんですよv」
「あ、そうなんだ〜。 本当に副長って可愛くないんだから〜」
「うっ うるさいっ!! 誰がそんな事言った!?」
土方は顔を真っ赤にして反論する。
「あははっ そうか、君は私との別れを淋しがってくれているのか」
「阿呆! そんな訳ないだろうがっ!」
「いや、私も淋しいよ。 君たちと話していると、とても楽しかったし心が和んだよ。 やはり前世は君たちと仲間だったのかなと思えたね。 機会があれば、是非君たちの時代に行ってみたいよ」
山南の言葉に、セイは目を輝かせた。
「はいっ! 是非いらして下さいっ!」
「きっと下山さんが来たら、隊の皆ビックリしちゃいますね。 山南さんが生き返ったのかと思っちゃいますよ」
総司も、にっこりと微笑んだ。
「ではまた会える日を楽しみにしてるね。 それじゃあ」
そう言うと、下山は手を振って駅に向かって歩いていった。
「行っちゃいましたね・・・」
セイが、悲しそうに小さくなっていく後姿を見つめながら言った。
「きっとまた会えますよ」
ぽんぽんとセイの頭に手を置きながら、総司が言う。
「そうですよっ! それに、一緒に撮ったプリクラがあるじゃないですかっ! ね、土方さんv」
「な、何で俺に言うんだよっ!」
「だって、土方さんすっごく楽しそうでしたよ、下山さんと一緒にいる時」
総司がにやにやしながらそう言うと、土方はまた顔を真っ赤にした。
「うるさいっ! それよりも腹が減った! 颯太、何かおごれっ!!」
それだけ言うと、土方は1人でスタスタと歩き出した。
「ぷぷーっ!! 副長本当に面白いっ!」
「くくっ ちょっとからかい過ぎましたかねぇ」
4人は笑いながらも急いで土方を追いかけた。
一行は颯太の家に戻ってきた。
颯太と瀬奈が夕飯を作っている間、土方はテレビに夢中になっており、セイと総司はソファに座って熟睡してしまっていた。
「土方さん、水戸黄門に夢中ね」
「目、輝いてるね」
キッチンカウンターからリビングを覗いて、颯太と瀬奈は笑っている。
「そう言えば、水戸黄門ていつの時代の人なんだろう?」
「さぁ? 江戸時代?」
「水戸って言ってるから水戸時代じゃないの?」
「そんな時代あったっけ?」
「じゃあ・・・ 平安時代かなぁ?」
「戦ってるって事は、戦国時代なんじゃない?」
「戦国時代の人って、何か武装しているイメージあるけど」
「あっ! 何か大奥で見た事ある気がする」
「じゃあ江戸時代かなぁ?」
「そもそも実在の人物なのかな?」
「えーっ 知らないっ! どうなんだろう?」
「印籠とかって何の意味があるかも知らないや」
「あの中何が入ってるんだろうね?」
「印籠だから・・・ 印鑑?」
「へぇっ そうなんだぁ」
そんなお惚けな会話をしながらも、2人の手は休むことなく動いている。
「新撰組の事も全然知らなかったもんね?」
「あー、今はちょっとだけなら分かるよ。 この前年表見たもん」
「私も仕事中見たーっ。 素材選ぶ振りして色々見ちゃった。 そしたら何か京都行きたくなっちゃったよ」
「僕もまだ1回も行った事ないからなぁ〜。 今度の連休にでも行く?」
「本当? 嬉しいvv」
頬をほんのりピンクにして、瀬奈が微笑んだ。
「あははっ じゃあ今度京都のパンフレット見ながらコース選ぼっか」
そう言うと、颯太は出来上がった料理をリビングに運び始めた。
「いただきまーす♪」
颯太に起こされた2人は、嬉しそうに手を合わせた。
「美味しーっ!」
「本当だっ! これはなんていう食べ物ですか?」
料理を口にした料理にビックリした。
「今日は、中華にしてみました♪」
「中華?」
「外国の食べ物ですよ! これが餃子で、これは春巻き。 ご飯はチャーハンにしてみました」
颯太の説明が全く理解できなかったが、とにかく美味しいのでセイと総司は微笑んだだけで無言で食べ続けている。
「土方さん、食べないんですか?」
まだ水戸黄門に釘付けになっている土方に、颯太は声をかけた。
「待て! 今良いところなんだっ!」
テレビを覗き込むと、ちょうど助さんと角さんが決まり文句を発しているところだった。
「もう少しで終わるみたいだから、最後まで見させてあげましょ」
「そうだね・・」
水戸黄門を見終えた土方は、感動のせいか嬉しそうに何やら考えながら颯太の作った食事を食べ始めた。
いつの頃からか、新撰組が斬り合いをする際には必ず伍長が組長の左右に立ち、「このお方をどなたと心得る」と言い出したとか言い出さなかったとか・・・