「タイムスリップ 56」



「いただきまーすv」
総司は、特大のパフェを前にして、ニコニコ顔で両手を合わせた。
そして、おもむろにスプーンでアイスをすくって口に入れた。

「冷たっ!!」
初めて食べるアイスに、びっくりして体を仰け反らせた。

「大丈夫ですか、沖田先生!?」
こめかみの辺りを押さえて苦しそうにしている総司を、心配そうにセイが覗き込む。

「大丈夫です‥ それよりも‥」
「それよりも?」
「これっ、めちゃくちゃ美味しいですっっ!」
とたんに顔を輝かせてそう言う総司に、セイは唖然とした。
「はいっ!?」
「神谷さんも食べてごらんなさいよ」
そう言うと、スプーンにアイスをすくってセイの口元に持ってくる。

「えっ、ちょっと沖田先生っ」
顔を赤らめながら、戸惑うセイにかまわず、総司は更にセイにスプーンを近付ける。

「はい、あーーんv」
「えーっ!!」
「良いからっ! ほらほら」
「先生、あーんって! 恥ずかしいから辞めてくださいよっ」
「もうっ、早く口あけてっ! あーーーーんv」
尚もうれしそうに勧めてくる総司に諦めて、セイは仕方なく口を開ける。

口に含んだ瞬間、経験した事のない甘さと冷たさが口に広がった。

「ホントだ‥ 美味しい‥」
セイは感動して口に手を当てた。

「でしょう? はい、もう一口! あーん」
そういって更にアイスをセイに差し出したとき。

「おめえら、いい加減にしろよ」

総司の言葉に思わず口を開いたセイは、怒気を含んだ声に思わず口を開いたまま固まってしまった。

「誰も何も言わねえのを良いことに、2人きりの世界を作りやがって!」

青筋を浮かべた土方が、拳を握りしめわなわなと震えながらこちらを睨んでいる。

そうだった‥
ここには土方を始め、颯太や瀬名、それに下山もいたのだ。

他の3人は、苦笑いを浮かべて2人きりの世界に浸っている総司とセイを見ていた。

セイは真っ赤になりながら、総司から離れて姿勢を正した。

「えー、何ですよう? 美味しいから神谷さんにも食べさせてあげようとしただけじゃないですかー」
ほっぺをぷーと膨らませながら、総司はセイにあげるはずだったアイスを自分でパクッと食べた。

「何があーんだ! 男同士のくせに気持ち悪い!」
「仲良しなんだから良いじゃないですか。 ねぇ、神谷さん」
総司の言葉に更に真っ赤になり、セイは俯いた。

「あ、もしかして土方さんも食べたかったんですか? もー、言ってくれれば良いのに」
「アホか! んなもんいるか!」
「遠慮しないで。 はい、あーーんv」
「うるさいっ! 俺はそんな得体の知れないようなもん食べないんだよっ」
土方は、総司の差し出した手を払った。

「まあまあ、土方くん、良いじゃないか。 そんなカリカリしなくても」
見かねた下山が声をかける。

その言葉に、総司とセイ、そして土方がハッとして下山を見た。

「な、何だい?」
一斉に注目を浴びた下山は、たじろいだ。

「今の、山南さんにそっくりでした・・・」
「本当に・・・ それに土方くんって・・」
総司とセイは、嬉しそうに山南
「いや、だって土方くんだろう?」
「でも、今の言い方は山南先生でしたっ! やっぱり山南先生なんだ〜っ!!」
セイは改めて山南の生まれ変わりだと認識すると、席を立って下山に抱きついた。



ピキッ


その場にいる全員に聞こえるような音がそこには鳴り響いた。

「せ、清三郎さんっ!」
その音が総司から発せられた事を瞬時に判断した颯太が、慌てて下山からセイを引き剥がし、元いた場所に座らせた。

「今日下山さんは、この後はお忙しいのですか?」
颯太は、この場の空気をどうにかしようと取り合えず話題を反らせた。
「この後かい? 1度事務所に戻ろうとは思っているが、急ぎはしないよ」
「そうですか・・・」
下山を呼んだは良いが、この後のことまで考えてはいなかった。
とても盛り上がっているとは思えないこの場を、どうしようか颯太の頭の中はパニック状態だ。

「あのー・・・ 私に良い考えがあるんだけど・・・」
黙って状況を見ていた瀬奈が、突然言葉を発した。







「うわーーーっ!! 何ですか、これはっ!」
「ちっちゃーーい! それにめちゃくちゃ可愛いっv」
総司とセイは感動して目を輝かせていた。

「これはプリクラって言うんですよ。 これをこうやってめくってシールにする事も出来るんです」
そう言うと、撮ったプリクラを1枚めくって自分の携帯に張った。

「本当だー♪ 私達の周りに可愛い絵のようなものがいっぱいあって、すっごく楽しいです〜っ」
プリクラをマジマジと見ているセイに、颯太は満足そうに微笑んだ。

「じゃあ、今度は下山さんと土方さんで撮ってみてはいかがですか?」
「はっ!? 何で俺がそんな恥ずかしい真似しなきゃいけないんだよっ!!」
真っ赤になりながら後ずさる土方の腕を、颯太は掴んで中へ招き入れた。
「いいじゃないですか、思い出になりますよ? 向こうに戻ってからも、これをもっていれば、ずっと下山さんの事見てられますし」
「何で俺が山南さんを見てなきゃいけないんだよっ」
「土方くん、一緒に撮ろうじゃないか。 私も初めてなんだが、新撰組の副長となら是非撮ってみたいね」
下山は乗り気でお金をプリクラの機械に投入している。
「えーっ 山南先生となら私も撮りたいですーっ」
セイが颯太と下山の顔を見比べて懇願する。
「じゃあ私も入りますっ!」
総司が負けじと参加する。
「じゃあ4人でどうぞ♪」
撮り方を教え、落書きの仕方を教えてやる。
最初は嫌がっていた土方だったのだが、何枚か撮るうちにだんだん楽しくなってきたようだった。
画面を見ながら、色んなポーズを試し始めた。
そして、落書き画面になるといち早くペンを手に取った。
「今度は俺が書く!」
そう言うと、撮ったプリクラの画面にペンで何やら書いている。


『新撰組ハ永久ニ不滅ダ』


「センスなー・・・」
「何か聞いたことあるようなフレーズね」
満足そうに微笑んでいる土方を見て、颯太と瀬奈は小さな声で呟いた。

「それにしても沢山撮りましたねぇ」
カップリングを色々と変えて撮ったプリクラは、10枚以上になった。
金額にして8000円。
時間も相当かかったようで、順番を待っていた人たちは不満そうな顔でこちらを見ている。

「何か私達調子に乗ってかなり回りに迷惑かけちゃったみたいですね・・・」
「そうね・・・ とりあえず出よっか」
颯太と瀬奈が4人を促し、ゲームセンターを出た。

「良いお土産になりましたね」
「はいっ! 向こうへ戻って皆に自慢しちゃいましょうねv」
総司とセイは大切そうにプリクラを持ち、微笑みあった。
その後ろでは、土方もほんのり頬を染めながら、じっとプリクラを眺めていた。