「タイムスリップ 52」
「かっこいい・・・」
「ふ、副長・・・」
セイと瀬奈は、目を輝かせながら土方を見ていた。
自分の地元がどうなっているか知りたいと言い出した土方を連れ出そうとしたのだが、さすがにこの格好のままではまずいと颯太の服を片っ端から引っ張り出して着させた。
始めは、どれが良いかとあわせているだけだったのが、途中から何を着ても似合ってしまう土方に全員が楽しくなって次々と着替えさせ着せ替え人形と化していた。
最後に、颯太は一張羅として持っていた、瀬奈とのデートで初めて行った高級レストランの為に新調したスーツを着せてみた。
すると驚くほどスーツが似合い、更に土方オーラが強まったようだった。
「何だよ、そんなじろじろ見るなよ」
さすがに何着も服を着せられて不機嫌になっていた土方だったが、全員からキラキラとした目で見られている事に、少し照れたように頬を染めていた。
「何か私なんかよりも似合っちゃってますね」
悲しそうに土方を見る颯太に、瀬奈もぽんぽんと肩を叩く。
「副長は、こっちでも女の人を虜にしちゃうんですね」
セイは、顔に手を当ててほんのり頬を染めている。
「うるさいっ! この服は何か面倒だ。 歩きづらいし。 お前らが履いてるようなのを出せ」
恥ずかしくてどうして良いか分からなくなった土方は、颯太や総司が履いているジーパンを指差しながら叫んだ。
「えー、どうしてですか? それに合ってるんだから、それで行けばいいじゃないですかぁ」
セイは残念そうに言う。
「そうですよ。 土方さん、本当に素敵です」
瀬奈は、目をハートマークにして土方を見ている。
その2人の様子を面白くなさそうに見ている2人がいた。
「ちょっと、沖田さん。 何でこの人をこっちに連れてきたんですか」
「知りませんよ。 私が連れてきた訳じゃないんですもん。 あなたがあの指輪とかいうのを向こうに置いてきたのが原因でしょう」
「はぁ!? 何で私の責任なんですか。 寝てる間にこっちに来てしまったんだから仕方ないじゃないですか」
「そんな事言って、瀬奈さんが土方さんの事好きになっちゃっても知りませんよ」
「何ですって!? それは許せませんっ!」
こそこそ話していた2人だったが、突然叫んだ颯太に驚いて一斉に皆が颯太を見た。
「どうしたの?」
瀬奈が不思議そうに尋ねる。
そんな瀬奈の肩を掴んで、颯太は泣きそうになりながら叫んだ。
「あなた私を捨てて、土方さんのところに行くつもりなんでしょう!!」
「は?」
「だって、今土方さんに好き好き光線出してたでしょ!」
涙目で叫ぶ颯太に、瀬奈は心底呆れた顔をしている。
「颯ちゃん・・・」
「土方さんは、今すぐこっちに着替えてください!」
そう言うと、颯太はジーパンとTシャツを土方に渡した。
「えー、副長この格好良かったのになぁ」
「神谷さんまで何を言ってるんですか! 土方さんは、この服で十分です!」
総司も、普段敵対している2人なのだが、土方にどこかメロメロになっているセイに不安を感じ始めた。
「貸せっ!」
土方は、颯太から服をもぎ取ると、着替える為に寝室へと入っていった。
「あーあ」
残念そうにため息をつくセイと瀬奈の隣では、ほっと胸をなでおろす颯太と総司がいた。
「まずいですね、沖田さん。 まさかのライバル登場になってしまいましたよ」
「そうですね。 瀬奈さんはともかく、まさか神谷さんまで土方さんの事をあんな目で見るとは思いませんでした」
内心穏やかでない2人は、今後の要注意人物として土方をマークする事になった。
「土方さんのご実家は、まだ存在しているようですよ」
ネットを見ながら、颯太は住所をメモしている。
「本当か?」
140年経った時代に、まだ自分の実家があるという事に土方は感動していた。
「多摩方面には、新撰組の縁の地が沢山残っているみたいですね。 全部回るのはさすがに難しいかなぁ・・」
颯太は色々と調べながら口に出す。
颯太や瀬奈としては、縁の地を回りながらも新撰組の末路が分かってしまわないように気をつけなければと思っていた。
2人も新撰組にはあまり詳しくない。
なのでそのような場所へ行った事がない。
実際に行ってしまって3人にバレてしまわないかが不安だった。
「とにかく、行って考えますか・・」
颯太はそう言うとPCを落とした。
「ここからだと、1時間くらいかしら」
瀬奈も路線を調べながら腕時計に目をやり言う。
「1時間?」
時間の感覚が分からないセイは不思議そうに尋ねる。
「半時って意味よ」
瀬奈は、得意げに答える。
セイがこちらへ来てから、全く知らなかった江戸時代の事を仕事中の合間などを見て調べていたのだ。
「今瀬奈さんが見たのは何ですか?」
セイは、瀬奈の腕時計に興味を持った。
「これで時間が分かるの」
「へぇ〜っ」とセイは嬉しそうに瀬奈の腕時計に見入っている。
セイは土方がこちらへ来たので、さすがにスカートははけなかった。
と言っても、他に着るものもなくセイも皆に合わせてジーパンを着させてもらった。
「良かったら、セイちゃんにあげようか?」
「えっ!?」
「私いくつも持ってるの。 自分の家に帰らないとないけど、もし欲しければこれあげる」
そう言うと、瀬奈は自分の腕にはめていた時計を取ってセイに渡した。
セイは嬉しそうに受け取る。
「いいんですか?」
「うん、私には颯ちゃんからもらった時計もあるし、それ安かったから」
「ありがとうございます!」
瀬奈に礼を言うと、セイは嬉しそうに総司の元へ駆け寄り総司に見せた。
「良かったですね。 大切にしましょうね」
ニコニコと報告してきたセイに、総司も嬉しそうに笑っている。
「では行きますか。 土方さんのご実家へ」
「そうですね、楽しみですね〜」
土方は、自分の実家が140年経ちどうなっているのか不安と楽しみでいっぱいだったし、総司は近藤や土方らと共に育った地がどうなっているか楽しみで仕方なかった。
セイは、総司の育った地を見たいと思っていた。
しかし颯太と瀬奈に関しては、どうやって3人に新撰組の最期を知らせないようにするかばかりを考えていた。