「タイムスリップ 51」
総司の頭は混乱していた。
何故ここに土方がいるのか。
ここには例の指輪を持ち、それが光らないと来れないはずだ。
あの指輪は確か颯太が持っているはず・・・
・・ん?
颯太が持っていると思っていたのだが、こちらに来てから颯太が持っているのを見ていない。
こちらの時代へ来る直前の事を良く考えてみた。
宿で寝ている間に自分達はこちらへ来たのだ。
その時の荷物は全て向こうに置いたままだ。
あれ?
という事は・・・?
総司は、ふと土方の手を見てみた。
右手には、颯太のものと思われる携帯電話がもたれており、左手は握られている。
総司は苦い顔をして固まっている土方へ近寄り、握られている左手を開いてみた。
「あ・・・」
案の定、土方の固く握られた手の中から指輪が出てきた。
「土方さん・・・ もしかしてこれが・・・?」
「お、お前らの荷物を引き上げたときにこれがあったから、何気なく持ってみたんだ。 そしたらいきなり光りやがって・・・」
やはり予想通りだ。
「お前らがいるって事は・・・ もしかして・・・ ここは・・」
大体の予想はついているが、認めたくない。
「残念ながら、颯太さんのいる時代ですよ」
総司はニコニコと答える。
やっぱり(涙)
「とうとう土方さんまで来ちゃったんですね♪」
はじめこそ驚いていた総司だったが、土方がこちらに来たことが嬉しくて仕方がない。
「な、何でお前はそんなに嬉しそうなんだ」
「だって土方さんに会えて嬉しいんですもんっ」
「俺は嬉しくねぇっ!!」
思わず叫んだ土方の口を、総司は慌てて押えた。
「しぃ〜っ!!」
「もがっ もがっ」
いきなり口をふさがれた土方は、驚いて手をばたつかせた。
「もうっ! 静かにして下さいよっ! 神谷さんが寝てるんですから」
総司に言われてベッドに目を落とすと、すやすやと気持ちよさそうにセイが寝ている。
手を放された土方は、ぷはーっと息を吐いた。
「つーか、何でこいつはこんな状況で寝てやがるんだっ!!」
「だって、私達はさっき寝付いたばかりなんですよ? それに土方さんが来るなんて事誰も予想してませんでしたから」
そりゃーそうだ。
しかし土方としては自分がこんなにテンパっているのに、落ち着いている総司とその横で寝ているセイが気に入らない。
「だがな、総司・・」
「あの〜、すみません。」
話し出そうとした土方を、総司が申し訳なさそうにさえぎった。
「何だ」
「私も・・ その・・ ものすごく眠くて・・」
そう言いながら、総司は「ふぁぁぁ」っとあくびをした。
「何だとっ!?」
「後でゆっくり話聞きますから、取り合えず寝てもいいですか?」
そう言うと、総司は土方の返事も聞かずセイが寝ているベッドに入った。
「お前っ! 勝手に寝てんじゃねぇ! つーか何で神谷と一緒に寝るんだよっ! 気持ち悪い!!」
「だって他に布団ないじゃないですかぁ・・ あ、土方さんも寝ます?」
既にまぶたを閉じた状態で総司は訪ねる。
「寝るかっ! 俺はさっき起きたばかりなんだよっ!!」
「じゃあ、この家の中でも見学してみたらいかがですか? 見たことないものばかりで面白いですよ」
「お、おいっ! 寝るな!」
土方の必死の呼びかけもむなしく、総司からは寝息が聞こえてきた。
こ、こいつ・・・(怒)
青筋を立てながら総司を見下ろしていた土方だったが、起きそうにない総司に諦めてその場に座り込んだ。
そしてぐるっと部屋を見回した。
気がついたときにはこの部屋にいた。
部屋の中は外からの月明かりのみで薄暗かったが、見たことないものばかりなのが良く分かった。
総司たちがいなくなったと聞いた時、颯太の時代にいってしまったのだと予想がついた。
ショックを受けたものの、実はほんのちょっとだけ羨ましかった。
颯太が持っていた携帯が引き上げてきた荷物の中にあるのを見て、興味がわき手にとって見た。
色々と触ってみたのだが、どうも使い方が分からず困っているところにこの指輪を見つけた。
何故かほんのり光を帯びていた。
不思議に思い、じーっと見ていると急に目が開けていられないほどの光を放った。
そして気がついたらここにいたという訳だ。
はぁ〜っと土方はため息をついた。
そして、諦めたように総司たちの寝ているベッドにもたれかかった。
いくら考えてもどうしようもない。
ここは、男らしく事実を受け止めるしかない。
そう思った土方は、ゆっくりと目を閉じた。
「ようこそ、土方さんv」
「は、初めましてっ」
颯太は嬉しそうに、瀬奈は顔を真っ赤にして土方と向かい合っていた。
憮然とした表情の土方は、黙ってソファに座っている。
セイはというと、信じられないといった表情で土方を見ていた。
「ふ、副長まで・・」
「何だ」
思わずつぶやいた言葉に、土方はセイを睨んだ。
「いえ、何でも・・ それにしても・・・」
そこまで言うと、セイはぷぷっと噴出した。
「何笑ってるっ」
「ぷぷっ だって・・ 副長、ここにいるのが似合わないなぁ〜って」
全員が現代の洋服を着ている中、土方だけがこの場で浮いていた。
まるで合成されているかのような。
しかも、何やら土方オーラを放っている。
「うるさいっ! それにしても、お前は何で女みたいな格好をしているんだ?」
土方の問いかけに、その場にいる全員が固まった。
「あっ 違うんですっ! 清三郎さんの体系が瀬奈と同じで、他に着る服がなかったから着てもらってるだけなんですっ」
「そ、そうなんですっ! ちょうど私の服がぴったりでっ」
颯太と瀬奈が、慌ててフォローを入れる。
「ふーん」
それほど興味もなさそうに、土方が答える。
「と、とにかく、ご飯っ! ご飯べましょう! それからゆっくりこれからの事を考えませんか?」
颯太の提案に、総司が嬉しそうに微笑んだ。
「いいですねぇ! 私、もうお腹ぺこぺこなんですよっ!」