「タイムスリップ 50」
総司とセイは、ベッドの上に向かい合って正座をしていた。
2人とも下を向いたまま顔を赤く染めている。
その様子は、どうみても新婚初夜の2人のようだった。
そろそろ横になりましょう と声をかけたいのだが、総司はどうしてもその一言が言えないでいた。
「お・・沖田先生・・・」
たまりかねたセイが、おずおずと声を発した。
「はっ はひっ」
緊張のあまり、思わず声が裏返ってしまった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
長い沈黙が流れる。
「ぷっ」
「・・・ぷっ?」
「あっははははははっ やだぁ、沖田先生ったら〜!」
それまで緊張していたセイだったが、総司が自分以上に緊張しているのが分かり、思わず噴出してしまった。
お腹を抱えて笑っているセイを、総司は何とも言えない顔で見ている。
「も、もう〜っ お腹痛い〜っ」
「か、神谷さん??」
尚も苦しそうに笑っているセイに、総司はどうして良いか分からない。
「す、すみませんっ だって あまりにも先生が・・・」
笑いすぎて涙が出てきたのを拭いながら、息を整えようとしている。
「えっ えっ 私が何でしょう??」
何をそんなに笑われているのか分からず、総司はオロオロし始めた。
「違うんです。 安心したんです」
「安心?」
「だって、緊張してるのは私だけかと思ったら、私以上に沖田先生が緊張しているのが分かって。 そう思ったら何だかおかしくなってきたんです」
すっかり緊張が解けた様子のセイは、にこにこと総司を見た。
「あ・・ そうですか・・・」
そんなセイを見ていたら、総司も何だか緊張が解けてきたような気がした。
「2人きりで寝るって言ったって、いつも屯所でも隣同士で寝てるのに、何構えちゃってるのかなって」
「た、確かにそうなんですけど・・」
総司は頭をぽりぽりかきながら、恥ずかしそうに微笑んだ。
「こうしませんか? 布団に横になって、眠くなるまでお話しするって言うのは」
セイは、人差し指を立てながら可愛く首を横に傾けた。
総司は、その姿にドキッとしてしまう。
「そうですね・・ そうしましょう」
「今頃局長や副長は沖田先生の事心配してるでしょうね」
「そうですね〜、でもきっと土方さんは事情を知っているし、大丈夫でしょう」
総司とセイは、とりあえず布団に入り向かい合って話し始めた。
颯太のベッドはクイーンサイズで少々大きいため、2人の間には少し距離がある。
何となくどちらともなく近づけないでいた。
「兄上は心配していらっしゃいますかね? 何だか思い出したら会いたくなってきてしまいました」
セイは、斉藤の事を思い出し、少し寂しそうな顔をした。
それを見て、総司はふふっと笑った。
「心配はしているでしょうね。 でも大丈夫ですよ。 斉藤さんも颯太さんに会いましたし、事情は知ってます。 きっとあなたの帰りを待ってると思いますよ」
それを聞いて、セイはほっと安心した。
「良かった。 私、もうこっちに来て何日も経ってしまっているから忘れられていないか心配です」
「きっとそれはないですよ。 あなたが帰ってくるのをきっと皆が楽しみにしていますよ。 早く帰れればいいですね」
そういって、2人は微笑みあった。
その後も2人は色々な話をした。
思いが通じ合ったからと言って、話す内容は新撰組のこと、甘味のことばかりだったが、今までとは違う甘い空気が流れていた。
「・・・って事なんですよ。 神谷さんはどう思いますか? ・・・ってあれ?」
総司は、セイから返事がない事を不思議に思って暗闇の中目を凝らしてセイの顔を覗きこんだ。
すると、耳を澄まさないと聞こえないくらいの小さな寝息を立てて、セイが眠ってしまっている。
「寝ちゃったんだ」
総司は、ふふっと笑ってセイの肩に布団をかぶせた。
総司もそろそろ限界だなぁと思っていた。
ふぁぁぁっとあくびをして、そっと目を閉じた。
しかし、また目を開くと、セイに近づきセイを自分に引き寄せた。
ぎゅっと腕の中に抱くと、また目を閉じた。
その顔は、とても幸せそうだった。
「・・・おい」
どこかから声が聞こえる。
「おい、起きろ」
総司は、寝ぼけたままどこかからか聞こえる声を聞いていた。
『さっき寝たとこなんですよぅっ 誰だか知りませんけど起こさないで下さいよ』
寝ぼけている総司は、1人心の中でつぶやいた。
そして、また深い眠りにつきそうになったその時。
「起きろって言ってんだろっ!!」
突然ボカっと頭を殴られた衝撃で、総司は目を覚ました。
目の前には、自分の腕の中で気持ちよさそうに寝ているセイがいる。
ぱぁっと周りを見渡すが、誰もいない。
気のせいかと思い、もう1度目を閉じて寝ようとした。
「寝んじゃねぇっ!!」
更に強く殴られた総司は、驚いて後ろを振り向いた。
「!!!!?????」
目の前には、苦い顔をした土方が、仁王立ちで立っていた。
「ひ、土方さんっ!!」
あまりに驚いた総司は、一気に眠気が吹き飛びその場に起き上がった。
「な、何でここに!?」
そう言った後、総司は元の世界に戻ってきたのかと思い、再度周りを見渡してみた。
しかし、ここは颯太の部屋。
げっ うそっ まじでっ!?
総司はぎぎぎっと音がするほどぎこちなく土方を振り返った。
「土方さん・・・ もしかして・・・」