「タイムスリップ 48」


「え? 今何て…?」

総司の心臓は、飛び出るのではないかというくらいバクバクしている。


セイはというと、何を言われたのか良く分からずじっと総司を見ている。





長い沈黙が、2人の間に流れた。



「そ…それはどういう意味でしょうか」
沈黙を破ったのはセイだった。

「えっ ど、どういう意味って…」
聞き返された総司は、顔を真っ赤にしてもじもじと下を向いてしまった。

「だ、だから私の好きな人が… 神谷さんだったら… ど、どうしますか…」
どんどん声が小さくなる。

それを聞きながら、セイもみるみる赤くなっていく。
「それは… 単なる例え話… ですよ…ね?」

その問いに、総司は何と答えて良いのか分からず、下を向いたまま顔を上げられなくなってしまった。


本当に好きなのは、神谷さんなんです。

と、一言言えば良いのに、どうしてもその言葉が言えない。




「例え話なら、聞かなかった事にします」
おずおずと、セイが言葉を発した。

「えっ!?」
総司は驚いて顔を上げた。

「だって、そんな話を例え話として聞きたくないですもの。 それに、言いたくないならこれ以上聞きません。 よく考えたら、そこまで私が口を出すのはおかしな話ですからね」
そう言うと、セイは悲しそうな顔をして微笑んだ。

その笑顔に、総司はドキっとした。
何だかその表情が、すごく綺麗で大人びて見えた。

「か、神谷さん…?」
「じゃあ、このお話はもうやめましょう。 私、本当に眠くなってしまいました。 先生はどうぞ皆さんとお話して来て下さい。 私1人で寝られますから」
そう言うと、セイは布団をかぶろうとした。




しかし、突然総司の手がそれを制した。

「えっ!?」
突然の行動に、セイはびっくりした。

「待ってください。 まだ話は終わってません」

手首を掴まれ、至近距離にある総司の顔にセイはどきどきした。

「もうこうなったらはっきり言います。 良いですか?」
真剣なまなざしでセイを見つめた。

「は… はい…」
セイは、緊張しながらそう答えるのがやっとだった。


総司は、ふぅっと大きく息を吐いた。


「私の好きな人は… 神谷さん、あなたなんです」




セイの頭の中は、真っ白になっていた。



先生の好きな人が… 私…?
それって それって… 
一体どういう事…?


「さっきの例え話の続きですか?」
「いいえ、違います」
セイの問いに、総司はきっぱりと答えた。

「私は、きっともうずっと前からあなたの事が好きだったんです。 でもそれに気づかなかった。 …と言うよりも、気づかないようにしていたんです」

セイは、頭がボーっとして来たのを感じた。

「颯太さんに出会って、気づかされました。 あなたが突然消えてしまってから、この数日気が気じゃなかったんです。 こんな知らない時代にいても、どこか安心していられるのは、あなたと一緒だからなんですよ、神谷さん」

先ほどまで言うか言うまいか悩んでいたとは思えない程、饒舌に話している事に、総司自身が驚いている。

「え…」
セイは、総司の顔を見つめながら、ボーっとしている頭を何とか働かせようとした。


「私の好きな人は言いました。 だから、今度は神谷さんの好きな人を教えてください」
その言葉に、やっとセイの頭か稼動し始めた。

「私の…?」

「はい。 教えてくれますか?」

自分ではないかも知れない。
でも、それでも良いと総司は思っていた。

やっと自分の気持ちをセイに伝えられた。
気持ちがかなり軽くなっていることに気づいた。


「私の好きな人は…」
総司の目を見つめながら、ゆっくりと話し出した。

「今、私の目の前にいらっしゃる方…です」

それを聞いた総司は、一瞬心底驚いた顔をしたが、すぐに飛び切りの笑顔になった。

「それは… 私という事で良いのでしょうか…?」
ニコニコと尋ねる総司に、セイは頬を赤く染めながら頷いた。

「私たち、両想いだったんですね」
そう言うと、総司はセイの前髪を優しくかき上げた。

総司は、セイをじっと見つめた。
セイもドキドキしながらも、総司を見つめ返す。

何ともいえない甘い空気が2人の間に流れた。



と、その時。


「お取り込み中失礼しま〜す」

空気をぶち壊す、間抜けな声が聞こえた。

声の方を振り向くと、ドアを少し開けた隙間から颯太と瀬奈が顔を覗かせていた。

「颯太さんっ!」
総司とセイは、びっくりして バッと離れた。

「ももももしかしてっ ずっと見てたんですか!?」
総司は、さきほどの会話を聞かれていたのかと、心底恥ずかしい気分になった。

「えぇ… まぁ…」
颯太と瀬奈は、嬉しそうにニヤけながら、部屋へ入ってきた。

セイは、あまりの恥ずかしさに固まっている。


「何だかうまくいったみたいでよかったです♪」
「本当に。 やっとって感じだよね」

「はぁ…」
総司はどうして良いか分からず、そう答えるのがやっとだった。

「もし良かったら、お祝いに飲みなおしませんか? さっきは何だか中途半端な感じになっちゃったし」
「もし酔いが冷めちゃってるなら、飲もうよ。 ね、セイちゃん」
半ば無理やり腕を引かれた総司とセイだったが、このまま2人でいるのも何だか気恥ずかしい気分だったので、少し残念に思いながらも促されるまま、またリビングへ向かった。