「タイムスリップ 47」
もしかして神谷さんの好きな人って…総司は、自分の頭に浮かんだ事が信じられなかった。
まさかと思う。
いやいやいやいやっ!!
絶対そんな事あるはずがないっ!
でもいくら考えても、これまでの全ての状況を思い浮かべると、たどり着く結論は1つだった。
1人顔を赤くして、首をぶんぶん振ったり上を向いて考えている総司を、セイは泣くのを忘れて唖然と見ている。
「沖田先生…?」
あまりに不気味な行動に、セイは思わず呼びかける。
「はっ はいっ!」
自分の世界に入り込んでしまっていた総司は、セイの呼びかけに慌てて返事をした。
「あの… 一体どうしたんですか?」
怪訝な表情で訪ねてくるセイに、総司は何となく目を合わせられなかった。
「いえっ 何でもありませんっ」
慌てて顔を逸らして答える。
しかし、セイはじっと総司を見上げてくる。
ううぅ 勘弁してくださいよぅ
そんな見つめられたらどうして良いか分からないじゃないですかっ!
総司はどうして良いか分からずそわそわし始めた。
「沖田先生、何かあったんですか?」
すっかり泣き止んだセイは、布団から這い出てベッドに座った。
「だから、何もありませんてばっ! って、どうして起きてくるんですか!? 眠いのではなかったんですか?」
また、拷問の時間が始まるのかと、総司は慌てた。
「だって、先生の様子がおかしいんですもん」
「おかしくありませんてばっ!」
「いいえ、おかしいです! 何があったのか教えて下さい!」
セイは、きっと自分が総司に何かしたのだと思い込んでいる。
「本当に何もありませんてばっ! もうお願いですから寝てくださいよぅ」
そう言うと、総司はセイを無理やり布団に押し込もうとした。
「ちょっ! せんせっ!?」
セイは何が何だか分からず抵抗する。
2人でバタバタとしている間に、思わず総司はセイを押し倒す形になってベッドに倒れこんだ。
総司の顔の目の前にセイの驚いた顔がある。
ばっと急いで総司は起き上がった。
「すっ すみませんっ!」
総司は真っ赤になって叫ぶように謝った。
「いえ…」
何だかきまづい空気が2人の間に流れた。
「沖田先生…」
沈黙をやぶり、セイが小さな声で総司を呼んだ。
「な、なんでしょう?」
「…先生の好きな人って誰…ですか?」
セイの質問に、総司はセイを振り返った。
「どうして… そんな事聞くのですか?」
「どうしてって…」
セイは恥ずかしそうに顔を赤らめて総司から視線を外した。
「…気になりますか」
「…」
総司の問いに、セイは答えなかった。
あなたです。
喉まででかかった言葉を、総司は飲み込んだ。
言ったらどうなるのだろう?
これまでの事を思い返して見た時、総司の頭に浮かんだ人物。
それは自分だった。
もしかして、セイも自分の事を思ってくれているのではないだろうか?
しかしそんな都合の良いことがあるのだろうか。
聞きたい。
めちゃくちゃ聞きたい。
でもこんな気持ちになった事も、こんな状況になった事も生まれてから1度もない。
もしセイの好きな相手が自分ではなかったら?
その時には、今後どうやってセイと向き合っていけば良いのか全く総司には分からなかった。
「教えて下さい」
セイは、小さいがきっぱりとした口調で言った。
総司は、心臓が口から飛び出すのではないかというくらい、ドキドキしている。
言うべきか、言わざるべきか。
総司の頭は珍しくフル回転していた。
考えて考えて考えて…
そして、良く分からなくなった。
ごくっと唾を飲み込んだ。
もうどうなっても良いような気がしてきた。
きっと、自分の気持ちがセイに伝わったからと言って、きっとセイの自分に対する態度は変わらない。
もしセイの思う相手が違ったとしたら、この事は忘れてくれと一言言えば良いのだ。
「じゃ、じゃあ、もしもですよ?」
総司は、セイを見つめた。
「はい」
セイも、総司をじっと見上げてくる。
「あなた…だと言ったら、どうしますか?」