「タイムスリップ 44」


「うわぁっ これは何てお酒ですか?」
「甘くて美味しいですねぇっ」
セイと総司は、颯太から注がれたお酒を一口飲んで、感動していた。

「これはワインというお酒で、ブドウのお酒なんですよ♪」
颯太は、喜んでいる2人を見て嬉しそうに話した。

「ワインかぁ〜。 初めて飲みました。 しかも色が赤いって不思議な感じがしますね」
セイはあまりの美味しさに、既にグラスを開けてしまっていた。
それを見て、颯太はまたグラスにワインを注いだ。

「これは赤ワインなので赤いのです。 白ワインというのもあって、透明のものもありますよ」
颯太は得意気に説明を始める。
総司もちょぼちょぼと舐めるようにワインを口にしている。
「こちらに長くいると、元の時代に戻れなくなりそうですね」
総司は苦笑いしながらぐるって周りを見渡した。
「先ほどからもしかして・・・とは思っていたのですが、こちらでは気温も調整する事が出来るんですね」
「そうですよ。 あれがエアコンと言って、暑い時には涼しく出来るし寒い時には暖かくする事が出来るものなのです」
「すごいですねぇ・・ 京の夏は本当に厳しいのですよ。 そのようなものがあれば、隊士達はたちまちサボり始めてしまうでしょうね」
そういうと、総司は皆がエアコンの下で涼みながらだらしな格好で寝転がっている姿を想像して苦笑いした。

「沖田さん、もっと江戸時代のお話聞かせて下さい。 私、歴史苦手だったからあまり良く知らないの。」
話が途切れた間を見て、瀬奈が総司に問いかけてきた。
「えぇ、もちろんです。 どんな事が知りたいですか?」
瀬奈は、新撰組の事はもちろん、風俗についてやおしゃれについて、色々総司に質問をした。
総司も自分の分かる範囲で瀬奈に話して聞かせた。

3人が江戸時代の話や、現代の話で盛り上がっている中、1人言葉を発さず隣に座っているセイに、総司がふと目を向けた。


「神谷さんっ!?」

セイの顔を見るなり、総司はびっくりして思わず声を上げてしまった。
セイの顔は茹蛸のように真っ赤になっており、目は潤んだまま1点を見ている。
そして、セイの目の前には空になったワインのビンが2本転がっている。
更にはセイの手には更にワインのビンが握られていた。

総司の呼びかけに、ボーっとしたまま振り向いた。
「何れすか」
「こ、こんなに飲んだのですか!?」
颯太は、先ほどうっかりワインの開け方をセイに教えてしまった事を思い出した。

「えへへ〜♪ らっておいしんらも〜ん」
セイは上機嫌で、更にグラスにワインを注いだ。
「もうやめなさいっ!」
総司は慌ててセイの手からワインとグラスをもぎ取った。
「やらーっ! 返してくらさいっ!」
セイは、総司からワインを取り戻そうとその場に立ち上がった。

・・・が、その瞬間酔いからか足がもつれて総司の元に倒れこんできた。
「神谷さんっ」
総司は持っていたワインとグラスをテーブルに置くと、セイを急いで抱き込んだ。

「えへへ〜っ 酔っちゃった」
尚も、セイは嬉しそうに総司の腕の中で気持ち良さそうに微笑んでいる。
「酔っちゃったじゃないですよっ! 全くもう、あなたはこんなに飲んでっ!」
総司はセイに叱咤するが、セイには全く答えてない。
「沖田せんせぇってばーっ うるさーい」
ケラケラ笑いながら、セイは総司をバンバン叩いている。
「い、痛いですよぅっ」
総司は若干うんざり気味に、セイの腕を掴んで大人しくさせようとした。
「うふふっ」
セイは悪びれる様子もなく総司にギュッと抱きついた。
「沖田せんせ〜?」
「はいはい、何ですか」
総司は赤子をあやすように酔っ払っているセイの頭を優しく撫でた。

「私は沖田せんせぇの事がだ〜い好きです〜」


「えっ?」
一瞬総司は何を言われたのか分からなかった。
颯太と瀬奈も、口を開けたまま呆然をセイを見ている。

「だ〜か〜ら〜、大好きなんれすってば〜っ」
きゃはははははっと笑いながら、セイは総司の背中に手を回してぎゅーっと抱きしめた。

「えっ えっ えぇぇぇぇっ!?」
やっとセイに言われた事を理解した総司は、顔を真っ赤にしてあたふたしている。
そんな事はお構いなしに、セイは笑いながらうっとりと総司の胸に顔をうずめている。

「せんせぇは私の事好きれすか〜〜?」
「はぁっ!?」
突然聞かれた事に、総司は驚いて思わずセイを自分から引き剥がした。
「あ、あなた一体何言ってるんですかぁ!?」

すると、みるみるセイの瞳に涙が浮かんだ。
「うぅぅっ せんせぇは、私の事がお嫌いなのれすか」

ううっ  可愛すぎる・・

潤んだ瞳で自分のことをじっとみるセイに、総司は内心ドキドキした。

どうしたら良いのか分からず、助けを求めようと颯太と瀬奈を見た。

『助けて下さいよぅ!!』

必死で総司は颯太に目で合図するが、颯太もどうして良いか分からず顔を引きつらせながら総司とセイを見比べている。

「やっぱりお嫌いなんれすね・・・」
ポロポロ涙を流しながら総司を上目遣いに見てきた。

「ききき嫌いな訳ないでしょうっ!!」
セイの涙に弱い総司は、思わず叫んでしまった。

「じゃあ、好きですか?」
酔っ払っているセイは、尚も追求する。


もう総司は泣きたくなってきた。
どうして良いか分からず、固まったままセイを見ている。

好きかだと!?
当たり前だ。
大好きに決まっている。
しかし、相手は今ものすごく酔っている。
しかも好きとはどういう意味なのか分からない。
うっかり好きだと告白して、もしセイの言っている好きの意味が違ったら一生立ち直れないかもしれない。
それに、今は颯太も瀬奈もいるのに、そんな事口が裂けても言えるわけがない。


総司が一生懸命頭の中でぐるぐる考えているうちに、セイの目が据わってきた。

「もうっ! おきたせんせえなんて嫌いれす」
「えぇっ!? 嫌い!?」
好きから一転嫌いと言われた総司は、ショックを受けた。
「罰として、私お願い聞いてください」
バツを受けるような事は一切何もしていないのだが、酔っ払っているセイにはそんな事は一切関係ない。

「お、お願いってなんですか」
今度は何を言われるのかと、総司はドキドキしながら訪ねた。
「私眠くなってしまいました・・・」
セイは、目をごしごしこすりながら、眠そうにあくびをした。
「はっ?」
「一緒に寝てください・・・」
「はぁぁぁぁっっ!? 絶対ダメです! 颯太さんにお布団用意してもらいますから、1人で寝てくださいっ」
総司は頭をぶんぶん振りながら、必死で否定した。
「やですっ! 先生と一緒じゃないと寝れません」
またもセイは総司に抱きついた。
「ちょ、ちょっとっ! 自分が今何を言っているか分かっているのですか!!!」
真っ赤になりながら、必死にセイを引き剥がそうとするが、どこにそんな力があるのか、ぴったりと総司にくっついたセイは全くはがれない。

「一緒に寝たら良いんじゃないですかねぇ・・」
「そうね・・ セイちゃん酔ってるし、見ててあげないと・・・だし・・・ねぇ」
颯太と瀬奈は、薄ら笑いを浮かべながらありえない事を言い出した。
「2人共っ! 何言ってるんですかっ!」
「だって・・ そんなセイちゃん放っておくつもり?」
瀬奈は、何かを企んだ笑みを浮かべて総司を見た。
「うっ・・・」

何も言えなくなった総司に、2人は寝室を指差した。
「どうぞ、ご自由にお使いください」
その言葉に、総司は首まで真っ赤にした。
「ごごごごごごご自由にってっ!」
総司も健康な男子だ。
色んな事を想像してしまうのも当然だった。

「もうっ 沖田さんうるさいですよ! さっさとセイさん連れて寝室へ行って下さい。 後片付け出来ないじゃないですか」
そういうと、無理やり総司を寝室まで押して連れて行った。

「じゃあ、ごゆっくり♪」
寝室に2人を押し込み、笑顔でドアをバタンと閉めてしまった。

「・・・・・・・・・・・・」
総司は、本当に泣きそうだった。
腕の中には酔っ払ってにこにこ笑っているセイがいる。

「本当に・・ 誰か助けて下さいよぅ・・・」