「タイムスリップ35」


「食べ過ぎましたぁ」
膨れたお腹をさすりながら、満足そうに総司はお店を出た。
「とっても美味しかったです。 颯太さん、ご馳走様でした」
「喜んで頂けて良かったです。 では八幡神社へ行きましょうか」
そう言うと、颯太を先頭に市谷八幡に向かって歩き出した。

「全く違う場所にいるみたいですね」
「えぇ、本当に。 1人で行けと言われたら、絶対に行けませんね」
自分達のいる時代とは全く違った景色になっている街を見渡しながら仲良く手を繋いで後を突いてくる2人を、
颯太は微笑みながら見ていた。

「あっ この階段の上ですね?!」
市谷八幡へ続く階段を見つけ、総司は嬉しそうに颯太に訪ねた。
「そうみたいですね」
3人は階段を上った。

「あっ! 狛犬ですよ!!」
セイは狛犬を見つけ、嬉しそうに走り始めた。

「神谷さん、転ばないで下さいよ!」
「うわーっ! 懐かしいっ! 約10年ぶりですね!」
「ここでは140年くらい経ってますけどね」
颯太はセイの様子に、笑いながら言った。
「ここで、沖田先生と初めてであったんですよね」
そう言って総司を見上げた。
「あの時の神谷さんたら、本当に可愛らしかったですよねv」
「私は沖田先生の顔も覚えてないんですけどね」
狛犬の前で、仲良く話をしている2人に、颯太はカメラを向けた。

「お2人さん、こっち向いてください」
2人が振り向いた瞬間、颯太はシャッターを切った。

「え? 今何をしたんですか?」
カメラを見た事がないセイは、不思議そうに颯太に駆け寄った。
「デジカメっていうカメラですよ。 ほら、今取った写真がここに・・・」
そういうと、先ほど取った写真の画像を見せた。
「えっ!? 私と先生が写ってる! しかもこんな奇麗に」
セイは感動してカメラを覗き込んでいる。
既に、携帯のカメラで土方と一緒に写真を撮った総司は、特に驚く様子もなくセイと一緒に写真を見ている。
「家に帰ったら、これプリントアウトしてあげますよ。 こちらに来た記念として、持って行ってください」「プリントアウト?」
「あははっ すみません。 この写真を後で渡します。 何て説明して良いか分からないので、実物みて理解してください。 もっと沢山撮ってあげますよ」
そういうと、色々なものをバックに、総司とセイを撮り始めた。
写真を撮られなれていない2人は、特にポーズを決める事もなくただボーっと立っている。
その様子が面白くて、颯太は笑ってしまった。

一通り見た3人は、市谷八幡を出ることにした。
「セイさん、どうでしたか?」
「ここに来れて、本当に良かったです。 しかも、沖田先生と来れたなんて」
「私も、10歳の時に来たきりですからね。 神谷さんと来れて、私も嬉しかったですよ」
見つめあいながら手を繋いで歩いている2人だが、未だ何も進展がない状態にやきもきしていた。

総司はセイには他に好きな人がいると思っている。
そして、セイはまさか総司が自分の事を好きだなんて微塵も思っていない。
どうやってこの2人を良い方向へ持っていけるのか考えることが苦手ながら、一生懸命考えた。

「何かまた颯太さんが難しい顔してますねぇ」
「私と同じで考える事が苦手なのに、何やら必死に考えてるんでしょう」
颯太を見ながら、2人はひそひそと話している。

聞こえてるんですけど・・

「それにしても・・」
「えっ?」
突然話だした颯太に、2人は振り返った。
「子供の頃に、ここで偶然会ってその後また京都で出会ったなんて、2人は運命の糸でつながってるんですねv」
颯太の言葉に、2人は無反応で颯太を見ている。
「しかも、生まれ変わってもこうして私と瀬奈が出会ってるって事は、もう前世から深〜いつながりがあるとしか思えませんよねvv」
そこまで言うと、2人はみるみるうちに耳まで真っ赤になっていった。

うふふふふっ 良い感じ良い感じ♪

「そ、そ、颯太さんっ! いきなり何言い出すんですか!」
総司は、颯太がこれ以上何やら余計な事を言い出さないかとハラハラしている。
「え、だってそうじゃないですか〜。 年も5つ違いで丁度良い感じだしぃ〜。 2人がこうして並んでいると、まるで恋人同士にみえますよ♪」
颯太はわざと2人を煽るような事を言った。
その瞬間、総司はばっとセイの手を振りほどいた。
「えっ」
その行動に、セイは悲しそうに総司を見上げた。

「颯太さん、そういう訳の分からないことを言うのはやめてもらえませんか」
他に思い人がいるセイが、自分を否定する事に耐えられず、総司は自分からセイを突き放す事を言い出してしまった。
予想外の総司の言葉に、颯太は焦った。
「いや、沖田さん?」
「私も神谷さんも、全くそういう関係ではありませんし、今後もそうなることは絶対にありませんから。 そういう話は迷惑です。 やめてください」
きっぱりと言い切った総司に、颯太は唖然として何も言えなくなった。

まずい。 
こんな展開になるとは思っていなかった。
颯太はセイに申し訳なくて、顔を見れなかった。

「じゃ、そういう事でこの話は終わりです。 行きましょう」
そういうと、総司は歩き始めた。

「沖田さん」
颯太は慌てて総司を追おうとしたが、セイの事が気になり振り返った。
「あ・・・」

セイの目からはポロポロと大粒の涙がこぼれていた。
「セイさんっ!」
颯太はセイに駆け寄った。

颯太の声を聞き、総司もセイを振り返った。
「え?」
セイが泣いているのを見て、総司も慌ててセイに駆け寄ろうとした。

その瞬間、セイははじかれたように走り出した。

「セイさんっ!」

セイが走り出した方へ2人は急いで追いかけた。
が、階段を駆け下りた後セイの姿が見えなくなってしまった。

「ど、どうしましょう?? ここで迷ったら探しようがなくなっちゃいますよ!」
「どうしましょうって! とにかく探すしかないでしょう!!」
総司と颯太は、とりあえずセイを探すことにした。

総司は、何故突然セイが泣いて駆けていったのか、全く理解していなかった。
そして、総司が分かっていない事は、颯太には手に取るように分かっていた。