「タイムスリップ33」
2人は、興味津々に颯太が立ち上げたPCを覗き込んだ。
「これは何ですか?」
「これはパソコンと言って、今は仕事ではかかせないものですよ。 これがあればいろんなことが出来ます」
そう言って、インターネットを立ち上げた。
「これで、たいていの事は調べられます。 何か知りたい事はありますか?」
「そう言われても・・ 何が見れるのかも、どんな風に知る事が出来るのかも全く想像がつきませんからねぇ」
「そーでしたね・・ じゃあ、例えば新撰組の屯所が今どうなってるか知りたくないですか?」
颯太の質問に、2人は目を輝かせた。
「そんな事まで分かるんですか!?」
「はい♪ 新撰組の屯所って、何ていう所でしたっけ」
「最初は八木邸と前川邸を屯所にしてました。 今は西本願寺ですよ」
それを聞いて、颯太は『八木邸』と入れて検索をかけてみた。
「いっぱい出てきましたよ。 これを1つクリックすると・・」
・・・・・・・・・・・・。
2人は、真剣に画面に見入っている。
「これですかね? 八木家ってなってますけど」
「わーっ!! 本当だっ!!」
「すごーい! でも何かちょっと違いますね。 やっぱり時間が経ってるからでしょうか?」
セイと総司は感動しながら見ている。
「あ・・ でもこれはあんまり見ないほうが良いかも」
そういうと、颯太は画面を変えてしまった。
「えー? どうしてですか?」
セイが悲しそうに颯太に訴えた。
「だって、見たくない内容もあるかも知れませんよ?」
颯太は、開いたページに沖田総司が芹沢鴨らの暗殺を実行したという文字を見つけてしまった。
セイが、その事を知っているのかどうかは分からないが、気分が良いわけがないと思ったのだ。
「あ、お二人は何年からやって来られたのですか?」
「慶応二年ですよ」
それを聞くと、颯太は2人に見えないように画面を半分閉じた状態で新撰組の年表を調べ始めた。
「あっ」
「え? どうしました?」
颯太は発見してしまった。
「沖田さん・・ 池田屋の時倒れたのですか?」
「嫌になるなぁ。 そんな事まで載ってるんですか? 倒れましたけど、大したことはなかったんですよ」
総司は、頭をかきながら苦笑いした。
「そ・・ その後体調はいかがですか?」
颯太は慎重に訪ねた。
「え? 今はなんともないですよ? あの後すぐ治りましたし♪」
総司のいう事は嘘ではなさそうだ。
1日一緒にいたが、全く体調に問題はなさそうだ。
じゃあ、これって間違った情報なのかな?
颯太は年表を読み返した。
颯太はその後も年表を見ていった。
セイと総司は、その様子をじっと見ている。
が、いきなり颯太はバンッとパソコンを閉じた。
「どうしました、颯太さん?」
「いえっ! やっぱりこういうのやめましょう!」
セイと総司は顔を見合わせた。
「何故です?」
「お2人も、将来の事が分かっちゃうと嫌でしょ? 私も自分の将来を知りたくないですもん。 言い出した私が悪かったんです。 すみませんでした」
颯太は2人に頭を下げた。
「いえ・・・」
訳が分からず、とりあえず2人はそう答えた。
颯太は、見てはいけないものを見たような気がして、総司とセイの顔を見れないでいた。
「あの、颯太さん、私どうしても行ってみたいところがあるんですけど」
突然セイが口を開いた。
「えっ? どこですか?」
「えーっと・・」
セイは顔を赤らめながら、チラッと総司を見た。
総司は、不思議そうにセイを見ている。
「市谷八幡へ行ってみたいのですが・・・」
セイの言葉に、総司の顔がみるみる綻んでいった。
「市谷八幡?」
知らない颯太は聞き返した。
「はい、そこで私が5歳の時に沖田先生に初めて出会ったんです。 京にいては、なかなか行けませんし、ここは江戸と同じ場所だと聞いたので、もし近いなら行ってみたいんですけど・・」
セイは恥ずかしそうに目を伏せながら言った。
「私も是非見てみたいですねぇ!」
総司も嬉しそうに言った。
「市谷なら電車に乗れば20分くらいで行けますよ! 行ってみますか?」
何となく、市谷八幡がセイと総司の関係を良い方向に変えるような気がした。
「わぁ〜♪ 楽しみですねぇ!」
「本当に! 私ももう何年も行ってませんからねー」
総司とセイは嬉しそうに話している。
「じゃあ着替えますか。 私も沖田さんも、浴衣のままですからね」
颯太がそう言うと、総司は始めて自分が荷物を全て向こうの時代に置いてきたままな事に気がついた。
「そう言えば・・・刀も何もかも置いてきてしまいました!」
「わっ! そう言えば、私なんて携帯も向こうですよ! どうしましょう??」
「でも土方さんには昨日のうちに文を出しておきましたから、私たちが戻らないとなると使いを送ってくれてると思うんですよね。 きっとあなたの荷物も引き取ってくれてると思いますよ」
それを聞いて、颯太は泣きそうになった。
「土方さんが引き取ってくれても、私がまたあちらに行かないと返ってこないじゃないですかぁ。 せっかく沖田さんや土方さんと写真撮ったのに・・・」
本気で落ち込んでいる颯太を2人は困ったように見ていた。
「あっ! でも今日これから3人でいっぱい撮れば良いんだ! 携帯なんて買い換えれば済む事だし! そうだっ デジカメがあったはず」
早くも立ち直って嬉しそうに何やら探し始めた。
「颯太さんて、やっぱり沖田先生の生まれ変わりなんですね」
「何ですか、それは」