「タイムスリップ32」


「颯太さん・・ 颯太さん」
誰かが自分を呼んでいる声が聞こえる。

颯太はゆっくりと目を開けた。

目の前には、総司が必死の形相で自分を見下ろしている。

「んー・・・ どうしたんですか、沖田さん・・ もう朝ですか・・」
颯太はまだ開ききらない目をゴシゴシとこすった。

「起きてください、颯太さんっ! 大変なんですよぅ!」
必死で颯太を揺らし起こそうとする総司を、不思議に思いながら見上げた。

「大変てどうしたんですか? 寝坊しちゃいました?」
まだ覚醒しきれていない颯太は、半分目を閉じたまま訪ねた。

「違いますよぅ! どこか知らない場所に来ちゃったみたいなんですよぅ!!!」
その言葉に、颯太は一瞬にして眠気が覚めた。

「えぇっ!?」
がばっと起き上がった颯太の目の前には、見慣れた景色。
2日ぶりに見る、自分の寝室だった。

「あれぇっ!?」
びっくりして周りを見渡した颯太を、泣きそうな顔で総司が見ている。

「こ、ここはどこなのでしょうか?」

颯太は、苦笑いして言いづらそうに口を開いた。

「ここは・・・ 私の時代です・・」

その言葉に、総司はがっくりと肩を落とした。

「もしかしたら・・・ 薄々そうじゃないかとは思っていたのです・・ でもまさか本当に来てしまうとは・・・」

颯太は気の毒そうに総司を見た。
しかし、次の瞬間何かを思いついたように立ち上がった。

「颯太さん?」
「セイさんっ! 沖田さん、セイさんがこの家にいると思います」
「本当ですか!?」
颯太は、急いで寝室を出た。

バンっとリビングのドアを開けて中に入ってみると、リビングのソファに可愛らしく包まって寝ているセイがいた。

「神谷さんっ!」
颯太に続いてリビングに入ってきた総司は、セイを見るなりセイの元に駆け寄って抱き上げた。

「うにゅ?」
寝ている所を突然抱き上げられたセイは、訳が分からずされるままになっている。

「神谷さん大丈夫だったんですね!!」
一度うっすらと目を開けたセイだったが、総司の腕の中で再び眠りにつこうとしている。
「神谷さんっ! 起きて下さいよぅ」
総司はセイをグラグラと揺らしながら叫んだ。

「へ? へ??」
「神谷さんっ!」
やっと起きたセイの顔を、総司は嬉しそうに覗き込んだ。

「あれ? 颯太・・・さん?」
「違います! 私ですよ!」
セイは、じーっと総司の顔を見ていたが、やがてうるうると目に涙を溜め始めた。

「うぅっ 沖田・・・せんせぇ?」
「そうです!」
「う・・うえーーん  沖田先生だぁ〜っ」
セイは、総司だと分かると突然泣き始めた。
そんなセイを、総司はギュッと抱きしめた。

「良かった、無事で! 会いたかったですよ、神谷さん」
その2人の様子を、颯太は嬉しそうに眺めていた。




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「どうして沖田先生までこっちに来てしまったのですか?」
3人は、取り合えずお茶を飲みながら落ち着こうという話になった。
瀬奈は既に仕事に行ってしまっており、ここにはいなかった。

「それが分からないのです。 昨日は颯太さんを屯所に泊める訳にもいかず、宿に2人で泊まったのですが、起きたらここにいました」
「知らないうちに、これが光ってたみたいです」
颯太は既に光が消えてしまっている指輪を持ってセイに渡した。

「そうなんですか・・・」
セイは指輪を受け取り、総司を見た。
先ほどから総司は、セイの手を握って離そうとしない。
余程自分の事を心配してくれていなんだなと嬉しく思ったが、これからどうやって元の時代に戻れば良いのかを考えていた。

「ところで、沖田先生?」
「何ですか?」
「向こうでは、颯太さんを苛めませんでしたか?」
「なっ! 苛めてませんよっ!」
総司は、突然予想外の質問をされ、びっくりした。
「いーえっ! セイさん聞いてくださいよ! 沖田さんたら私の事本当に苛めてくれましたよ」
「本当ですか?」
セイは、総司を上目遣いに睨んだ。
「嘘です嘘ですっ」
総司は、ぶんぶんと頭を振っている。
「じゃあ、私の事背後霊とか言ったの誰ですか!」
「うっ・・」
「それに私が撮ってたカメラを払って落としたりされました!」
颯太は、ここぞとばかりにセイに告げ口をしている。

「だってっ あれはっ」
総司は必死にセイに言い訳しようとしている。
「それに、必要以上に私の事睨んだりしてたし。 私、もう生きた心地がしませんでしたよ」
「沖田先生っ!」
「いえ、本当に違うんですよぅ! って、颯太さん!!!」
総司は思わず立ち上がり、颯太をにらみつけた。
颯太は、横をぷいっと向いて、総司と目を合わせようとしない。
「ちょっとっ! 沖田先生っ! 座ってください」
セイは、総司の手を引いてソファに座らせた。

「ダメじゃないですか、弱いもの苛めしちゃ」
セイに叱られて、総司はしゅんとして下を向いてしまった。

その様子を、颯太は嬉しそうに見ていた。
とても人を斬っていたときの総司と同一人物とは思えない。

「とにかく、ちゃんと颯太さんに謝って下さい」
そう促されて、総司はぷぅっと頬を膨らませながら、ぼそぼそっと何か言った。

「えっ!? 何ですか? 聞こえませんけどっ」
颯太は大げさに、耳に手を当てて聞き返した。
「・・・っ!!!  すみませんでした! これで良いですかっ!」
「はい、結構です♪」
颯太は嬉しそうに微笑んだ。

実際は、かなり颯太にからかわれて遊ばれていたのは総司の方なのだが、本人はその事に全く気づいていない。

「さて・・ で、これからどうしますかね?」
颯太は、総司がその事に気づく前に話題を変えてしまおうとした。

「どうするって言われても・・」
突然こちらの世界に来てしまった総司は、状況は飲み込めてはいるがどうして良いかなど分かるはずがない。
「神谷さんはこちらでは何をして過ごしていたのですか?」
「最初は颯太さんにシンジュクという所に連れて行ってもらったんですが、その後は1日ここでじっとしていました。 あ、良くてれびというのを見てました」
「テレビ?」



「わーっ!! 何ですか、これ!? こんな薄っぺらい所に人が入ってますよ!」
総司は、TVの裏を覗いてみたり、液晶に触ってみたりしている。
セイは、自分よりもテレビを見てはしゃぐ総司を苦笑いしながら見ていた。
その後も、家の中を一通り物色していた総司だったが、最後には飽きてしまったようで、またソファに座って大人しくなった。

「あっ そうだ!」
何かを思いついた颯太は、手をぽんっと打った。

「どうしたんですか?」
「どうせ私今日は仕事行きませんし、良かったら沖田さんとセイさんの縁の地でも回りませんか?」
「縁の・・地?」
「はいっ! 私も良くは知らないのですが、調べたらどこに何があるのか分かるかも」
颯太は、とても良いことを思いついた自分を褒めてあげたいと思った。

総司とセイは顔を見合わせた。
「それって、ここから近くなのですか?」
「ここは東京なので、京都まで行く事は出来ませんけど、東京都内にも何かあるって聞いた事があります。」
「江戸はここからは近いのですか?」
「江戸はもうないんですよ。 江戸が今は東京になってます。 良かったら、新撰組に関する土地を調べましょうか?」
そういうと、颯太はパソコンの電源を入れた。