「タイムスリップ28」
「セイさんの事って、どういう事ですか?」
颯太は、逸る気持ちを抑えて慎重に訪ねた。
「いや、だから・・ その・・」
急にほんのり頬を染めながら、もじもじとし始めた総司を内心気持ち悪いと思いながらも、颯太は次の言葉を待つ。
「何て言えば良いのか分かりませんが、神谷さんの行動が最近気になって仕方ないんですよ。」
「気になるって?」
「その・・・ 例えば他の隊士と話してるのを見るとイライラしたりむずむずしたりするんです。 それに、目の届かない所にいると何してるのかなって気になるんです。 1度気になり始めたらとまらなくなるんです」
ぷっ
颯太は思わず噴出しそうになった。
普通、そこまでいくとそれが恋だとわかって当然なのに、颯太の様子を見ていると全くそれに気づいていないようだ。
もしかしてこの人はやばいくらい野暮というか鈍感と言うか・・・
「どうしてそう思ってしまうのかは、全く分からないのですか?」
颯太はおかしくて震える口元を必死で隠しながら、訪ねた。
「分かったら苦労しませんよ。 きっと、女子という立場を知っているのは私だけだし、心配で仕方ないからだとは思うのですが・・・」
うぐぐぐぐぐっ
颯太はもうこれ以上ないくらい必死で耐えている。
まさか自分の前世がこれほどまでだとは。
あっさり教えるべきか、もう少し遊んでみるべきか。
「颯太さんはそんな気持ちになったことありますか?」
「ありませんよっ!」
そんな質問されるとは思わなかった颯太は、思わず叫んでしまった。
「そんなに大声で言わなくても聞こえますよ」
総司は口を尖らせて拗ねている。
「あ・・ すみません。 でも、どうして沖田さんがセイさんにそう思ってしまうのかは分かりますよ」
颯太は得意げに言った。
「本当ですか?」
総司は身を乗り出した。
「でもその前に沖田さんに質問しても良いですか?」
「何です?」
「沖田さんは人を好きになったことはないのですか?」
その質問に、総司は一揆に顔を赤らめた。
「な、何ですか、いきなり! そんな事どうしてあなたに言わなければいけないんですかっ!」
「人間生きていたら恋くらいして当然ではないですか?」
「私はそういう事はまだ分かりません。 私の誠は近藤先生ですから。 女子など誠の邪魔になるだけです」
総司はムスッとしながら答える。
「そういうの、私には良く分かりませんけど、その誠と恋愛は全く別物ではないのですか? 私だって仕事は何よりも大事です。 でも瀬奈がいてくれるから頑張れるんですよ。 あっ、瀬奈っていうのはさっき見せた私の恋人なんですけど〜v」
結局惚気になってしまった颯太を、総司は冷ややかな目で見ている。
「コホン・・ とにかく、私の想像では沖田さんは恋をしていると思うのです」
「はぁっ!?」
「気づいてないんですか?」
分かっているのに、わざと意地悪く訪ねてみる。
「してませんよ! しかも一体誰にですかっ!」
「1人しかいないじゃないですかぁ」
みるみるうちに、耳までが真っ赤になっていく。
「ほーら、やっぱり。 今誰かが頭に浮かんだでしょう?」
ふふふふふ〜と颯太は笑いながら総司を見た。
「っっっっっ!! 誰も浮かんでませんっ!!!」
「颯太さん、大丈夫ですかね〜?」
「何か、未だに颯ちゃんが江戸時代に行っちゃったなんて信じられないよ・・・」
2人は、颯太の家で食事をしていた。
瀬奈が作ってくれた料理をセイは食べながら、颯太と総司が衝突していないか心配していた。
「颯太さんはいつ帰って来るのでしょうか・・・ 颯太さんが帰ってきてくれないと、私が戻れません」
「聞こうと思ってたんだけど、どうして颯ちゃんが帰ってこないとセイちゃんが元の時代に戻れないの?」
ギクッ
「それはそのぉ・・・」
指輪の事を瀬奈にいう訳にはいかない。
「一体どういう仕組みになってるのかしら? それに、あの時何が光ったの?」
「さぁ?」
今はそう言うしかなかった。
「さぁって・・・ じゃあセイちゃんは何が原因でこっちに来たの?」
疑問が解けない瀬奈は、質問をやめようとしない。
「えーっと・・・ あっ、そう! 何か石を拾ったんです。 光る石をっ!」
「光る石?」
「はい! それを持ったらぱーっと明るくなって、気づいたら颯太さんのところに・・」
「その石を颯ちゃんも触ったって事?」
「そう・・・なんです」
苦笑いしながらセイは必死に話した。
「石かぁ・・・ 何か特別な石だったのかしら」
それはもう!! 何しろ颯太さんの気持ちがこもってますから!!
声に出して言いたい気持ちを抑えて、セイは「さぁ?」と言うしかなかった。
「そっかぁ・・・ とにかく、颯ちゃんが戻ってくるのを待つしかないわね。 明日も会社に連絡しなきゃ・・・」
瀬奈は、はぁっとため息をついた。
食欲もあまりないらしく、食事にもほとんど箸をつけていない。
セイも、本当は総司に会いたくて会いたくて仕方なかったのだが、何故かこっちの世界に来てからというもの目新しいものばかりに囲まれているせいかそれほどホームシックにはなっていない。
颯太の事を心配する余裕すらある。
「瀬奈さん、もっと食べたほうが良いですよ?」
「・・・セイちゃんはやけに食べるわね」
「すみません。 だって瀬奈さんが作る食事が美味しいんですもん」
その言葉に気をよくした瀬奈は、ふふっと笑って少しずつ食べ始めた。
瀬奈の食欲が出てきたのを見て安心したセイは、ホッとした。
そうだっ! 明日から瀬奈さんがお仕事に行っている間、稽古しよ!
もう何日も剣を持っていないから、腕が鈍っているかもしれない。
よーしっ! 向こうに戻って沖田先生にがっかりされないように、しっかり稽古しなきゃっ!