「タイムスリップ27」
「今日の沖田先生、いつも以上に放電してないか?」
「あぁ・・ 神谷がいなくなってからここんとこいつもだけど、今日は特に酷いよな・・・」
巡察中の1番隊は全員総司の様子にびくびくしていた。
うっかりケイタイとかいうものに惑わされてうかれてしまった自分が悔しい・・
総司は、先ほど3人で記念撮影してしまったことを悔やんでいた。
しかも、颯太の自分に対する妙に挑戦的なあの態度。
腹は立つのに何故か憎めない。
颯太の存在全てにイライラしていた。
巡察から戻ったら、2人きりで神谷さんを連れ戻す方法を颯太と話し合わなければ。
総司はそれだけを考えていた。
「なぁなぁ、未来ってのはどんななってんだ?」
「そーだよ、もっと詳しく教えてくれよ」
副長室では、まだ颯太に対しての尋問(笑)が続いていた。
「この時代から140年後なんでしょ? 江戸幕府がどうなってるのか気にならない?」
平助は興味津々で訪ねた。
「おぉ・・ そうだな。 それは気になるな」
平助の質問に、土方が興味を示した。
「さっき、お前隊服が土産物屋にも売ってるとか言ってたな。 それは俺たちは英雄扱いされてるって事だよな?」
「えぇっ!? そうなの?? すごぉぉぉい!」
「なぁ、俺たちこの後どうなるんだよ?」
全員が一斉に颯太に詰め寄った。
その様子を、斉藤は涼しい顔で見ている。
「あ、あの・・・」
「うん!?」
全員が颯太の言葉に耳を傾けた。
「それはいくらなんでも言えません!」
やはり新撰組の最期をいう訳にはいかない。
しかも、歴史に疎い颯太の知識は、近藤や沖田や土方の最期くらいしか知らなかった。
ここにいるメンバーのうち、土方以外誰の事も知らないのだ。
「何だよそれー」
「ちょっとくらい教えてくれても良いじゃねぇかよぉ」
「あー、もしかして未来から来たのって本当は嘘なんじゃないの?」
それぞれ言いたい事を言い始めた。
「ち、違いますよぉ! ただ、あなた達の事を話す訳にはいかないって事です。 私だって自分の未来を知っちゃったら、これから生きていけなくなりますよ」
「そりゃーそうか。」
原田が納得したようにうなずいている。
「ただ、私から言える事は、新撰組は英雄扱いされていて、歴史の授業にも名前が出てくるくらい有名って事ですよ」
颯太は、変な事を言って斬られないかびくびくしながら答えた。
取り合えず持ち上げておけば大丈夫そうな事がこの数時間で分かったので、颯太は出来るだけ言葉を選んでいる。
「ちょっと、あなた達何をしているんですか?」
突然後ろから聞こえた声に、全員が恐る恐る振り返る。
「そ、総司じゃねぇか」
「どうしたの?」
顔は笑顔なのに、目は笑っていない総司に、全員が凍りつく。
「ちょっと私はこの人と話がありますので、連れて行きます。 良いですよね?」
「・・・・・・・・・はい」
その問いに、ダメと言える者はここにはいなかった。
「颯太さん、行きますよ」
そういうと、総司は颯太の襟首を掴んで引きずりながら土方の部屋を出た。
「あなた、私のいない間に何やってるんですか!」
総司は、使われていない部屋へ颯太を連れてきた。
颯太は正座して小さくなっている。
「だって・・ 土方さんが屯所の中を見学しても良いって言うから・・」
「それで? のこのこ出てきて皆に見つかって根掘り葉掘り聞かれたんですか?」
「はい・・・ あっ!でもセイさんが女性って事はっ モガモガ」
総司は慌てて颯太の口を押さえた。
「あなた、バカですか! ここでそんな事言ったらどうなると思ってるんですか!」
総司は小声で、しかし怒気を含んだ声で叱咤した。
「す、すみません」
また叱られてしまった・・・
「・・・・で、どうやったら神谷さんがこちらに戻ってくるか考えてもらえませんか? あなたにしか出来ないんですから」
「そんな事言われても・・・」
「取り合えず、あなたが元の時代に戻れば良いんでしょう? 早く戻ってくださいよ」
突然無茶な事を言われて、颯太はびっくりした。
「えぇっ!? そんなの私にだって戻り方分からないのに無理ですよぅ!」
颯太は必死で訴えるが、総司は顔色一つ変えない。
「神谷さんが向こうの時代へ行ってしまったのも、あなたがこちらへ来たのも、あなたが持っている指輪とかいうものが原因なのでしょう?」
そう言われ、颯太は指輪を取り出してみた。
が、全く光っていない。
「これが光らない事にはどうにもならないんですよ・・・」
「それ、ちょっと見せてもらっても良いですか?」
颯太は総司に指輪を渡すのを躊躇った。
自分がこちらへ来てしまったのは、セイから受け取った指輪が原因だったからだ。
もし総司がこの指輪を持った瞬間、光って総司が向こうへ行ってしまったらどうしようという気持ちがあった。
「どうしました? ちょっと見せてもらうだけですよ?」
「あ、いえ。 ・・・どうぞ」
恐る恐る総司に指輪を渡した。
総司は手に取り色々な角度から指輪を見ている。
しかし、特に何の変哲もない指輪だと分かり、すぐに颯太に返した。
颯太は、ふぅっと安堵のため息を吐いた。
総司は、眉間に皺を寄せて何やら考え込んでいる。
颯太もどうしたら自分が元の時代に戻れ、セイをこちらへ連れ戻せるのかを考えた。
・・・・・・・・・・・・。
2人とも、腕組みをしながら眉間に皺を寄せて考え初めて10分程が経過した。
「あっ」
何かを閃いた颯太は、小さく声を上げた。
「どうしたんですか?」
「あのっ! 沖田さん。 お聞きしたい事が・・・」
「はい」
「沖田さん、何か悩み事はありませんか?」
「はぁ??」
「セイさんは、あちらに来た時、私の悩みを解決するために来たんだと言ってました! 私がこちらに来てしまったのは、もしかしたら沖田さんの悩みを解消するために来たのかも知れません」
颯太は、ものすごい事を思いついたとばかりに、目をキラキラ輝かせながら総司に言った。
その颯太を、怪訝な表情で総司は見ている。
「もしあったとして、その悩みをあなたに解決出来るとでも?」
・・・・・・・確かに。
「それに、私には悩みなんてありませんけど」
「えー?? 悩みがない人間なんていませんよ?」
一瞬、総司の動きが止まった。
「? どうしたんですか?」
「・・・・悩みはありません。 でもたまにむずむずしたり、イライラしたりって事はあります」
若干小さくなった声で、総司は答える。
「それは、どんな事でですか?」
颯太は身を乗り出して総司に尋ねた。
「・・・神谷さんの事なんですけど・・・」
キタ━━━━(゜∀゜)━━━━ッ!!
やっと沖田総司の口から、セイに対しての話が出た。
颯太は、総司がセイの事をどう思っているのか聞くチャンスだと思い、心の中でガッツポーズをした。