「タイムスリップ25」
颯太は、恐怖のあまり総司の後ろに隠れるようにいた。
「神谷は見つかったか」
「いえ、でも手がかりが見つかりました」
「本当か? 脱走ではなかったのか?」
「それは絶対にないと何度も言っているでしょう!」
息を呑んで会話を聞いていた。
颯太は、何とか土方に見つかる前にこの場を去ろうと機会を見計らっていた。
「・・総司」
「何ですか?」
「お前の後ろで背後霊のようにふらふら揺れてるのは何だ?」
総司はふふっと笑った。
「嫌だなぁ、土方さん。 背後霊のようじゃなくて背後霊ですよ」
「ちょっと沖田さんっ! ひどいじゃないですか!!」
・・・・あ。
思わず颯太は身を乗り出してしまっていた。
「な、何だお前はっ!」
土方は、颯太の顔を見て驚いた。
「紹介します。 背後霊さんです」
総司はにこにこと颯太を紹介した。
「総司、お前に兄弟がいるなんて話聞いた事ねぇぞ」
土方は颯太の顔を凝視している。
颯太は、その視線を感じ総司の後ろに隠れた。
「ちょっと。 私の後ろに隠れるのやめてもらえますか」
総司はため息をつきながら言った。
「土方さん、ここでは何ですから屯所で詳しくお話しますよ」
「・・・・・」
総司から話を聞いた土方は、眉間に皺を寄せて黙り込んでしまった。
当然だ。
こんな話いきなりされて誰が信じるものか。
「で、この人が言うには神谷さんは未来の世界にいるそうです」
「・・・・」
颯太はというと、総司の横に正座して、下を向いている。
何で自分が鬼の住処と言われる新撰組の屯所にいるのかという事を、考えていた。
普通のサラリーマンだったのに・・
冷静に考えれば、こんな事はありえない。
でも実際自分は江戸時代にいて、新撰組の屯所で土方歳三と沖田総司の目の前に座っている。
「お前はそれを信じたのか?」
土方の問いに、総司ちらっと颯太を見た。
「分かりません。 でも神谷さんを見つける手がかりにはなるんじゃないかと思います」
「そうか・・・」
土方は、まだ腕を組み難しい顔をして総司と颯太の顔を見比べている。
「それにしても総司と瓜二つだな。 お前今いくつだ?」
突然話を振られた颯太はビクッとして土方を見た。
「に、25・・です・・」
「総司よりも年上か。 その着物はお前のいる世界では普通なのか?」
颯太を上から下まで見て訪ねた。
「はい、普通です」
「ふーん。 未来っていうのは随分動きやすそうな着物があるんだな」
「でも土方さん達が着ている服はかっこいいですよ」
「お、そうか?」
土方はちょっと嬉しそうに笑った。
「お前も着てみるか?」
「えっ! 良いんですかっ!」
「ちょ、ちょっと土方さんっ! 話がおかしな方向に行ってませんか!?」
総司が機嫌悪そうに間にわって入った。
颯太は感動していた。
始めは怖いと思っていた土方だったが、話していてもそれほど怖くない。
普通に話しをしている自分にもびっくりした。
この状況を何かに残せないか。
こんなチャンスめったにない。
颯太はだんだんそんな気分になってきた。
「あっ!!」
「何だ?」
突然声をあげた颯太を、土方は怪訝に見た。
携帯・・・
颯太は、自分のデニムのポケットに携帯が入っているのを思い出した。
「あのっ! もし良かったら写真一緒に撮ってもらえませんか?」
「はぁ!?」
「うわぁっ!! すっごい! 何ですかこれ??」
「こんな小さい箱の中に人がいるぞ!」
「土方さん! これ、もしかしてポトガラじゃないですか!?」
総司と土方は感動していた。
2人は写真が何か知らなかった。
なので、颯太は携帯に入っている写真を2人に見せた。
すると2人ともものすごく興味を示してきた。
「あれっ!? 神谷さん??」
写真を次々見ていた総司は、ある写真を見て声を上げた。
「颯太さん、これって神谷さんじゃ?」
総司は、携帯の画面を見ながら颯太に訪ねた。
颯太は、携帯を覗き込んだ。
「あぁ、これはセイさん・・じゃなくて清三郎さんではないですよ。 私の恋人ですv」
うっかりセイの名を呼びそうになったが、総司と松本以外ここではセイが女だという事は知らない事を思い出し、慌てて名前を言い直した。
「じゃあ、この人が神谷さんの生まれ変わりって言う・・・」
総司は、まじまじと画面を見た。
「ん? 神谷の生まれ変わりは女なのか?」
土方も画面を覗き込みながら訪ねた。
「そ、そりゃ生まれ変わる時に同じ性で生まれ変わるとは決まってないでしょう!」
「そうだが・・・ 確かに神谷に似てるが、良くこれみてすぐに神谷だと分かったな」
「う・・・ それは・・・」
総司は返答に困っている。
「3人で写真撮りましょう!」
見かねた颯太が、話題を変えようと叫んだ。
「良いですねぇ! 撮りましょうよ! 土方さん!!」
パシャッ
うわぁっ! うわぁぁぁぁっ!!
これはすっごい宝物になったぞぉ!
颯太は、3人で撮った写真を涙を流しながら見ていた。
きっと誰に見せても誰も信じないだろう。
でも自分の中だけで分かってれば良いのだ。
保存・・と。
颯太は嬉しそうに携帯を握り締めていた。
そして、それから隙があれば京の町を撮ろうと心に決めた。
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「それじゃあセイちゃん。 私仕事に行ってくるね。 仕事終わったらすぐに戻るから、それまで待っててね」
「はい、行ってらっしゃいませ」
セイは、笑顔で瀬奈を送り出した。
昨日の夜突然颯太がいなくなった。
セイには颯太がどこに消えてしまったのか、想像がついていた。
きっと自分のいた時代に飛ばされてしまったのだろうと。
突然颯太が消え、うろたえている瀬奈に状況をゆっくりと説明した。
泣き出してしまった瀬奈を頑張ってなだめた。
本当に泣きたいのはセイだった。
颯太が指輪を持って過去へ行ってしまった事によって、セイが戻れる手段がなくなってしまった。
その上、颯太まで巻き込んでしまった事に責任を感じていた。
元はといえば、颯太が捨てた指輪を拾った事が原因だったのだが。
颯太の家に1人残ったセイは、はぁっとため息をついた。
自分はどうなってしまうのだろう。
そして、颯太は今どうしているのだろうか。
もしも颯太が自分のいた時代に行ってしまったのであれば、きっと総司にも会っているはずだと思う。
自分の事を説明してくれたかな。
沖田先生は颯太さんの話を信じてくれたかな。
そんな事ばかり考えてしまう。
どうか、颯太さんが無事でありますように・・・