「タイムスリップ24」


先ほどから、松本は颯太のいる時代はどうなのかという事を興味深々に聞いていた。
主に医療の事だったが、残念ながら颯太は病気もほとんどしたことがなく、医学についてはあまり詳しくなかった。
しかし、江戸時代の人間にとっては、聞く事全てが新鮮で、松本は嬉しそうに話を聞いている。

その様子を総司は冷めた目で見ていた。

総司は一刻も早くセイに会いたかった。
しかし連れ戻す方法としては、颯太が持っている指輪(とか言うもの)しかない。
颯太が言っている事が本当であれば、それが光らないと颯太の時代には戻れないという。
という事は、その指輪がこちらにある以上セイは戻らないという事だ。


「おい、沖田。 おめぇもこっち来てこいつの話を聞け。 おもしれぇぞ」
松本は上機嫌で酒を煽りながら、総司に話しかけた。

「いえ、私は結構です。 それよりも、神谷さんが戻る方法を考えましょうよ」
総司はうんざりした顔で言った。
「どの道こいつが元の時代に戻らねぇ事には、セイは戻ってこねんだろ? 考えるも何もねぇじゃねぇか。」

はぁっと総司は大きなため息をついた。

その総司の様子を颯太はじーっと見ていた。

視線を感じた総司は、颯太を見た。
「・・・何ですか、じろじろ見て」
「いや、その・・ 沖田さんはよっぽどセイさんの事が心配なんだなと思って」
その言葉に、総司はムッとした。
「そりゃ、私の大事な大事な愛弟子ですからね。 可愛い弟みたいなものですから」
「セイさんは女性でしたけど・・・」
颯太は、わざと総司を挑発するような言い方をした。

「でも私にとっては弟なんですっ!」
「随分可愛い弟さんなんですねぇ? 女性用の服を着させたセイさんは、それはもう可愛らしい人でしたよ? さすがの私もドキドキしちゃいましたv」
「もっもしかして神谷さんに何かしたんですかっ!?」
「えー?? どうしてそんな事気になるんですか〜? 弟だったら気にならないでしょ〜?」
颯太はとびっきりの笑顔で総司に言った。
総司はわなわなと震えている。

「・・・何をしたんですか」
「それは内緒です♪ うふふふふ」



ぶちっ


「わぁぁぁぁぁぁっ!!」
「沖田!! やめろっ!!」

いきなり総司は、刀を颯太に向けて斬りかかろうとしたのを、松本が必死に止めた。

「神谷さんに何をしたんですかぁぁぁぁぁぁっ!!」
泣きながら総司は叫んでいた。


ふふっ 面白い♪
颯太は、総司の反応がおかしくてしょうがなかった。

「おいお前! 今の総司を刺激するような事言うんじゃねぇ!」
そう言って、しくしく泣いている総司をなだめた。

颯太は少し考えて、何かを閃いたように手をぽんと打った。
「沖田さん、松本さん。 せっかく江戸時代に来たのだから、出来れば町を少し見てみたいのですが、良いでしょうか?」
「そりゃ構わねぇが・・・ 俺はいつ患者が来るかわからねぇからな」
と、松本はちらっと泣きながら刀を握り締めている総司を見た。

その視線に気づいた総司は、キッと颯太を見て、
「私は絶対に案内しませんからねっ!」
と叫んだ。



「うわぁっ 面白ぉい! 時代劇見てるみたいだ」
目を輝かせながら、町に見入っている颯太の傍らには、むすっと口を尖らせた総司が歩いていた。

「何で私があなたなんかの京見物につき合わされなければならないんですかっ」

「沖田さんっ! あれは何ですか!? とっても美味しそうなんですけどっ!!」
颯太は、目に付いた京菓子に釘付けだった。

「私の話聞いてますかっ!」
「沖田さん、お金下さい♪ 私この時代のお金持ってないんです」
颯太はニコニコと総司を見た。


「美味しいですねぇ!! さっぱりとした甘みでとっても美味しいです。 沖田さんもお一ついかがですか?」
総司に買ってもらった京菓子を頬張りながら、颯太は総司に尋ねた。
しかし、総司はそっぽを向いたまま颯太を見ようとしない。

「沖田さんも甘いもの大好きなんでしょ? 私と同じですね」
颯太は気にせず嬉しそうにお菓子を次々口に入れていく。

「・・・神谷さんは・・・」
「え?」
「神谷さんは、淋しそうではなかったですか?」 
「いいえ?」(きっぱり)
その言葉に、総司はがっくりと肩を落とした。

総司の落ち込んでいる姿を見て、颯太は更に面白くなってきたと思った。
「あー、でも何か早く戻って早く会いたい人がいるって言ってましたね〜」
総司の目がキラっと光った。

「誰だったかなー。 名前言ってなかったけどなー。 何か師がどうのとか・・・」
総司が嬉しそうに続きを待っている。

「忘れちゃった♪ えへっ」


・・・・・・・・・。

「いったぁぁぁい! 殴らなくても良いじゃないですかぁ!」
総司はぷいっとそっぽを向いて、颯太を置いて歩き出した。

「待ってくださいよぅ!」
急いで総司を追って走った颯太は、突然立ち止まった総司の背中にぶつかった。
「いたっ! 急に止まらないで下さいよ!」

鼻を強く打った颯太は、鼻を押さえながら総司に抗議した。
・・・が、総司の前に人影が見えた。

そっと覗いてみると、そこにはかなりの男前の男が立っていた。

誰だろう??

「総司何してる? もうすぐ巡察の時間じゃねぇのか?」
「すみません、土方さん。 ちょっと法眼のところに寄っていたので」

・・・なにぃぃぃっ! 土方ぁ!?

颯太は、鬼の副長の異名を持つ事であまりにも有名な土方を目の当たりにして、一揆に体に緊張が走った。