「タイムスリップ 19」


 

颯太と瀬名は、カフェの1席で向かい合って座っていた。

先ほど、セイが瀬名を連れて颯太の待っているカフェに戻ってきた。
てっきり1人で戻ってくるものとばかり思っていた颯太は、びっくりしてその場に立ち尽くした。

セイは、気を使い外で待っていようとしたのだが、それならと颯太が別の席にカフェオレを注文して座らせてくれた。
セイはどきどきしながら、2人の座っているテーブルを見ていた。
やっと2人は落ち着きその場で話始めた。
セイのいる位置からは颯太の顔しか見えず、瀬名は後ろを向いている為顔が確認できない。

セイの元にカフェオレが運ばれて来た。
ふぅふぅと覚ましながら飲み、一息ついて2人の様子をまた見始めた。

颯太は、時折泣きそうな顔になったり真剣な顔になったりして瀬名と話をしている。
こちらからは2人の声は届かず、何を話しているのかは聞こえない。

そのうち、颯太は瀬名の手をとり目を見て話しをし始めた。

(頑張れ! 颯太さん!)
セイは心の中で応援していた。


しばらく見ていると、瀬名の様子が何だかおかしいことに気づいた。
下を向いたまま、肩が震えている。
きっと泣いているのだろうとセイは思った。
心配になり、席を立ち上がろうとしたセイだったが、それに気づいた颯太がセイに目で合図してそれをとめた。
セイはまた席に座りなおし、2人の様子を見守っていた。

すると、ほどなくして颯太の顔に笑顔が見えた。
こちらからは見えないが、きっと瀬名も笑顔になったのだろう。
空気が変わったような気がした。

セイはその様子をほっとしながら見ていた。
(うまくいったのかな。 良かった)

と、同時に急に総司の事を思い出していた。

会いたいな・・・・

これまで、セイは度々総司の事や新撰組の事を思い出してはいたが、自分の今いる状況と颯太や瀬名の事で
頭がいっぱいだったせいで、それ程真剣には考えていなかった。
しかし、2人がうまくいった今、自分がこれ以上ここにいる必要はないのだと思う。
どうやって元の時代に戻れるのか、どうやったら総司に会えるのか初めて真剣に考え始めた。
すると、突然不安になり、また孤独を感じ始めていた。

「…さん、 セイさん?」
自分を呼ぶ声が聞こえ、はっとして顔を上げた。
そこには、不安そうにセイを見下ろしている2人の顔が見えた。

「あっ、すみません!」
セイはその場に勢い良く立ち上がった。

「そ、それで、お二人は…?」
聞かずとも2人の雰囲気で、もう心配ないことは分かっていたのだが、一応尋ねてみた。

すると、2人は顔を合わせ照れたように微笑みあった。
「ヨリを戻す事にしました」
瀬名がほほをほんのり赤くしてセイに答えた。
それにはセイの顔もぱぁっと明るくなった。

「本当ですかっ! 良かった!!」
セイは心からそう思った。
自分の生まれ変わりの瀬名と、総司の生まれ変わりの颯太が恋人同士としてうまくいった。
その事実が、セイにはとても幸せだった。


3人は店を出て颯太の家に向かっていた。
今晩颯太の家でご飯を食べようと言う事になったのだ。
シェフはもちろん颯太。
瀬名も料理は得意なようなのだが、今日は 
どうしても颯太が作りたいと申し出た。
よほどうれしかったのだろう。
瀬名と颯太は手をつないで家路に向かっていた。
セイも、そんな2人をほほえましい気持ちで見守りながら後に着いて行った。




「ところで、セイちゃんの好きな人の話まだ私聞いていないんだけど?」
食事を食べ始めた時、急に瀬名が話しを切り出した。

「ぶほっ」
言葉に、セイは思わず口に入れたものを噴出してしまった。

「わーっ セイさん大丈夫ですか!」
といって、颯太は急いでふきんを取りに行って渡してくれた。

「す、すみません…」
家に着いてからというもの、2人はこれまでの距離を縮めるかのようにセイの存在を忘れてラブラブ状態だった。
セイは、最初こそほほえましく感じていたが、だんだんその状況に呆れ始めていた。
(もう、好きにして…)
そんな気分だった。

そして食べ始めた時、ふと思い出したかのように瀬名がその話しを切り出した。
油断していた。
というよりも、瀬名との約束をすっかり忘れていたのだ。

「約束ですからね。 ちゃーんと聞かせてもらいますよ」
と、瀬名は意地悪な笑みを浮かべてセイの顔を覗き込んだ。

「え、えーっと…」
状況が分からず、颯太は2人の顔を見比べている。
「い、一体何の話??」
「ふふっ セイちゃんの好きな人の話v 聞かせてくれるって約束したの」
と瀬名は嬉しそうに颯太に話した。

颯太は、あぁ と言う顔をした。
颯太はセイの好きな相手を知っていたからだ。
と、同時にそれを話すとなると、セイが新撰組隊士だという正体も話さなければならないという事も分かっていた。
セイは、どうしようという顔で颯太を見た。

颯太はにっこりと微笑んで、
「大丈夫。 瀬名は全部話してもきっと分かってくれますよ」
と言ってくれた。

セイは決心したように、
「では私がどういう人間かという事からお話ししてうと思います。」
と言って、自分が新撰組の隊士だということをまず最初に打ち明けた。

瀬名は、びっくりして言葉が出ないようだった。
まさか自分の前世が女である身で、あの新撰組の一員だったととは。

「うそ…」
「本当です。 そもそも私は昨日使いを頼まれて黒谷に行った帰りに、あるものを見つけた事がきっかけでした。 あるものとは、これです」
と言って、颯太が瀬名に送ろうと思っていた指輪を出した。

「あぁっ!!!」
それを見た瞬間、颯太が物凄い勢いでセイの手からそれをひったくった。

「え??」
突然の事に瀬名は状況についていけなかった。

「セ、セイさん! 今これを出すのはだめでしょう!!」
と、セイの耳元で小声で言った。

セイも、これがどういうものだったのか思い出し、瀬名に見せてしまった事を後悔した。

「す、すみませんっ!!」

瀬奈は2人を訝しげな目で見ている。

「私には教えられない事?」
「い、いや、そういう訳ではなくて・・・」
颯太は必死にごまかそうと頭の中で必死に言い訳を考えた。

「颯太さん、今がチャンスでは?」
セイは、颯太にそっと耳打ちをした。
が、これは一生を決める問題で、こんな簡単に口に出せるような事ではない。
しかも捨てた指輪を婚約指輪ですと言える訳ない。

「いえ、これは改めてきちんとやります。 今回はこのことは秘密にしてください。」

2人でコソコソと話しているのを、瀬奈は眉間に皺を寄せて見ていた。

「何で私だけ除け者なのよ」
相当怒っているようだ。

「うぅっ・・・ 違うんだよぅ 瀬奈ぁぁぁぁ」
情けない顔で颯太が瀬奈のご機嫌を取り始めた。



・・・・・・・・・・。
何だこれ。

セイは心底あきれ返って颯太を見ていた。
しかし当の瀬奈は、そんな颯太の煽てにまんまと乗ってしまっているようだ。
また桃色の空気が流れ始めた。

何だか総司と自分を見ているようだと、ため息をついた。
結局私の話はどうでも良いわけ・・・?