「タイムスリップ 18」
セイは、瀬奈の言葉を聞いて頭の中が真っ白になった。
「え・・・」
それ以上声が出ない。
瀬奈はそんなセイを見て悲しそうに笑った。
「わざわざ会いに来てもらって本当に申し訳ないけど、あなたのお役には立てないかもしれませんね」
セイの頭の中では、昨日から颯太が話していた事が思い出されていた。
今でも颯太は瀬奈の事がとても好きなのだ。
なのに瀬奈は好きではないといっている。
どうにか2人の役に立ちたいとここまで強引に来てみたのは良いが、逆に颯太を傷つけてしまうのではないかと思った。
自然にセイの頬を涙が伝った。
「ちょっ、ちょっと! どうしてあなたが泣くの?」
突然泣き出したセイに、瀬奈は焦って持っているカバンの中からハンカチを取り出してセイの顔に優しく当てた。
「す、すみませんっ!」
セイは瀬奈に涙を拭いてもらいながら瀬奈を見上げた。
瀬奈はセイを見て、優しく微笑んだ。
「あなたには好きな人がいるの?」
「え?」
セイは突然聞かれた事の意味が分からず首をかしげながら瀬奈を見上げた。
「何となくそんな気がしたの」
瀬奈は優しく微笑んだまま、セイの顔を覗き込んだ。
セイは顔を赤らめながら下を向いた。
「・・・・います」
「ふふっ やっぱり。 だったら、もしその好きな人の為に自分が離れたほうが良いと思ったら、あなたはどうする?」
セイははっと瀬奈を見上げた。
「それって・・・ もしかして・・・」
そこに座りましょうと言って、瀬奈はビルの隣にある噴水のヘリに腰を掛けた。
セイも、瀬奈の後をついて隣に座る。
「颯ちゃんは本当にお人よしなの。 会社でも実力はあるのに、自分の案を他の人に譲ったりしちゃうし。」
セイは何も言わず、瀬奈の話に耳を向けている。
「本当ならとっくに昇進してても良い頃なのに、同僚に手柄を譲ってばかりで、周りばかりがどんどん出世しちゃって。
今回のお見合いの話が出た時、颯ちゃんにとってはすごく良い話だと思ったんです。」
「でもっ! 瀬奈さんがいるのに他の人と結婚だなんてっ!」
それまで真剣に話を聞いていたセイは、思わず声を荒げてしまった。
「私は、颯ちゃんの枷にはなりたくない。 私と別れて彼が出世できるのなら、私は喜んで別れますよ」
瀬奈は淋しそうに笑ってセイを見た。
「颯太さんの幸せは、颯太さん自身が決めるのではないですか!?」
セイは思わず立ち上がって瀬奈に向かって叫んだ。
「・・・えっ」
「颯太さんは、瀬奈さんの事を枷だなんて思ってません! 仕事で出世しようがしまいが、瀬奈さんと一緒にいたかったんですっ! もしも颯太さんが瀬奈さんよりも
出世を選んだのならまだしも、颯太さんは瀬奈さんの方が大切だったんですよ! それをっ・・」
セイはぼろぽろと涙を流しながら必死で叫んだ。
瀬奈は、そんなセイに何も言えずただセイを見上げている。
「颯太さんはお見合いを正式にお断りしたそうです。 しかも、瀬奈さんの事ばかり考えてしまって仕事が手につかないと言ってました。
それが瀬奈さんの希望した結果ですか?」
「それは・・・」
瀬奈は思わずセイから目を逸らしてしまった。
「颯太さんを近くで支えてあげる事が瀬奈さんの役目なのではないですか? 少なくとも颯太さんはそれを望んでいます。」
瀬奈は下を向いて考え込んでいる。
「私も好きな人には幸せになってもらいたいです。 でもそばに居るなといわれるまでずっと一緒にいたいと思います。」
瀬奈はセイを見上げて訪ねた。
「あなたの好きな人は、どんな人なの?」
セイは質問に、泣いていた事も忘れてボッと首まで真っ赤になった。
「わわわ私の事は今どうでも良いじゃないですかっ!」
突然同様し始めたセイを見て、瀬奈は何だかセイが可愛く思えてきた。
「私たちの事は色々聞いてきて、自分の話はしてくれないの?」
瀬奈は意地悪くセイの顔を見て笑った。
「私は片思いですからっ!」
うっかり答えてしまった自分に、内心まずいと思った。
「へぇ〜っ 片想いなんだっ!? どんな人なの?」
尚も瀬奈は訪ねてくる。
いつの間にか状況が逆転してしまっている。
「も、もう良いじゃないですかっ! 私の話は」
とうとうセイはプイっと後ろを向いてしまった。
「ぷっ・・・ あははははっ」
瀬奈は、セイのその反応があまりにも可愛くて笑ってしまった。
「笑わないで下さいっ!」
「ご、ごめんなさい、だってあなたがあまりにも可愛いから」
瀬奈も颯太同様、だんだんセイの事が好きになっていた。
この数分のうちに、セイは笑ったり泣いたり怒ったり。
そのころころ変わる反応が可愛くてしょうがない。
自分とそっくりな顔という事も瀬奈には好印象だった。
「分かりました。 セイちゃんでしたっけ?」
「・・・・はい」
セイは笑われた事に機嫌を悪くして、顔も見ずに答えた。
「颯ちゃんに会いましょう。」
「本当ですかっ!」
セイは振り返って瀬奈を見た。
「はい。 セイちゃんと話をして、私も気持ちが変わりました。」
セイはそれを聞いてとても嬉しそうに微笑んだ。
「ありがとうございますっ! きっと颯太さん喜びますよ!!」
「でも1つだけ条件があります。」
瀬奈は、セイの手を握った。
「私が颯ちゃんと話をする代わりに、あなたの好きな人の事を話してくれる?」
「えぇっ!!!」
「だって、私の前世の人の好きな人なんて興味あるじゃない! それにあなたがどんな時代でどんな生活をしているのかも。」
瀬奈はふふっと笑った。
セイは、うぅっと悩んだが、やはり颯太と話し合ってもらいたかったので、結局は承諾するしかなかった。
「わ、分かりました・・・ でも颯太さんとお話をしてもらうことが先ですっ!」