「タイムスリップ 17」
セイは瀬奈と思われる女性の前に立ち、思い切って声をかけた。
「黒木瀬奈さんでいらっしゃいますか?」
「は、はい。 そうですが…」
瀬奈は自分と同じ顔の女の子に突然話しかけられた事にびっくりしているようだ。
「驚かせてすみません。 私は富永セイと申します。 ちょっとお話したい事があるのですが、今少しだけお時間ありませんか?」
セイはなるべく驚かせないように、優しく微笑みながら話しかけた。
「はい、大丈夫ですけど… 何か?」
瀬奈は訝りながらも、セイに興味を持ったようだ。
「あの… 実は…」
いざとなると、セイは何と言って颯太の話を切り出せば良いのか分からなくなった。
「えぇっと…」
もじもじとしながらなかなか話をしないセイに、瀬奈はだんだんイライラしてきた。
「あのぉ 話がないなら私これで…」
瀬奈がセイの元から離れようとした。
「あっ! 待ってください!」
セイは慌てて瀬奈の腕を掴んだ。
「私、実はあなたの前世の者なんです!」
「はっ!?」
突然意味の分からないことを言われて瀬奈は呆れた表情でセイを見た。
セイはセイで、心の中で思いっきり後悔していた。
(うわぁっ!! まっずい! 私1番言っちゃいけない事言わなかった??)
セイの頭の中は混乱していた。
きっともうこの人はこれ以上セイの話を聞かないだろう。
颯太との時と同じように、きっと自分の事を変人だと思ったに違いない。
「…で、何ですか?」
「えっ!?」
てっきりそのままセイの元から離れて行くと思ったのだが、話を聞こうとしている瀬奈にセイはびっくりした。
「前世で、何ですか?」
「えっと… その。。 しっ 信じて下さるんですか?」
瀬奈はセイの顔を見てふぅっとため息をつきながら笑った。
「信じる訳じゃないけど、何だかあなた必死みたいだし。 それにあなたの顔、私にそっくりだから。 話だけでも聞いてみても良いですよ。」
セイの顔がぱぁっと明るくなった。
「ありがとうございますっ! 信じてもらえないかも知れませんが、私はこの時代から100年以上前の時代から来たんです。」
瀬奈は一瞬びっくりした顔をしたが、またすぐ微笑んだ。
「それは遠いところから・・」
(うっ・・・ やっぱ信じてもらえない・・・)
セイは、瀬奈が全くセイの話を信じていない事に気づいていた。
しかし、何とか颯太の話までしたいと思い、必死に話を続けた。
「何故私が突然この時代に来てしまったのかは私にも良く分からないのですが、私の生まれ変わりらしき人がいると知り、どうしても会いたくなって来てしまいました。」
セイは瀬奈の手を握り、鼻息荒く力説した。
瀬奈はセイの勢いに少し後ずさりしながら、「あぁ、そうですか・・」と相槌を打っている。
「それで、瀬奈さんにどうしてもお聞きしたい事がっ!」
セイが颯太の話を切り出そうとした、その時。
「あの… さっきから気になってはいたんですが…」
瀬奈がセイの話を止めた。
「はい、何でしょうか?」
逆に自分に話をしようとしている瀬奈の話を、セイは嬉しく感じた。
「その、あなたが着ている服なんですが…」
「あ」
そうだ。 今セイが着ている服は瀬奈が颯太の家に置いていったままになっていた服だった。
今日颯太に服を新しく買ってもらったのに、着替えるのをすっかり忘れてしまっていた。
何か勘違いされないだろうかと、セイは不安になった。
「もしかしてあなた…」
セイは何て答えようか迷った。
「えぇっと… その…」
瀬奈はセイの反応を見て、やっぱりという顔をした。
「もしかして、あなた颯ちゃんのお見合い相手?」
「はぁっ!?」
まるで検討違いな発言をした瀬奈に、セイはびっくりした。
「私が元カノと聞いて、私に会いに来たんでしょ??」
勘違いにも程があるが、瀬奈は本気で少し怒った表情をしている。
「私の前世なんて嘘ついて。 それに颯ちゃんの婚約者が私にそっくりだなんて。」
「ちょっ、ちょっと待ってください!」
話がどんどんおかしな方向に行っている事に、セイは困惑した。
「違います! 私が颯太さんのお見合い相手だなんて!」
「だったらどうして私の服なんて」
瀬奈は訝しげな顔でセイを見ている。
「こうなったら本当の事を話ます。 信じてもらえるかどうか分かりませんが、聞いてください。 私がこちらの時代に来たとき、気がついたら颯太さんのお家にいたんです。
颯太さんは、私の憧れの人にそっくりで、最初その人だと思いました。
そしてお話をしているうちに、颯太さんはその人の生まれ変わりだという事が分かったんです。 そして、瀬奈さんが私の生まれ変わりではないかという話になりました。」
瀬奈はセイの話を半信半疑で聞いている。
「それで、私この時代にた・・タイムスリ… えーと タイムスト…」
「タイムスリップのこと?」
「あ! そうです! それです。 そうなった理由を考えたんです。 それで、私は瀬奈さんにどうしても会いたいと思って今日会いに来させてもらいました。」
セイは瀬奈の目を見て、必死に話した。
「…分かりました。 とりあえず、あなたの話は信じましょう。 それで、私に会って何を話したかったんですか?」
全面的に信用した訳ではなかったが、セイの真剣さに負けた。
「あ、はい…。 その、颯太さんの事なんですが…」
瀬奈の顔が暗くなった。
「まぁ、そうじゃないかと思ったけど。」
セイは瀬奈の顔を見て、話しづらくはなったが、勇気をだして聞く事にした。
「はっきりお聞きします。 颯太さんの事、好きじゃなくなったって本当ですか?」
瀬奈は少し考えていたが、セイを見てきっぱりと答えた。
「本当です。 もう全然好きじゃありません。」