「タイムスリップ 16」
セイさんと一緒に食べたモーニング 650円
セイさんに買ってあげた洋菓子 1,500円
一緒に行った映画館 1,400円
セイさんにプレゼントしたワンピース 8,000円
セイさんと過ごした時間 ・・・・ priceless
・・・・・・・・・・・・。
「あのぉー・・ 颯太さん、さっきから何にやにやしながらぶつぶつ言ってるんですか?」
怪訝な顔でセイが颯太の顔を覗き込んだ。
今日は朝からセイを連れ出し、モーニングを食べた後街を案内するついでに色々と買い物をしていた。
セイは初めて見る街並みに感動しっぱなしだった。
口をぽかーんと開けて高層ビルを見る姿は、とても可愛かった。
車を見ては驚き、若い人達の話し声を聞いては理解出来ないと嘆いたり、ネオンを見ては「どうやって光らせているのですか」と興味津々に聞いてきたり…
全ての行動が颯太には可愛くてしょうがなかった。
セイが女だと分かったからには、外を歩くには男装をさせる訳にはいかなかった。
何より困ったのは頭だった。
どうにか隠せないかと悩んだ挙句、髪を下ろした状態でニット帽をかぶらせてみた。
服は、彼女が置いたままになっていたものを着せてみると、ぴったりだった。
彼女はそこそこ背が高く、スタイルも良かったのだがセイもやはり同じスタイルだったようだ。
彼女の服に身を包んだセイは、彼女と瓜二つでとても綺麗に感じた。
ただ、彼女の歳よりもだいぶ若いセイは、彼女の妹のようだ。
颯太は、可愛い妹を連れて歩いている気分でとても幸せだった。
「ご、ごめんなさい。 ちょっと考え事してました!」
顔を真っ赤にして颯太は答えた。
「そうですか… それにしてもこちらの時代は見た事ないものばかりですね! 感動ですっ!」
目をきらきらさせながら、セイは周りを見渡した。
どこに連れて行けば良いか悩んだ挙句、彼女の会社のある新宿で色々見て周ることにしたのだ。
電車に乗った時のセイは、さすがに恥ずかしかった。
大声で「すごい! 早い!」と叫んだり、座席に後ろ向きに座って窓の外を見て嬉しそうにしている姿は3歳の子供にしか見えなかった。
「セイさん、他に何か見たいものはありますか?」
「見たいものと言っても… 何が何だか全く分からないので… 歩きすぎたのと人の多さで疲れてしまいました。」
さすがに初めて歩く新宿の街にすっかり疲れた様子のセイは、はぁとため息をついた。
「ちょっと休憩しますか。 そこにケーキバイキングのお店があるんですよ! フルーツたっぷりですっごく美味しいんですから♪」
「ケーキバイキ…? 何ですか、それは?」
また知らない言葉を聞いて、セイは颯太を不思議そうに見上げた。
「ふふっ 行けば分かります。 さ、行きますよ!」
と、颯太はセイの手を取って元気良く歩き始めた。
その瞬間、セイは総司の事を思い出した。
総司も良くセイと手をつないで歩いた。
まだ会わなくなって1日しか経っていないが、妙に淋しくて会いたくなった。
きっと知らない場所で知らない人達の中にいるから余計に淋しくなったのだろう。
(沖田先生、どうしてるかな… 私が帰らないからって心配してるかな。 はっ! それよりももしかしたら私脱走の罪で追われてたりしてないかな!?)
セイは急に不安になった。
元の時代に戻った瞬間、捕まって切腹なんて事になりかねないのだ。
(ど、どうしよう??? 事情はなしても誰も信じてくれないだろうしな… 気になり始めたら、止まんなくなってきちゃった)
セイはあれこれ考えているうちに、どこかのビルに入ったようだった。
エレベータに乗り、颯太は5Fのボタンを押した。
「楽しみですね♪ セイさんびっくりするだろうな〜 沢山のケーキを前にしたら!」
颯太は嬉しそうにケーキバイキングを思い浮かべながら離している。
セイはそんな事耳に入ってないかのように、眉間に皺を寄せながら考えてしまっていた。
「さ、ここですよ! 見てください、このケーキ!」
突然目の前に現れたケーキたちに、セイの思考は一瞬にして途絶えた。
「わぁっ! きれ〜い! 何ですかこれ!?」
初めてみたケーキにセイは感動していた。
「これはケーキと言って、西洋のお菓子なんです。 とっても美味しいんですよ♪ お勧めは…」
と言って皿に次々とケーキを乗せていった。
空いている席に座り、颯太は乗り切らないほどのケーキを盛った皿をセイに渡してきた。
「さ、どうぞ食べてみて下さい」
セイはドキドキしながら一口食べてみた。
「うわぁっ! 美味しい!」
セイは飛び切りの笑顔で颯太を見た。
「でしょう!? 江戸時代にはこんな美味しいものがなくて本当に残念ですよね???」
セイの嬉しそうな笑顔を見て、颯太も嬉しくなった。
「全部味が違うんですよ! 私はこれを5皿は軽く食べれます」
颯太は次々と食べていく。
それを見てセイは噴出した。
「あははっ まるで沖田先生ですね!」
嬉しそうにケーキを頬張る颯太は、まるで総司そのものだった。
颯太にしても、セイにしても自分の想う相手を互いに重ねあってみていた。
「ふーっ さすがにお腹いっぱいです」
セイはうんざりした顔で颯太を見ていた。
おそらく颯太はケーキを30個は食べただろう。
さすがにセイは5個食べたところで気持ち悪くなっていた。
「そうですか…」
「セイさん、そんなちょっとしか食べなくて良いんですか?? 何でしたらもっと取ってきましょうか」
「いえっ! 結構です!」
セイはこれ以上ここにいたくないとばかりに勢い良く立ち上がった。
「あのっ! まだ会いに行かなくて良いんですか??」
「え? 会いに? …って、あっ!」
今日の目的をすっかり忘れていた颯太は慌てて時計を見た。
6時32分
彼女の仕事が終わる時間は7時だ。
ここから職場までは歩いても10分かからない。
「良かった。 間に合う。 もう出ましょうか」
颯太は荷物を持ち、レジでお金を払った。
「すみません、ご馳走様でした。」
今日1日おごってもらうばかりだったセイは、何だか申し訳なくなった。
「何言ってるんですか! 私が好きでやってる事なので気にしないで下さいね」
颯太は笑顔で答える。
「あの、1つお聞きした事があったのですが…」
2人はビルを出て、彼女の会社へ向かって歩き始めた。
「何でしょう?」
「ずっと聞きそびれていたのですが、彼女のお名前なんていうんですか?」
最初に聞けばよかったのだが、何だか1度聞きそびれて何となく聞かないでいた。
しかし今から本人に会うというのに名前も知らない状態では会えない。
「あぁっ そう言えば言ってませんでしたね!」
颯太は今気づいたようで、ぽんと手を打った。
「彼女の名前は黒木瀬奈です。」
「くろきせな さん…」
おそらく自分の生まれ変わりであろう人の名前だが、全くピンと来なかった。
「あ、着きましたよ。 そこのビルで働いてるんです。 多分もうすぐ出てくると思います」
そう言って颯太が指差した先には、見上げる程の高いビルがあった。
今日1日新宿を歩き回ったセイは、既に高層ビルには見慣れてしまい、特に驚かない。
「分かりました。 では私は瀬奈さんが出てくるのをここで待ちます。 颯太さんはどこかで待っててください」
「えぇっ!?」
「何を驚いているのですか? 2人で会いに行ったら、それこそ誤解されて変に思われるじゃないですか!」
当然の事を言われ、颯太は何も言えなくなった。
「安心してください。 余計な事は何も言いませんから」
ポンと胸を軽く叩いて自信満々に颯太に言った。
颯太はものすごく不安だったが、ここはセイに任せる事にした。
「では、私はそこのお店で待ってます。 終わったらそこに来てください」
瀬奈の働いているというビルのすぐ隣の1Fのカフェを指差していった。
「分かりました!」
颯太は不安そうな顔で笑いながら、セイに手を振ってカフェに入っていった。
「わぁ〜、やっぱ緊張するなぁ」
ビルの入り口の壁にもたれて瀬奈を待っているセイはドキドキしていた。
一体自分の生まれ変わりの人はどんな人なのだろうか。
(もしすっごい嫌な人だったらどうしよう?? いやいや、颯太さんがあんなに好きになる人だから、きっと良い人に決まってる!)
自分を励ましながら瀬奈を待つ。
その時、出口から出てきた女性にセイの目が留まった。
そこには自分とそっくりな女性がいた。
「あっ!」
セイは迷わずその女性に駆け寄った。
「あのっ!」
突然声をかけられた女性はびっくりしたが、その顔を見て更にびっくりしたようだ。
「えっ!? 私!?」