「タイムスリップ 13」
「さっきのポトガラの人‥?」
「そうです。 あなたに似ていると言った人ですよ」
颯太ははにかみながら微笑んだ。
「なので、始めにあなたを見た瞬間、彼女かと思いました。 実際は性別も違いましたけどね」
颯太の話を聞いて、セイはかなり複雑な気分になった。
自分の生まれ変わり(かもしれない)の人と総司の生まれ変わり(かもしれない)の人が恋仲なのだ。
なのに、自分が総司をふったなんて、セイには考えられなかった。
「その方は今はどうしているのですか?」
「さぁ、もしかしたら新しい恋人でも出来たのかもしれませんね。 別れてから連絡取ってないですし」
食べおわった食器を片付けながら総司は答えた。
キッチンへ向かった総司に何となくセイはついていく。
「お見合いの話はどうされたんですか?」
「断りましたよ。 彼女がいなくても、お見合いなんてする気はもともとありませんしね」
と皿を洗いながらセイを見て苦笑いした。
セイは、颯太を見つめた。
なぜ自分がこの時代に突然来たのかを改めて考えてみる。
きっかけは、颯太が恋人に送るはずだった指輪。
来てみれば、2人は既に離れ離れになっている。
お節介の自分は、どうしても颯太を放っておく事が出来なかった。
『どうしたら颯太さんを幸せにしてあげられるんだろう‥』
「清三郎さん‥ そんなに見つめられたら洗い物しづらいんですけど‥」
先ほどからぶつぶつ言いながら、颯太をじっと見ていたセイにたまらず颯太は声をかけた。
「あっ すみません! 考え事してて」
手伝いますよと言って、セイは洗い終わった食器を拭き始めた。
「もしも‥」
颯太がポツリと言った。
「え?」
「もしも本当に彼女が清三郎さんの生まれ変わりだとしたら、あなたには彼女の気持ちが分かるんですか?」
突然真剣な表情で颯太はセイに問う。
セイは思わずドキッとしてしまった。
「え‥えーと‥ もし、私なら沖田先生を絶対に傷つけたりはしたくないと思います。 私は自分を犠牲にしても先生を守りたいですし幸せでいてほしいです。 私のいる時代とはこちらは違うので何とも言えませんが、私がその人なら‥」
そこまで話してセイは考え込むように口をつぐんだ。
颯太は黙り込んでしまったセイを、不思議そうに見つめた。
「ひょっとしたら‥」
何か閃いた顔で颯太を見上げた。
「彼女の気持ちが分かったんですか?」
期待のこもった目でセイを見る。
「きっとその彼女はあなたを傷つけようと思ったわけではないのかも知れません。 むしろその逆では?」
「逆?」
「颯太さん! その方に会わせてもらえませんか?」セイはキラキラとした目で颯太をみた。
「えぇぇぇぇぇっ!?」
「私直接会って話がしたいです!」
「だ、ダメですよぅ!」
颯太は頭をぶんぶん横に振りながら拒否する。
「なぜです? 颯太さんはこのままその方と一生離れ離れになっても良いのですか?」
「それは‥」
「私、考えたんです。 なぜ私が颯太さんの指輪を見つけたのか。 そして、どうしてこの時代に来てしまったのかを。 きっと、沖田先生の生まれ変わりである颯太さんが困っているのを助けるために来たんだと思うんです。 ここで何もしなければ、来た意味もないし私自身一生後悔します。」
鼻息荒く力説するセイに、颯太は圧倒されていた。
「で、でもどうやって?」
「会わせてくれるだけで良いです。 あとは私がどうにかします!」
颯太はどうするべきかと悩んだ。
そして諦めたようにため息をついた。
「分かりました。 でも私からの連絡には一切彼女は無視します。 彼女の仕事終わりを見計らって会いに行くしかありませんね。」
「分かりました! 早速明日行きましょう!」
張り切っているセイを見て、颯太はふふっと笑った。
「彼女はデザイナーをしているのです。」
「デザイナー?」
「服を作るために、色々を案を出す人ですよ。 明日は土曜で私は休みですが、多分彼女は仕事に行くはずです。 終わりそうな時間に職場まで案内しますよ。」
それを聞いて、セイの顔はぱぁっと明るくなった。
「わぁっ 楽しみですね!」
可愛らし笑顔で颯太を見るセイに、颯太はくらっとした。
『この人は本当に男なのだろうか。 表情も仕草も全てが女の子のようだ。 しかも沖田総司の話になると、まるで恋をしている女の子のように頬を染める。』
「どうしました?」
「いえ、何でもないです。 食後のコーヒーでも飲みましょう。」
と微笑んで、手慣れた手つきでコーヒーサーバーにコーヒーと水を入れ、カップを用意しはじめた。
「清三郎さんは不思議な人ですね」
コーヒーをカップに注いでセイに渡す。
「え? どうしてですか?」
「だって、清三郎さんと話をしていると、何だか幸せな気分になります。」
セイはその言葉にぽっと赤くなった。
「あ、ありがとうございます。」
はい、コーヒー と言って、颯太はセイにカップを渡した。
「苦っ!!!」
初めて飲むコーヒーの苦さに、セイはびっくりした。
「あははっ やっぱり苦かったですか。 じゃあ、ミルクと砂糖を入れてカフェオレにしましょう」
と、カフェオレにしたコーヒーをセイに渡した。
「あ、甘くて美味しい」
セイは、初めて飲んだカフェオレに夢中になった。
「この時代はすごいですね。 色んなものがあります。 これらは全て外国から来たものですか?」
「そうですよ。 私たちはこれが当たり前だと思ってるんですけどね。」
「でもここの生活に慣れてしまったら、向こうに帰ってから大変ですね」
と言って2人で顔を見合わせて笑った。
颯太は、突然来たセイを最初は変人だと思っていたのだが、話しているうちにとても好きになっていた。
またセイがもとの時代に戻る事をとても淋しく思い始めていた。