「タイムスリップ 12」


「つい最近まで私には付き合っている彼女がいました」
「彼女?」
「恋人の事です。 分かりますか?」
「はい。 恋仲の方がいらっしゃったという事ですよね?」
颯太はふふっと笑った。
「はい、そうです。 私はその人と結婚しようと思ってました。」
「とても好きだったのですね?」
セイは颯太の恋愛話に食いついた。
何だか総司の話を聞いている気分になってきた。
「すごく好きでした。 でも私に見合いの話が出たんです。」
「どうして恋仲の人がいるのに!?」
セイは身を乗り出して訪ねる。
「取引先の社長の娘さんに気に入られてしまって。 もちろん私は断るつもりでしたよ。
なのに噂でその事を知った彼女に別れ話をされたんです」
「何故!?」
「分かりません。 最初は、私に気を使ってそう言ったのだと思いました。 なのに、別れたくないと言った私に、彼女は私の事はもう好きじゃないと言って来たんです。 前から別れたかったと。 今回の見合いの話はちょうど良い機会だったんだって」
「ひどい…」
颯太は今にも泣きそうな顔になっている。
「それから彼女とは連絡が取れなくなりました。 電話をしても着信拒否にされて…  あ、分かりませんよね。 とにかく私の事を避けるようになってそれきり彼女とは会ってもいないし連絡も取っていないんです。」
「そんな…」
セイは話を聞いているうちに、ポロポロと涙が出てきた。
「えっ! 何で泣いてるんですかっ!」
「だってひどいっ! 颯太さんはその方の事結婚を考える程好きだったのに」
「彼女の本心が何か分からないのが1番辛いですね。 どうしていきなり私から去っていったのかが分からないんです。 それまでは普通に仲良く過ごしていたのに」
セイは颯太の話を聞いて、自分の事のように胸が痛くなった。
それは、やはりセイも恋をしているからなのだろう。
「それが原因で最近毎日イライラしていました。 何をしていても彼女の事を考えるし。 仕事にも身が入らなくてミスばかりしてしまって。」
「ミス?」
「失敗をしてしまうという事ですよ」
気持ちが痛いほど分かってしまう。

しかし、セイは総司の生まれ変わりである颯太のその恋人の事が気になった。
「聞いても良いでしょうか?」
「何をです?」
「相手の方はどんな方なんですか?」
セイはドキドキした。
颯太の好きな人という事は、総司の好みのタイプでもあるからだとセイは考えたからだ。

颯太は少し考えていたが、意を決したように言った。
「さっきの写真の人ですよ」