「タイムスリップ 10」
「昔は、同姓同士は趣味として良くある話だったと高校の授業で先生が話してたのを覚えてます。」
「違います! 本当にそういうのではないんですっ! 先生は私にとって命の恩人なのです。
そして全てにおいて尊敬している方なんです!」
「命の恩人?」
「はい。 私は討幕派の浪士に襲われて父と兄を亡くしました。 その時に私を助けて下さったのが沖田先生なのです。」
「へぇーっ そうなんですか。 それは辛い経験をしましたね。」
颯太は悲しそうな顔をした。
「私はその時の沖田先生を追って、新撰組に入りました。 私の誠は沖田先生です。 沖田先生の為なら命も惜しくないと思えるほどの方なのです。」
颯太は言葉を失った。
今のこの平和な時代を生きている自分には、ありえない話なのだ。
誰かの為に自分の命もかけられるというこの少年に心から関心した。
「…すごいですね」
「おかしいとお思いですか?」
セイはバカにされたのだと勘違いした。
「いえ、そうじゃないんです。 今のこの時代はあなたたちの時代からは考えられないほど平和です。 命を懸けて戦うなんて事は私たちでは経験できない事なんです。」
「平和…」
「はい。 あなたのように刀を持っている人なんていません。 殺人事件はあるけれど、皆どこか他人事で聞いてます」
毎日人の生き死にを見ているセイにとっては、にわかに信じられない事だった。
「本当ですか? 戦はここではないのですか?」
「もちろん戦争をしている国もあります。 でも日本はここ数十年戦争なんてしていませんよ。 私を含め、今の若い人は戦争を知らないし、平和ボケしています。」
セイはショックを受けていた。
しかし、自分達が望んでいるのはそういう世の中なのだ。
「私も、本当は人を斬りたくはありません。 京の町も平和になってくれればどれほど嬉しいか…」
颯太は、新撰組がどうなるか分かっているだけに、セイの話を聞いて悲しくなった。
神谷清三郎という人物は聞いた事がないが、もしかしたら悲しい命の落とし方をするのではないかと不安になった。