それは呆れるくらいの日常
京にも冬が近付いてきたなと思う朝晩。
吐く息白く、無邪気に遊ぶ子供達(総司含)の鼻や頬は真っ赤に染まる。
そこに清三郎が乱入して総司に綿入れを差し出す。
これがいつもの光景のはずだった。
だがこの日はいつまで経っても清三郎のツッコミが来ない。
なんで?と総司に問えば、総司も「??」らしい。
こんな時にこそあの神谷はんツッコミが欲しい!
そう願ってしまう八木家の子供達だった。
その頃そのツッコミはというと
「久々の晴れは嬉しいけど・・・流石に手が痛くなってきたな〜」
はぁ、と手に息をかけまた水の中に手を入れる。
何日か振りに晴れた今日は溜まった洗濯物を絶対やる!
朝起きて気持ちのいい朝日を見た時から清三郎は決めていた。
午後から巡察だから午前中にやり切る。
朝餉が終わると同時に一番隊の皆に洗濯物を出すよう指示をする。
相田と山口も手伝うと言ったが、
「洗濯は若輩の私の仕事ですので」と言って丁重に断った。
本音は、自分の洗濯物を見られたくないが正しい。
まだ前川邸にいた頃、他の人たちと洗濯を一緒にしていた。
だが斉藤の『下帯間違い事件』をきっかけに清三郎は他の人と洗濯を一緒にしなくなった。
あれは清三郎にとって二重の衝撃を与えた。
一つは山南の事件の真相を教えてもらえなかった事。
もう一つは・・・自分の下帯を他人に使われた事。
女子である自分の下帯を使われた事が後々になって衝撃だったのだ。
実は・・・下帯に関してはこれだけではなかった。
洗濯を干していて何故か自分の下帯が無くなったのは一度や二度ではない。
入隊当初はもっと酷かった。
あまりにも男所帯はそういう管理が無頓着でよく下帯が間違われていた。
その度、干す場所を変えたり、名前を大きく書いたりと手段をとってきた。
そして現在の最終手段となった。
『一番隊の洗濯係は神谷清三郎のみとする。
洗濯・取り込みは邪魔をするべからず』
これが一番隊の隊規。
もちろん組長・沖田総司公認である。
他にも色々隊規がある。
『神谷が風呂に入る時は組長付き添い。
組長不在時は相田と山口付き添いとするべし』
二人一緒なのは一人だと自制心が不安だという二人からの直訴があった為。
『神谷の寝ぼけには注意する事』
『神谷と組長が喧嘩をしたら、まず神谷のご機嫌を伺うべし。
長続きするようであれば斉藤先生に相談すべし』
『神谷と喧嘩中の組長の稽古を受ける際は死番と同じ覚悟をすべし』
古参の先輩方の体を張った教訓でもある。
隊規といってもほとんど清三郎絡みといってもいい。
それについては皆異論はないらしい。
一番隊は神谷清三郎を中心に動いている。
「あ、神谷さんてばこんな所にいたんですか?」
すっかり洗濯を終え、清三郎は後片付けをしていた。
「沖田先生!また顔真っ赤ですよ?そんな寒い格好して風邪引いても知りませんよ!」
「神谷さんこそこの手!」
清三郎の赤く悴んだ両手を総司は掴んで包む。
そしてはぁ、と息を吹きかける。
思わず顔を真っ赤にしてしまう。
「神谷さん・・・」
徐々に近付く総司の顔に清三郎の動悸も早くなる。
これって・・・もしかして!?
そしてオチは来る。
「風邪引いたんじゃないですか?顔、真っ赤ですよ」
清三郎の額に自分の額を当てて熱を計る野暮天大王。
そしてこれはこれでいいかもvと思ってしまう粗食派、本当は乙女の富永セイ。
今日も清三郎の世界はこの野暮天を中心に動いている。