タクシーにお金を払い、セイを抱き上げて沖田は家に入った。

自分のベッドにセイを寝かせた沖田は、一息ついてスーツを脱ぎ部屋着に着替えた。
幾分ゆったりとしてほっとした沖田は、ふとベッドに寝ているセイを見た。

苦しくないかな・・

そうは思っても、まさかセイの寝ている間に自分が着替えさせる訳にはいかない。
それにこの家には、女性が着れるような服などない。


沖田は、仕方なくセイが着ている上着だけを脱がしてそのまま寝かせる事にした。

しかしやはり後ろめたい。

「神谷さ〜ん? 起きてくれたりしませんか〜?」
一応声をかけてみる。

「あの〜・・ 上着だけ脱がせますけど良いですか〜?」
声をかけて、じっとセイを見下ろす。

しかし全く反応はなく、気持ちよさそうに寝息を立てている。

「すみません、ちょっとだけ失礼しますね」
そう言うと、沖田はセイの背中に手を入れて上半身だけ抱き起こし、セイが着ていたジャケットを脱がせた。


沖田はドキドキしていた。

既にジャケットを脱がせ終わっているにも関わらず、なかなかセイを手放せないでいた。
セイから放たれる香りと、セイの体の柔らかさに体温が一気に上昇したような気がした。

そんな事してはダメだと自分に言い聞かせながらも、沖田はセイをそのままぎゅっと抱きしめた。

しばらくセイのぬくもりを堪能した沖田は、そのままセイを自分から放しベッドに寝かせた。


一体自分は何をやっているのだろうか。
こんな事、セイに知られたら失望されるに決まっている。

沖田は、自分が何をされたか全く気づいた様子もないセイにタオルケットをかけると、シャワーを浴びに浴槽へ向かった。








「んん・・っ」
最悪の気持ちでセイは目を覚ました。

「頭痛い・・」
意識が徐々に戻ってくるにつれ、頭痛に顔を顰める。

昨日の事が頭から離れない。
夢の中にまで出てきてしまった。
以前から怪しいとは思っていたが、まさか現場を見てしまうとは。

最悪だ・・


喉渇いたな・・
水のみたい。

キッチンへ向かおうと、セイは瞼を開いた。

一瞬理解できなかった。


「えっ!?」
セイはガバっと起き上がった。

全く見慣れない部屋。

「ここ、どこ?」

呆然としながら辺りを見渡すと、カーペットの上に寝ている沖田が目に入った。

「えぇっ!?」

セイは必死で考えた。
何故自分がここで寝ているのかという事を。

全く記憶がない。

「うそーっ! えーと、えーと・・ 昨日は沖田さんと飲みに行って、それで・・」
バーに入ったところまでは覚えている。
が、その後の事を一切思い出せない。

自分の体をj見ると、上着だけは脱がされているが服はちゃんと着ている。

ホッと息をついた。


ここは沖田の家だろう。
酔いつぶれた自分を自宅に連れ帰り寝かせてくれたに違いない。
この人は本当に優しい人だから。

セイは申し訳ない気持ちになった。

ベッドから降りると、沖田をそっとゆすってみた。
「あの・・ 沖田さん・・?」

「ん・・」
沖田は、2、3度瞬きをしてゆっくり目を開いた。

「あ、神谷さん」
沖田はにっこりと微笑むと、起き上がった。
「おはようございます」
「お、おはようございます! あの、ご迷惑をおかけしてしまったみたいで・・」
「あははっ 大丈夫ですよ。 それより気分はいかがですか?」
何でもない様子で挨拶をする沖田に、セイは真っ赤になった。
「えぇっと・・ 大丈夫です・・」
「それは良かった」
「私・・ 何か沖田さんに失礼な事してませんか? あの・・ 記憶がなくて・・」
気まずそうに沖田を上目遣いで見ながら、セイは尋ねる。
「いいえ、何もしてませんよ? でも、神谷さんが寝ちゃってお家がどこか分からなかったので、ここに連れてきちゃったんです。 私こそ、勝手な事しちゃってごめんなさい」
「いえ! お酒強くないくせに、飲んじゃった自分が悪いんです! ご迷惑おかけしてすみませんっ!!」
そう言って、頭を下げるセイに、沖田はふふっと微笑んだ。
「気にしないで下さい。 私もあなたと昨日飲めて楽しかったんですから」
「いえ、でも・・ 何かお礼しなきゃ・・」
うーんうーん、と言って考えているセイに、沖田はあははっと笑った。
「そんな、お礼なんてしなくていいですよ。 あっ、でももし良かったら1つお願いしたい事があるんですけど・・」
「えっ! 何ですか? 私に出来ることなら何でもっ!」
「お腹空いちゃって・・ 朝ごはんなど作っていただけると、とっても嬉しいです」
いたずらっ子のような顔をしてセイにそういう沖田に、セイは微笑んだ。
「そんな事で良ければ、喜んで」






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時雨  3