再来  9




頭が痛い・・・
総司は屯所への道をふらふらと歩いていた。
昨夜は原田と永倉にしこたま飲まされてしまった。
あまり覚えていないが、2人はしきりに「めでたいめでたい」と言っていた。
何がめでたいのいか良く分からなかったが、勧められるままに酒を飲んだ。
間違いなく二日酔い・・
今日は午後から稽古がある。 
こんな状態で務まるのか不安だったが、とにかく屯所へ戻って時間まで横になろうと思った。

「総司、今帰りか」
屯所の門をくぐったところで、土方に声を掛けられた。

「あ、土方さん。 ただ今戻りました」
総司は青い顔でにへらと笑って土方を見た。

「ひどい顔してんな、お前。 飲んだのか」
「昨日は原田さんと永倉さんに掴まっちゃって、散々でしたよぉ。 あ、ちょうど良かった! 土方さんの部屋で寝かせて下さい♪」
と言って、総司は土方の部屋へ勝手に向かった。
「おい、誰も良いなんて言ってないだろう!」
土方は怒鳴るが、お構いなしに総司は土方の部屋へ入って勝手に横になった。

ドカドカと後を追って来た土方が部屋へ入ってきた。

「もぉー、土方さん。 もうちょっと静かに入ってきてくださいよぅ。 頭に響くじゃないですかぁ」
土方はそんな総司の言葉を無視して、総司の横にドカっと座った。

「お前、そんなんじゃ平隊士に面目が立たないだろう。」
「ふふっ ごめんなさーい」

土方は総司の顔をじっと見た。

「そう言えば見合いの話だが・・・」
「あぁ、奈緒さんでしょ」
土方は総司の言葉にびっくりした。
「お前、何で知って!?」
「昨日屯所まで来ましたよ」
「ほんとか!? それでどうした!?」
総司は話が長くなりそうなのを予想して、よいしょっと良いながら起き上がった。

「団子屋に一緒に行きました」
それを聞き、土方の顔が緩んだ。
「そうか、お前もなかなかやるじゃねぇか! で、どうだったんだ?」
総司はふぅとため息をついた。
「別にどうもこうもないですよ。 ただ団子を食べて、家まで送って帰って来ました」
「そんな事は聞いてねぇよ! 具体的な話はしたのかって聞いてんだよ」

「んー、嫁ぎますって言われました」
「何っ! やったじゃねぇか!!」
土方は嬉しそうに総司の肩をバシッと叩いた。

「いたいですよぅ! 何するんですか、土方さん!」
「俺のしらねぇ所できっちりやりやがって!」
「まだちゃんと決めた訳じゃないですよ。 これからゆっくり考えていこうと思ってるんですから」
総司はあくびをしながら答えた。

「そんな事言ってんなよ。 先方が乗り気になってくれてんだ。 お前がさっさと娶ると決めちまえば良いだけの話だおろうが」

総司は土方に言うんじゃなかったと後悔した。

「もう少し考えさせてください。 そんな一生の問題を1日や2日で決められませんよ。」
「何言ってやがるっ! お前はいつもそうやって」
「もーっ! 止めてくださいよ! その話はまた今度しますっ!」
総司はこれ以上この話を続けたくないとばかりに立ち上がり、土方の部屋を出て行った。
「おい! 待て! 総司!!」
土方の制止も振り切り、総司はぱんと襖を閉めた。

(はぁっ 結局休めなかった・・)
頭はどんどん痛くなるし眠いし総司はどうにか午前中のうちに休みたかった。

1番隊の部屋へ行って、横になろうとした。
その時、別の隊の隊士が声をかけてきた。

「沖田先生、客人ですが」
総司は今まさに寝ようとしたところに声をかけられ、少々苛立った顔を隊士に向けた。
「客人ですか」

隊士は明らかに機嫌の悪い総司にしり込みしながら答えた。
「はい。 奈緒と名乗る女性ですが・・・」
「・・・今日は帰ってもらって下さい。」
(とてもじゃないが、今日は会う気分ではない。)
「え・・・ でも・・」
「すみませんが、帰ってもらってください」
今度は怒気を含めた声で言った。
「は、はいっ! 承知しました!」
隊士は慌てて隊士部屋から出て行った。

(やっとこれでゆっくり休める)
総司はすぐにうとうととし始めた。


「・・・・先生・・  沖田先生・・・」
申し訳なさそうな声がまた総司を呼ぶ。

「・・・・・・・・・・・・」
総司は目だけをそちらにやった。
「すみません、お休みのところ。 先ほどの女が門で待っていると言っているのですが・・・」
総司はどうするか悩んだ。
このまま放っておいても良いが、門にいられると他の隊士の目につく。
自分が直接断ったほうが良いだろう。
総司はのそっと立ち上がり、隊士に礼を言うと門へ向かった。


「沖田様っ!」
総司を見るなり、嬉しそうな顔で総司に近づいてきた。
「何か御用ですか」
昨日とはうってかわって不機嫌そうに総司は問うた。

「お時間ありましたら甘味処でもどうかと思いまして、お迎えにあがりました」
「すみませんが、今日はこの後稽古があります。 それに今日はちょっと体調が悪くて。 今日は帰ってもらえますか」
総司は不機嫌を隠そうともせず憮然とした態度で言った。
しかし奈緒はそんな事は全くお構いなしだ。
「では明日はどうですか?」
「明日は1日隊務がありますので」
「では明後日は・・」
「明後日も隊務です。 すみません、本当に今日は疲れてるので」
と言って総司は奈緒をその場に置いたまま屯所の中へ入っていった。

少し嫌な態度を取りすぎただろうか・・
しかし今の総司には先ほどの奈緒の態度はとても苛立たせるものだった。
若いから仕方ないのか。
とにかく頭痛が酷い今の総司にはどうでも良かった。

総司は隊士部屋に入ると、畳の上にゴロンと横になった。。
とにかく少しでも眠りたい。







「先生・・・ 沖田先生・・」
また総司を呼ぶ声がする。
またかと思う反面、とても心地よい声にもっと聞いていたくなった。
「先生、こんなところでお昼寝していると風邪を引きますよ。 せめて布団はかけないとダメですよ」
と言って、優しい手が総司の頭を撫でる。
総司はその手にうっとりとした。
とても心地よい気持ちのまま、総司は深い眠りについた。


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