再来 8
総司は奈緒を送った後屯所に帰る道を先ほどの奈緒の言葉を思い返しながら歩いていた。
「私、沖田様に嫁ぎます!」
「えぇっ!? 今の私の話を聞いてましたか? 私は一生誰も愛せませんよ!?」
「はい、ちゃんと聞いてましたよ。 その方の事を忘れられなくても良いです。 」
総司はびっくりして言葉が出せないでいた。
「私と新しい未来を作っていけば良いんです。 その方との過去は大事にして頂いて全然構いません。」
奈緒はにっこり笑って総司を見上げた。
その顔が、どことなくセイに似ていた。
「奈緒さん・・・」
「今すぐではなくても構いません。 もし沖田様が宜しければ、私の事を知っていただく為に今日みたいにお団子食べに行ったりお散歩に行ったりして頂けませんか? 沖田様の事ももっと沢山知りたいです」
総司が何も言えないでいると、奈緒は淋しそうに下を向いた。
「私は沖田様の事を今日1日でとても好きになりました。 なので、沖田様の傷を一緒に癒して行きたいのです。 きっとその方のようにはいかないとは思いますが・・・」
「・・・・お気持ちはとても嬉しく思います。 でも、それでは奈緒さんが辛くないですか?」
「辛くはないです。 既にこの世にいない方にはどうやっても勝てませんから」
2人が話しているうちに奈緒の家が見えてきた。
「あ、家に着きました。 送って頂いてありがとうございます。 またお誘いに上がらせて頂きますね」
と言って、奈緒は総司に手を振って家に戻っていった。
総司は1人屯所への道を歩きながら、どうするべきか考えた。
今日奈緒に会って、とても気持ちの良い子だと思った。
彼女といると何だか嫌な事は忘れられるような気がした。
しかし好きという気持ちとはまた違う。
やはり総司はセイが忘れられない。
あれからセイも全く現れないし、現れたとしても彼女はもう死んでいる。
総司には、奈緒と一緒になるべきかこのまま誰も娶らず1人でいるべきか分からなかった。
総司は、また桜の木の下に来ていた。
ボーっと何をするわけでもなく木の下に座っている。
セイが現れない事は分かっている。
でも少しでもセイの気配を感じられる所にいたかった。
自分はどうしてこんなに弱い人間なのだろう。
たった1人の人間が自分からいなくなっただけで、こんなに心の中がからっぽになっている。
仕事中もどこか上の空でいることが多い。
何の為に新撰組にいるんだと自分を叱った。
セイがいる時はこんな事1度もなかったのに。
総司はそんな事を考えながら、日が暮れるまでその場を離れる事はなかった。
その様子を1人見ている者がいた。
セイだった。
セイはやはり総司の事が心配でこの場にとどまっていた。
しかし今の総司の前に自分が出て行ってしまえば、また同じ事の繰り返しになる。
そう思いセイは総司を見守る事にした。
今日奈緒という女と会っていたのも見ていた。
とても胸が痛んだ。
しかしとても可愛らしい女性で、性格も明るくきっと総司の事を幸せにしてくれるだろうと思った。
(沖田先生・・・ 早く元の先生に戻ってください)
セイはそう願う事しか出来なかった。
「ようっ 総司!」
総司が屯所に入った瞬間、原田と永倉が声をかけてきた。
「あ、原田さんと永倉さん。 どうしたんですか? 何だか楽しそうですね」
「今日一緒に歩いてた女誰だよ?」
「結構いい女だったじゃねぇか」
2人は、にやにやとしながら総司に詰め寄ってきた。
「えっ あっ うっ み、見てたんですかっ」
一緒に歩いていたのを見られていたことが妙に恥ずかしく思い、総司は真っ赤になりながらしどろもどろになってしまった。
「おーっ 真っ赤になりやがってこのヤロー!」
「とうとう総司にも女が出来たかっ! 祝うか!」
と、総司の腕をつかみ原田と永倉は飲みに連れて行こうとする。
「ちょ、ちょっと止めてくださいよぅ! そんなんじゃないですってばっ!」
「照れんな照れんなって! ゆっくりお兄さん達が話しを聞いてやるからよ!」
「ち、違いますってばっ!」
総司は反論するが、ずるずるとひきずられて今来た道をまた飲みに行く為に戻るはめになった。
「今日は飲むぞーっ!」
「おーっ!」
「って、毎日飲んでんじゃないですか!」
全く総司の言葉を聞いていない2人は、飲み屋に総司を連れ込んだ。
総司は嫌な顔をしながらも、1人で考えたくなかった為2人に掴まった事に内心安堵していた。
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