再来 6
総司は屯所に戻り、隊士部屋で1人ボーっとしていた。
今日セイと話した事を思い出していた。
どうしてセイに見合いの話をされたことで胸が痛んだのか。
どうして自分にはセイがいなければいけないのか。
けれど考えても考えても分からなかった。
「総司、どうしたんだい?」
そこに近藤が声をかけてきた。
「近藤先生!」
総司は嬉しそうに近藤に駆け寄った。
「考え事かい?」
「いえ、ちょっとボーっとしてただけですよ!」
「そうか。 もしよければこれから2人で散歩でもしに行かないか?」
総司は、近藤からめったにそんな誘いがないので不思議に思ったが、大好きな近藤からの
誘いに喜んで承諾した。
2人は加茂川沿いを歩いていた。
「今日はどうしたんですか? 先生の方から誘ってくださるなんて」
総司は嬉しそうに近藤を見る。
「たまにはこういうのも良いんじゃないかと思ってな」
近藤は優しい笑顔で総司を見返した。
「ところで総司。 あまり触れて欲しくない話題だと思うが話しても良いか?」
総司は何となく近藤が話そうとしている内容が分かった。
「見合いの話ですか」
総司はうつむいて訪ねた。
「そうだ。 どうして受けないんだ? 頑なに逃げていると聞いたが」
2人は加茂川の土手に腰をおろした。
「申し訳ありませんが、私は誰も娶るつもりはありません。 どうして土方さんが今頃になって
あんなにしつこく見合いの話をしてくるのかが私には分かりません。」
総司はうつむいたまま話した。
正直、これ以上見合いの話は続けたくない。
しかし近藤はそんな総司の心境を知ってか知らずか話を終わらせる気はないみたいだ。
「総司、嫌な事を思い出させるようで悪いが、見合いを断る理由はやはり神谷君かい?」
総司はバッと顔を上げた。
「どうして神谷さんが出てくるんですか!? 土方さんと良い! 関係ないじゃないですか!」
総司は顔を真っ赤にして近藤に反論した。
「総司、お前は神谷君の事が好きだったんだろう?」
近藤は尚も冷静に優しく総司に問う。
「そ、そりゃ好きでしたよ。 弟みたいに思ってきましたから」
「それは違うだろう、総司。 神谷君は女子だった。 お前もそれを知っていたんだ。
弟とは思ってなかったはずだよ」
総司は顔を真っ赤にしたまま近藤を見続けた。
言葉が出なかった。
「総司は神谷君を愛していたんだろう?」
総司は、その言葉の意味を理解するのに時間がかかった。
「な、な、何を・・」
「総司、神谷君の事が今でも心にあるから見合いが出来ないのではないか?
トシはお前の事を本当に心配しているよ」
近藤は優しく微笑みながら総司に話す。
総司は尚も動けないでいる。
私が神谷さんを愛していた?
そんな事考えた事もなかった。
私にとっての神谷さんは家族のような存在で、いつも一緒にいたからいなくなったのが悲しいと
思い込んでいた。
愛していたから、セイに見合いの話をされた時胸が痛んだのか。
愛していたから、自分にはセイが必要だったのか。
近藤に言われて今まで胸にあったもやもやが晴れた気がした。
「私が・・・ 神谷さんのことを・・・・」
近藤は苦笑いした。
「総司、自分でも気づかなかったのかい?。 お前の野暮はここまでくるとある意味才能だな」
総司は顔を真っ赤にしたまま近藤を見続けた。
「トシはお前をどうにか立ち直らせようと、見合い相手を探す為に走り回ったんだ。
そして、漸くお前に会いそうな娘さんを探し出した。 トシの努力を少しは理解してやってくれないか?」
「土方さんが・・?」
「そうだ。 本当にあいつは必死に探していたんだぞ。 会うだけでいい。 会ってからどうしても無理だと思ったら断れば良いんだ。 1度だけで良いから会ってやってくれないか?」
総司は考え込んだ。
やはり自分は娶る事が出来ない。
しかし土方の努力を無駄にしたくないとも思った。
「・・・少し考えさせてくれませんか?」
「もちろんだ。 返事はトシにしてやってくれ。」
近藤はやっと安心した笑顔になった。
それを見て、総司も笑顔になる。
「分かりました。 近藤先生」
総司は屯所まで近藤を送った後、桜の木へと向かった。
どうしてもセイに会いたくなった。
「神谷さん!」
総司はいつものように呼びかける。
しかしセイは現れない。
「神谷さん!?」
何度も呼ぶが一向にセイは現れなかった。
総司は心底落胆した。
セイに会えないと思うだけで、こんなにも悲しいのだ。
セイが死んでから再会するまでの間も、何もする気力が起きなかった。
かろうじて、仕事だけは淡々とやっていた。
もし、このままセイに会えなかったら、自分はどうなるのか。
やはりセイの事を自分は愛していたのだと、総司は初めて実感した。
「神谷さん・・」
総司はセイの名をつぶやいて桜の木のしたに座り込んで泣いた。
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