再来  5



「沖田さん、何か良い事でもあったのか?」
「え? 別に何もないですよ?」
「そんな全開の笑顔でずっといられると、気持ち悪くてしょうがない」

そう、最近総司は毎日何をしている時でもずっと笑顔だった。
と言うよりも、気持ち悪いくらいニヤけていた。

「えぇーっ 斉藤さんひどいっ」
膨れる顔も、どこか楽しそうだ。

「何があったか分からんが、1番隊の隊士達が気味悪がっていた。」

総司は、気をつけますと言ってその場を離れたが、やはり笑顔だった。

そう、セイが自分の元に戻ってきた事が嬉しくて仕方なかった。
もう会えないと思っていたのに、セイは自分に会いに戻ってきたのだ。

セイが現れてからというもの、総司は暇を見つけてはセイに会いに行った。
非番になろうものなら、茶屋へ行き、ずっとセイといようとする。

今日も総司はセイに会いに桜の木の下へ向かった。


「神谷さんっ!」
木の下でセイを呼んでみる。

『はい』
セイがぼぅっと現れる。

「今日も巡察が終わって急いできてしまいました」
嬉しそうにセイに話す総司。

しかしセイは苦笑いを浮かべる。

「どうしたんですか?」

『沖田先生・・・』
セイは困ったように総司を見る。

「はい、何でしょう?」
総司は笑顔で答える。

『・・・いえ、何でもないです。 今日はどうしますか?』
「今日もここで神谷さんと一緒にいるだけで良いです。」
と、総司は木の下に腰を下ろす。
そして、持ってきた饅頭を取り出した。
「神谷さんも食べますか?」
『ふふっ 食べたいですけど食べれません。 沖田先生が食べてるの見てるだけで大丈夫ですよ』
とセイは答えながら総司の隣に座る。

「そういえば、前から気になってたんですけど・・・・」
総司はもぐもぐと饅頭を食べながらセイを見る。
『はい、何でしょう?』
「どうして神谷さん女子の姿なんですか?」

セイはあははっと笑って、
『私、実は女子だったんですよ。 知りませんでした?』
と言って、可愛く総司を見上げた。

その姿に総司は思わずドキッとする。

「もっもちろん知ってますよっ! でもずっと男装だったのにどうしてかなと思ってっ」
総司は真っ赤になってセイから顔を背けた。

『ふふっ 私にもどうしてか分かりません。 でも、きっと本来の姿になって現れるのでしょう。』

総司はそっとセイを見た。
本当に綺麗になったなと思う。
もし、セイが新撰組に入らずに女子として普通に生活していれば、きっとモテただろうし、とっくに
お嫁にも行っていたんだろうなと思う。
そう思うと、セイが死んでしまう事になったのは、やはり自分が隊に残したせいなのだろうと後悔してしまう。

セイが総司の視線に気づいて総司を見る。
『どうしたんですか? 先生』

「いえ、神谷さんがもし女子として過ごしていれば、きっと今頃は結婚してややも産んで幸せになって
いたのだろうなと思って。 神谷さんを死なせてしまったのは、やはり私のせいです。」
そう言って、総司は下を向いてしまった。

『止めてください、先生。 私は新撰組にいれて、本当に幸せでした。 それで命を落としてしまっても、
全く後悔していません。 もし新撰組に入っていなければ、私は生きる意味も考えず、ただ父上と兄上を殺した
人たちを恨むだけの人生を送っていたでしょう。』

「神谷さんは本当に強いですね。 私なんてダメだ。 もし今神谷さんがいなくなったらどうして良いか分からない。」

『沖田先生』
セイは突然厳しい眼差しで総司を見た。
「なんですか、いきなり」

『お見合いどうしてされないんですか? あれからずっと副長から逃げてらっしゃるでしょう?』
「はっはい? どうして今そんなことっ」
『先生こそ、そろそろご結婚されてもおかしくない年じゃありませんか? 子供が生まれれば生きがいも出来ますよ。』
総司はセイの言葉に何故か胸がズキっとした。
「私は誰とも結婚するつもりはありません。 例え、近藤先生のご命令でも全て断るつもりです。」
『でも、もしかしたらとても良い方かも知れませんよ? きっと沖田先生も幸せに・・ 』
「しませんったらっ!!」

思わず総司は大声で叫んでしまった。
セイは突然総司に怒鳴られびっくりしている。

「あ、ご、ごめんなさい。 怒鳴ってしまって・・」
『・・・』
セイは総司から顔を逸らした。

何故だか、セイから見合いの話をこれ以上されたくなかった。
総司は2人の間には気まずい空気が流れた。

「ごめんなさい、今日はもう戻ります。 また明日来て良いですか?」
『・・・はい』

セイの返事を聞くと、総司は振り返らず屯所へ戻っていった。


セイは考えていた。
この場にいれるのはもう少しの間だけ。
あちらでは父上と母上、そして兄上が待っている。
なのに、今の総司は何故だか自分にあまりにも依存しすぎていると感じていた。
自分のせいでセイを死なせてしまったと言う責任感からだとセイは思っていた。
もし見合いでもして幸せになれれば、総司の気が家庭に向くのではないかと思った。
今の総司から去って行っていいものか悩んでいた。。


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