再来 4
「かみっ・・・・」
総司は名前を呼ぼうとして、固まった。
その女性は、人差し指を口に当てて、『しぃ』というようなしぐさをしたからだ。
土方が不振に思い、後ろを振り返る。
総司は、土方にも見えているのではないかとドキドキしながら反応を待った。
しかし、土方は何だ?という顔をして、また総司に向き直る。
「後ろに何かあるのか?」
総司はきょとんとした。
見えてない?
総司はとっさに言葉が出なかった。
「何だ? どうしたんだ、総司」
「え、いや、その」
総司は何と言っていいのか分からず、しどろもどろになってしまった。
土方はそんな総司を怪訝な表情で見ていた。
総司は、何となく居づらい雰囲気になってしまい、土方と目を合わせられないでいる。
そぉっと後ろの女性を見てみると、やはり総司を見て微笑んでいる。
そして、声を出さず総司に何か話しかけてきた。
『おきたせんせい』
女性は確かにそう言った。
やはり、この女性はセイなんだ。
そう思った瞬間、またもや女性は消えてしまった。
総司はばっと立ち上がった。
「なんだ、総司!?」
「すみません、土方さん。 その件はまた聞きます。 ちょっと用事を思い出しました。」
と言って、土方の部屋を出た。
何となく、さっきの女性がいる場所が分かったような気がして、ある場所へ向かった。
それは、生前セイが何かあると良く泣いていた、壬生寺の木。
そこに女性はいた。
その人は微笑んで立っていた。
総司は息を切らしながら、その女性に近づく。
「か、神谷さんですよね?」
『はい、沖田先生』
にっこりと微笑みながら、セイは総司に答えた。
「どうして・・・」
総司はそれ以上、言葉が出なかった。
『沖田先生に会いに来ました』
セイはやはりニコニコとしながら総司を見ている。
総司はセイを見つめながら、その場に立ち尽くした。
『沖田先生、大丈夫ですか? 何だかやつれたみたいですよ?』
可愛く総司を上目遣いに見つめてくる。
「神谷さん・・・」
『はい』
総司はセイの手を掴もうとした。
しかし、総司の手はセイの体を通り抜けた。
『ふふっ 先生、私はもう死んでるんですよ。 』
「もしかして、私を恨んで出てきたんですか?」
総司は、セイが死んだ時の事を思い出しながら言った。
セイはびっくりした。
『どうして私が先生の事を恨むんですか? 私は先生に一言謝りたくて、先生にどうしても
会いたくて戻ってきたんです。 でもそんなに長くはいれません。』
これには逆に総司が驚いた。
「どうして神谷さんが私に謝るんですかっ! 私が謝らなければいけないのにっ!
あの時どうしてあんな事言ったのか、神谷さんを傷つけたまま逝かせてしまったのか
毎日毎日後悔していたんです。 」
セイは優しく微笑んだ。
『いいえ、先生はいつも私の事を考えていてくれました。 それがどんなに厳しくても、
私は嬉しかったんです。 先生に最期に会えずに死んでしまった事をとても心残りに
思っていました。 でも、会えて良かった。』
総司ははっとした
「もしかして、もういなくなってしまうのですかっ?」
『えぇ、そろそろ戻らなくては』
セイは悲しそうに笑って言った。
「嫌です! お願いです。 神谷さん、もう居なくならないで下さい」
総司は縋り付くようにセイに懇願した。
セイは悲しそうに総司を見た。
「私は、あなたが居ないと駄目なんです。 何をしていてもあなたの事を考えてしまうんです。
お願いです、どんな姿でも良い。 そばに居て下さい。 」
総司はその場に崩れ落ち、今にも泣きそうな顔でセイを見ている。
セイはどうしようかと逡巡した後、ゆっくりと答えた。
『分かりました。 期限はありますが、もう少し先生のそばに居ましょう。 でも、先生が私が居なくても大丈夫だと思ったら、私は戻ります。 それでも良いですか?』
総司の顔がぱぁっと明るくなった。
「本当ですかっ!?」
『はい。 でも約束して下さい。 私の事は誰にも言わないと。 それに、私はいつかは必ず
戻らなければならないのだと言う事を分かってください。』
総司の胸がちくっと痛んだ。
しかし、やはり今はセイに居て欲しかった。
「分かりました。 ありがとう」
総司はセイが今だけでも居てくれるという事実が素直に嬉しかった。
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