再来 3
「・・・神谷さんなんですか?」
目の前にいる女性は、確かにセイがった。
髪は綺麗に京風に結い上げられ、桜色の着物を淑やかに着こなしている。
顔はうっすらと化粧されていており、びっくりするくらい美しい。
その女性は総司を見つめ、可愛らしく顔を傾けながらニコっと微笑んだ。
総司はその女性に向かって思わず手を伸ばした。
すると、彼女はすーっとその場に溶けるように消えていった。
総司の手は空を切った。
周りを見渡すが、セイらしき女性はどこにも居ない。
今のは幻覚だったのだろうか。
光縁寺をくまなく探すが、やはりどこにも居なかった。
気持ちは諦められなかったが、仕方なく屯所へと戻ろうとした。
「沖田さん」
突然声をかけられ振り向くと、斉藤がいた。
「あ、斉藤さん。 斉藤さんも神谷さんのお墓に?」
「そうだが。 何かあったのか?」
「えっ?」
「何か探しているようだったから」
総司はさっきの様子を見られていたのかと思うと恥かしくなった。
「え、えーーと。 何でもないです。」
「・・・そうか。」
斉藤は腑に落ちないようだったが、それ以上は何も聞かなかった。
「では私はお先に」
と言うと、総司は屯所へ戻った。
「沖田先生。 副長がお呼びでしたよ」
屯所へ戻ると、隊士が声をかけてきた。
「ありがとう」
礼を言って、総司は土方の部屋へ向かった。
「総司です。」
「入れ」
中からはいつもの無愛想な土方の声が聞こえた。
「お呼びと聞きましたが?」
と言いながら、総司は土方の文机の上に置いてあった菓子の箱に手を伸ばす。
「誰がやる言った」
「で、話って何です?」
総司は箱を開ける。
「勝手に食うなっ!」
土方は、総司から菓子の箱を取り上げて、総司の頭を殴った。
「いたいですよう〜」
土方は、相変わらず無愛想な顔で総司を見た。
「どこへ行っていた」
「ちょっと町に出てました」
「・・・また神谷の墓か」
「わかってるならいちいち聞かないで下さいよう。」
総司はぷぅと膨れていじけたフリをした。
「総司に縁談がある。 家柄も申し分ない。 とても器量よしの娘さんだそうだ。」
「・・・・断ってください。」
「なぜだ」
「その気がないからですよ。 私は誰も娶るつもりはありません。」
土方は はぁ とため息をついた。
「神谷は死んだんだぞ」
総司はカッとなった。
「神谷さんは関係ありません。 私は昔から一生所帯を持たないと決めているのです。」
土方と総司が睨み合う。
と、総司の視界に何かが入った。
土方の後ろに誰かがいるのが見えた。
土方に隠れて誰かが居るということしか分からず、体を傾けて土方の後ろを覗き込む。
すると、先ほどセイの墓の前に居たセイに良く似た女性が座っていた。
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