再来  11



奈緒は夢を見ていた。

京の町を目的もなく歩いている。
ふと前を見ると総司がいた。

奈緒は総司に会えたことが嬉しくなり声を掛けようとした。
しかし総司の横には月代のある背が低く可愛らしい少年がいた。
2人はとても楽しそうに何やら話している。
男同士だというのに手までつないでいる。
奈緒は2人からめが離せなかった。

すると、総司と一緒にいた少年はみるみる女子姿になっていた。
とても綺麗で優しそうな。
2人は見つめ合い微笑みあう。

(その方は誰ですか? どうしてそんなに仲睦まじくしているのですか?)

総司がその女子を見る目は明らかに恋をしていた。
そしてその女子が総司を見る目も。

奈緒はとても嫌な気持ちになった。
しかしどうしても2人から遠ざかる事が出来なかった。

(もしかしてその人が沖田様の大切な人なのですか)

嫌だ。
こんなの見たくないし知りたくなかった。

2人は手をつないだまま、仲良くどこかへ消えていった。
1人残された奈緒は、2人が消えていった方を方をずっと見ていた。

(沖田様・・)




目覚めた奈緒の目からは涙がこぼれていた。
夢だと分かっているのだが、妙に現実的だった。
しかも、総司の言っていた大切な人という相手の顔も知らないのに、はっきりと夢の中では見えていた。
どうして私の夢の中に出てきたのだろう。
その人はもしかして総司に近づかないように忠告しているのだろうか。

それにしても、月代がある少年からとても綺麗な女子に変わっていったのはどうしてなのか。
奈緒はとても嫌な気分のまま起き上がる事も出来ず、総司の事を考えていた。





1番隊は朝から巡察に出ていた。
ここのところ消沈している総司も、隊務では集中していた。
ただ、誰もいない隣には未だに慣れなかった。

「いきますよ、神谷さん」と声を掛けていた相手も今はいない。
余計な事は何も考えないようにし、ただ隊務に集中していた。



「あっ」
その時総司に聞きなれた声が聞こえた。
声のした方向を見ると、奈緒が立っていた。

総司は他の隊士達に先に行くように言い、奈緒の元へ向かった。


「こ、こんにちは。 すみません、患者さんのお家へ向かうところだったのですが沖田様の姿が見えたので・・」
奈緒は昨日の事があり、妙に言い訳じみた言い方をしてしまった。
「そうなんですか。 昨日はすみませんでした。 本当に体調が悪かったもので。 会った時に謝ろうと思っていたのです。」
総司は総司で、昨日奈緒に対しての態度を少し後悔していた。
いくらイライラしていたからといって、奈緒に悪いところはなかったのだ。

「い、いえっ! 私もしつこく誘ってしまって。 すみませんでした。 今お仕事中でいらっしゃるんですよね。 すみません、お邪魔してしまって。 私も患者様のところへ行きますので、どうぞお仕事に戻ってください」
奈緒は今朝見た夢の事と、これ以上総司に嫌われたくないという思いから、ここから離れようとした。
総司はそんな奈緒の心情を理解してか、奈緒を引きとどめた。

「奈緒さん、今日の午後はお暇ですか? 昨日お付き合い出来なかったので、良ければ今日散歩にでも行きませんか?」

思いもしなかった総司からの誘いに、奈緒の表情はぱぁっと明るくなった。
「はいっ! 行かせて頂きます!」
その顔を見て、総司の顔もホッとした表情になった。
「では八つに家まで迎えに行きます。 隊務に戻りますので、また後で」
と言って、総司は奈緒に手を振って他の隊士達が歩いて行った方向へ走っていった。
その後姿を、奈緒は笑顔で見送っていた。



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