再来  10


新撰組の副長で、土方と名乗る人から見合いの離しをもちかけられた時、どうして私なのだろうと思った。
見合い相手は、新撰組一番隊組長の沖田総司。
もちろん名前は知っていた。
京では新撰組の沖田総司といえば人斬りの沖田として有名だった。
両親は、新撰組の元に嫁ぐなど危険だと渋い顔をしたが、あまりにも土方が必死で頼むものだから、沖田と
いう人間に少し興味を持った。
返事は後日という事で、その日は土方には帰ってもらった。

それから、奈緒は度々新撰組の屯所の周辺に行くようになった。
どの人が沖田総司なのか、すぐに分かった。
土方からは、背が高く色黒でヒラメ顔だと聞いていたが、ひと目でその人だとわかった。
数日、奈緒は総司の事を観察した。

いつも何かを探しているように落ち着かない。
剣豪という噂とは到底思えないような、いつもさびしそうな目をしている。
この人はきっとなにかに傷ついているのだと奈緒には分かった。
総司を見るたびに、どんどん興味を持つようになった。

そして奈緒は総司に声をかけてみようと決めた。
ちょうど屯所に向かって歩いていった時、総司が出てきた。
奈緒は思い切って総司に声を掛けた。

「沖田様でいらっしゃいますか?」
総司は奈緒を振り返った。
その顔には全く感情が読み取れなかった。
その反応に、奈緒はたじろいだが勇気を出して話を続けた。

話しているうちに、何故か総司から団子を食べに行かないかと誘われた。
奈緒としては、総司をもっとよく知る良いチャンスだと思い喜んで着いていく事にした。

甘味好きだと土方から聞いてはいたが、これほどとは思わなかった。
それに、時折見せる優しい笑顔。
奈緒はそれだけでどんどん総司に惹かれていくのが分かった。

帰り際、総司は大切な人を亡くしたことを奈緒に打ち明けた。
奈緒は、総司の抱えている闇はこれなのかと納得した。
そして、総司の気持ちが奈緒にも伝わりとても胸が痛くなった。

どうしてもこの人を癒してあげたい。
話を聞いた奈緒が思ったのはそれだけだった。
総司が他の人を想っていても、関係ない。
自分が総司と一緒にいたいのだ。


次の日、また会いたくなって屯所へ行ってみた。
すると総司はとても暗い顔で出てきた。

帰ってくれといわれた。
 

奈緒はその言葉に本当はとても傷ついていた。
しかし、わざと明るく振舞い誘いを続ける。
最後は総司に面倒だと言わんばかりの態度を取られてしまった。
そして総司は屯所内へ消えていった。

奈緒は、ただ総司を癒したかっただけなのだ。
自分には何が足りないのだろう。
亡くなった総司の大切な人と自分は何が違うのだろう。
奈緒は相手の女性のことが無償に知りたくなった。

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