虹 9
「お邪魔しまーす」
そう言って、むさい男たちがどかどかと家の中に入ってきた。
今日は、土方家に総司のサークルの仲間を招いての食事会。
元気のない総司を盛り上げようという事で決まったのだ。
言いだしっぺは、もちろんお祭り好きの原田と永倉。
この2人が、土方に連絡を取り今回の食事会が決まったのだ。
「おー、総司! 元気かー?」
「何ですか、原田さん。 今日サークルで会ったばかりじゃないですか」
総司は口を尖らせながらチラっと原田を見るが、また土方と一緒に食事の盛り付けを始めた。
「何だよ総司。 先輩に向かってその態度はっ! 土方さん、言ってやってくださいよ」
「うるせぇよ。 お前もさっさとこっち来て手伝え」
歳三は、原田の抗議にもお構いなしで作業を続ける。
「ちぇっ」
他の皆がわいわいとリビングの中で盛り上がってる中、キッチンでは歳三、総司と共に重い空気の中
原田は手伝う羽目になった。
「ねぇねぇ、お酒もう冷蔵庫から出しちゃって良いの〜?」
「聞かずに出してしまっても良いんじゃないか、藤堂さん」
「そっかぁ。 じゃあ3人に料理任せちゃって俺ら飲んじゃう? はい、斉藤もビール♪」
「俺にもくれ、平助」
ソファにどかっと座りながら、永倉が藤堂平助に手を伸ばす。
「もう、永倉さんたら。 そんなずうずうしくしてると土方さんにまた怒られるよ」
平助は苦笑いしながら、永倉にもビールを渡した。
「それにしても、ホントこの家いつ来ても女っ気ねぇよな・・」
ビールを一口飲んで、部屋をぐるっと見渡して永倉はつぶやいた。
「そうだよね・・ 土方さんて彼女いないのかな。 話聞いた事ないよね。 カッコいいのに・・」
「性格が問題なのではないだろうか?」
「聞こえたぞ、斉藤。 お前もこっちへ来て手伝え」
「・・・」
斉藤は無表情だが、心の中では『しまった』と思いながら立ち上がった。
「何を手伝えば良いでしょうか」
「そこの出来てるもん運べ」
斉藤は、言われるまま素直に出来上がった食事を運び始めた。
「かんぱーい」
ようやく食事の用意も終わり、やっと全員ビールを手にした。
「うまっ」
料理を一口食べた原田は、思わず呟いた。
「だろっ? 俺が作ればこんなもんだ」
歳三は、得意気に良いながら自分も料理を口にした。
皆がワイワイと騒ぎながら、飲んで食べてとしている中、総司だけがぼーっと食事も食べずビールだけを
口に運んでいた。
「総司〜、総司がそんなじゃ場が盛り下がっちゃうよ」
見かねた平助が、総司の肩に手を置きながら、困ったように笑った。
「だぁ〜ってぇ〜・・ セイちゃんがアメリカに帰っちゃったんですもん・・」
頬をぷくっと膨らませながら、またビールを一口飲んだ。
「帰っちゃったって・・ うちの大学合格すれば、またすぐこっちに来るんでしょ?」
「そうだぜー、そうなったらまたこの家で一緒に・・」
そこまで言って、原田は上を向いて何か想像を始めた。
ボカっ
「いたっ」
「変な想像してんじゃねぇっっ!」
「す、すみません」
原田は、殴られた頭を撫でた。
Trrrrrrrr
原田が殴られて一堂が爆笑している中、電話がなった。
電話を取ろうと歳三が立ち上がったのを総司が止め、総司が変わりに電話を取った。
「はい、土方です」
『あ、総司さんですか? セイです』
「セイちゃんっ!!!」
電話の相手がセイだと分かった瞬間、総司の顔がぱぁっと輝いた。
総司の言葉に、全員が総司を見た。
『今日大学の合格発表だったんです。 学校に問い合わせたら、合格してました!』
「本当ですか!? おめでとうございます!」
その言葉を聞き、その場にいた全員が わぁっと騒ぎ拍手する。
『えっ 何だかにぎやかですね・・ 何かあったんですか?』
「今サークルの皆が遊びに来てるんですよ。 セイちゃんの合格を皆が祝福してるんです」
総司の言葉に、セイは受検の日に寄ったサークルの教室の事を思い出す。
『ふふっ 嬉しいっ! ありがとうございます! これからお世話になりますが、宜しくお願いします』
「こちらこそ宜しくお願いしますね!」
総司は、嬉しそうに電話を持ちながらその場でお辞儀した。
電話を歳三に代わり、今後のセイの帰国の事などの打ち合わせを始めた。
「良かったな、総司!」
「あんな可愛い子と4年間も一緒だなんて羨ましいよな〜」
男たちの冷やかしにも、総司の頬は緩んだままだ。
「はい、本当に良かったです。 これで、セイちゃんとまた一緒に遊んだり出来ますねっ」
「遊んだりって・・」
「もっと他になんかないの?」
その問いに、総司はキョトンとしている。
「何かって?」
「もっと色っぽい事だよ」
総司は、更に訳が分からないという顔をしている。
「こいつにあんまり変な事吹き込むんじゃねぇ」
電話を終えた歳三が、テーブルに戻ってきた。
「セイとこいつが何かあったら、困るのは俺なんだよ」
不機嫌そうに、でもどこか嬉しそうに歳三はテーブルに置いてあるビールをまた手に取った。
「来週末にはセイ戻ってくるってよ」
歳三は、総司に向かってにやっと笑った。
「わーい♪ 本当ですか? 楽しみだなぁ」
突然元気になった総司に、周りの皆も苦笑いしている。
「総司が元気になった事だし、もっと飲むか」
「ビール追加だよね」
平助が立ち上がり、冷蔵庫から次々缶ビールを取り出した。
この日、夜遅くまで宴会は続いた。