虹 5



「それじゃあ行ってくるね♪」
「おうっ 頑張って来いよ」

セイは、総司に連れられてK大の受験に向かった。
「緊張します?」
総司は昨日夜遅くまで勉強していたセイの顔を覗き込み、にっこりと微笑んだ。
「そうですねー。 少しします。 でも楽しみのほうが大きいかな♪」
「さすがですね! これ、お昼に食べてください」
そう言って、総司は紙袋を渡した。
「これは?」
「受験に勝つように、カツサンド作りました♪」
「ありがとうございます・・・ わざわざ作ってくれたんですか?」
苦笑いしながら受け取る。
「はい! これを作る為に、今日は頑張って6時に起きちゃいました♪」
「・・・」

本当に、この人って面白い人なんだ・・
でも何か嬉しいかも・・・

セイは、ちょっとずれてはいるが、総司の優しさが嬉しかった。

「じゃあ、私はサークル行って終わるまで待ってるので頑張って下さいね!」
「はいっ! 終わったら連絡します!」
入試会場になっている教室棟の前で総司に別れを告げ、試験に向かった。



「よぉ、総司じゃねぇか!」
セイと分かれてサークルに向かおうとした総司を、ある人物が呼び止めた。

「あ、原田さんと永倉さん。 今からですか?」
同じサークルのお祭りコンビで有名な1年先輩の原田と永倉が歩いてきた。
「あぁ。 それにしても何でお前が入試会場の方から歩いてくるんだ?」
「土方さんの従妹がうちの学校受験するんです。 だから送ってきたんですよ」
「まじかよっ! 女か?」
「えぇ、そうですよ」
「可愛いのか!?」
「はい♪ めちゃくちゃ可愛いです!」
「ほんとか!! 紹介しろよっ!!」
2人は鼻息荒く、総司に詰め寄る。
「別に良いですけど、もし手を出したりしたら土方さんに殺されますよ」
そう言って、総司はにっこり微笑んだ。
途端、2人は顔を青くして黙り込んだ。

サークルのメンバーは良く総司が住んでいる土方の家に遊びに来る。
なので、土方の恐ろしさと意地悪さを痛感している。
もし、手を出そうものならどうなるか分からない。

「俺・・・ やっぱ遠慮しとくわ・・」
「俺も良いかな」
「うふふっ」
総司は嬉しそうに微笑んだ。
「セイちゃんて言うんですけどね! とぉっても可愛いんですよ。 合格したら一緒に住むことになるんですけどね」

「な、なにぃっ!?」
「てめぇ! 1人で良い思いしやがって!」
2人は総司に掴みかかった。

「えへへっ 良いでしょう? 可愛い妹が出来たみたいで嬉しいですv」
「・・・は?」
「妹?」
「はい♪」
2人は顔を見合わせて、ため息をついた。
「本当にお前って・・」
「そういう奴だったよな、お前って・・」
原田と永倉の言っている事が理解できない総司は、「何ですよぅ」とほっぺをぷーっと膨らませて拗ねている。
「そんな美味しい状況で、良く妹とか言ってられるな」
「俺ならもう、どうなるかわかったもんじゃねぇよな」
腕を組みながら「うんうん」とうなずきあっている。
しかし、1人総司は訳が分からないという顔をしていた。




試験も終わり、セイは総司に連絡をした。
「もしもし、セイですけど。 今終わりました。 え? A棟ですか? 分かりました。 探して行ってみます」
そういうと、セイは電話を切り、構内地図を探した。

結局、総司は原田と永倉にしつこく言われ、セイをサークルの教室に呼ぶことにした。
「楽しみだよなー」
「いや、でも総司のいう可愛いはあてになんないからなー・・」
「失礼ですねー。 本当に可愛いんですって! 会ったら分かりますよぅ」
まだセイの話題でもちきりの3人の元に、部屋をノックする音が聞こえた。

「あっ 来たかも」
総司は急いで教室のドアを空けに向かった。

「総司さん、お待たせしました!」
そう言って可愛く微笑んでセイは総司に通されて部屋へ入ってきた。

「セイちゃん、お疲れ様でした♪ 試験どうでした?」
「思ったより簡単で良かったです」
教室に入ってきたセイを、原田と永倉だけでなく、その場にいた全員が見た。

「お、おい、あれか? 土方さんの従妹って・・・」
「総司と話してるんだからそうじゃねぇの?」

2人の元に総司はセイを連れてきた。
「こちら、サークルの先輩の原田さんと永倉さんですよ。 あなたを紹介しろってうるさくって」
「そうなんですか? 富永セイと申します」
そう言ってにっこりと微笑んだ。

しかし、2人は挨拶する事も忘れてセイに見入っている。

「ちょっとぉ、どうしたんですよぅ、2人共」
総司が呆れて声をかけた。

「いや・・ めちゃくちゃ可愛い・・」
「はっ!?」
突然言われた言葉に、セイはびっくりした。。
「半端じゃねぇ・・・ お前、この子とこれから暮らすのかよっ!?」
「だから可愛いって言ったじゃないですか」

「てめぇっ! お前1人でいい思いしてんじゃねl−っ!」
「いったっ! やめて下さいよぅ!」
「ふざけんなーっ! 俺にもその幸せ分けろよ!」

3人が、暴れているのを呆然としながらセイは見ていた。

日本の大学生って・・・

あまりにも子供っぽい会話に、セイは心の底からあきれ返っていた。