虹 2
「何で私がこんなところに・・」
総司は成田空港にいた。
昨日の夜、やっとの事で物置部屋を人が住めるまでに片付け終わった総司に、
「明日の11時成田に迎えに行ってくれ。 これ写真」
と言って歳三は1枚の写真を渡してきた。
写真に写っているのは、若かりし頃の歳三と、どうみても小学生の低学年くらいの少女だった。
「これは・・・?」
「これがうちにくる予定の子だ。 名前は富永セイ。」
総司はもう1度写真を見た。
「あのぉ〜・・ この写真の子、小学生に見えますが・・」
「当たり前だ。 小学生の時の写真だからな。」
総司の顔は引きつっている。
「今、この人18歳なんですよね・・? こんな写真見て分かる訳ないと思いませんか」
「しょうがねぇだろ! この写真しかねぇんだ! 俺は明日仕事なんだよ。 お前はどうせ暇な大学生だろ。」
土方はふんと鼻を鳴らして笑った。
その目は「何か文句あるのか」と言いたげだった。
居候の総司のこの家での立場は狭い。
「・・・行けば良いんでしょ」
「最初から素直にそういえば良いんだよ」
歳三は勝ち誇った顔で総司を見下ろした。
「歳三さんて本当に自分勝手なんだから。 私だって授業あるのに。 いつもそうなんだ。」
総司はぶつぶつ言いながらも、搭乗口から出てくる人に目を向けている。
「大体こんな写真もらったって分かる訳ないじゃないですか。」
愚痴はとまらない。
と、その時ある少女が出てきた。
「あっ」
何となく写真の面影があるような気がする。
しかも、誰かを探している風だ。
「もしかしてあの人かな。 でもこんな簡単に見つかっちゃうもの?」
総司は自問自答しながらも、取り合えず少女に向かって歩いて行った。
「あのぉ〜、すみません」
いきなり総司に話しかけられた少女は、びくっとして総司を振り返った。
知らない人に話しかけられた少女は、訝しげに総司を見上げている。
「富永セイさんでいらっしゃいますか?」
総司の問いに、少女は驚いた顔をして、笑顔になった。
「はい! もしかしてお迎えに来て下さった方ですか?」
その笑顔がとても可愛く思えた。
「そうです。 歳三さん・・ あ、土方さんが今日仕事で来れないので代わりに来ました。」
セイは更に笑顔になった。
「ありがとうございます! トシとも長い間会ってなかったから、顔が分かる自信なかったんです!
見つけてくださってありがとうございます!」
総司はセイの受け答えにとても好印象を持った。
この子となら一緒に住んでいけそうかもと思っていた。
「ふふっ 表に車停めてます。 荷物持ちますよ」
と言って、セイの持っている荷物を受け取り、車に向かって歩き出した。
「お名前お聞きしても?」
車に乗って一息ついたセイが訪ねた。
「沖田総司といいます。 歳三さんとは幼馴染で、今お家にお世話になってるんですよ」
それを聞いて、セイは驚いて総司を見た。
「えっ! っていう事は・・」
総司は申し訳なさそうな顔になった。
「すみません、私も同居になっちゃうんです。 ・・・嫌ですよね?」
「いいえ、全然」
セイはきっぱり言った。
逆に総司が驚いてセイを見た。
「だって、小さい頃の記憶しかないんですが、トシってすっごい意地悪な人だったんですもん。
いつも小学生の私相手に本気になって怒鳴ったり、威張ったり。 そんな人と4年間2人きりに
なるのって不安で仕方なかったんです。 あなたのような優しそうな人が一緒で逆に安心しました」
「ぷっ! あははははははっ」
セイの話を聞いた総司は、思わず笑いだした。
「?? どうして笑うんですか?」
「だって、歳三さんて昔からそうだったんだと思って。 今もそのまんまですよ!」
「えぇっ!? そうなんですか? 30歳過ぎて、少しは大人の男性になってるかと思ったけど、成長してないんだ」
散々な言いようにも、総司はおかしくてたまらないようだ。
「あの人の事をそこまで言える人を初めて見ましたよ! あなたとの生活が楽しみになってきました」
総司は歳三とセイとの3人の暮らしを思い浮かべながら、笑顔で自宅に向かって車を走らせた。
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