虹 1



「うちで親戚の子を預かることになった」

そう言い出したのは、高校の教師をしている土方歳三。
分譲のマンションを都内に購入し、1人暮らしをしていた。
そこへ、幼馴染の沖田総司が転がり込んだのは3年前の事。
少しの間だけ・・と言いながら、もうすっかりここの住人と化している。
2人は気が合った為、歳三も無理に総司を追い出す事もしない。
どちらかが結婚するまではきっとこのまま同居生活を続けるのだろうとお互いうすうす感じていた。

「え、そうなんですか? 人が増えると楽しくなりますね! で、どんな人なんですか?」
ソファでTVを見ていた総司は、歳三を振り返り、嬉しそうに訪ねた。

「今は両親とアメリカに暮らしている。 日本の大学を受験する為にこっちに戻ってくるんだが、
 なにぶん子供を1人にはしとけないんだろう。 俺に4年間面倒見てくれないかと連絡があった」
歳三は、キッチンで夕食を作りながら答えた。

「そうなんですかぁ。 歳三さんに親戚がいるなんて話初めて聞きましたよぉ」
「しばらくあってなかったからな。 最後に会ったのが奴が小学生の時だから、かなり前だな。」

総司は嬉しそうに歳三の後姿を眺めながら、尚も質問を続けた。
「へぇ〜。 それで、いつからここにくるんですか?」

「取合えず来週から1週間受験で帰国するらしい。 その後、受かったら春から正式に住む事になる。 あの4畳半の部屋を使わせるつもりなんだが・・」
と、そこまで言って総司を振り返った。

「え・・・ その顔・・・ もしかしてあの物置部屋を私に掃除しろとでも?」
「お前、相変わらず勘が良いなぁ」
と言って歳三はニヤっとした。

「居候のくせに嫌だなんて言わねぇよなぁ」

「うっ・・ 」
そこを突っ込まれると言い返す事が出来ない。

「じゃあ今週末までには終わらせとけよ。」
歳三は次々に料理を運び始めた。

「お前は料理も出来ないからな。 あいつが来てくれれば俺が料理作る必要もなくなるかもな」
「へぇ〜っ 若い男の子が料理出来るなんてすごいですねぇ」
「・・・誰が男だって言った?」

総司が一瞬固まる。

「え・・ ひょっとして女の子なんですか?」
「最初に言っただろう。 女だよ」
「言ってません! 今初めて聞きましたよ!!」
総司はその場に立ち上がり思わず声を上げた。

「うるせぇよ。 何だよ、女だったら何がいけねぇんだよ」
歳三は眉間に皺を寄せて総司をにらんだ。

「え、だって。 男2人の部屋に若い女の子1人が住むなんて・・」
総司はしどろもどろになりながら答えた。

「最初にはっきり言っておくが、俺は両親から大切な1人娘を預かるんだ。 責任がある。
 絶対に手を出すなよ」

「だ、出しませんよ! 歳三さんじゃあるまいしっ!!」
総司は真っ赤になりながら更に大声で叫んだ。
「うるせぇ!」
歳三は総司の頭をボカっと殴った。

「い・・・痛い・・」

「とにかく、もう先方には返事はしたんだ。 今週末までにはあの部屋を片付けとけよ」
土方は有無を言わせない口調できっぱりと総司に言った。

「分かりましたよぅ」
総司は涙ぐみ、殴られた頭を撫でながら答えた。