I found love
中庭に出ると、沖田は「うーん」と伸びをした。
長い会議だった。
教育実習生である自分の紹介も兼ねての会議だったのだが、職員会議というのはこんなに退屈でつまらないものだったのかと初めて知った。
明日からの実習に備えて、校内を見て回ろうと会議の合間の休憩を利用して外に出てきた。
休みの日ということもあり、運動部の部活の生徒がグランドで汗を流しているだけで、校内にはほとんど生徒がいなかった。
何となく中庭のベンチに座り、野球部の部活を眺めていた。
グラウンドからは、生徒達の元気な掛け声が聞こえてくる。
しばらくボーっとしていたのだが、そろそろ職員室に戻ろうと立ち上がった。
「?」
グラウンドに面している木に、人影が目に入った。
何気なくそちらへ近づいてみた。
木の反対側にもたれて座っている女性の足が見える。
回り込んで覗いてみた。
そこには、黒髪のロングヘアーの女の子が気持ち良さそうに眠っていた。
手には参考書が開かれたままになっている。
この学校の制服を着ているから、きっと生徒だろう。
こんな所で寝ていたら風邪を引いてしまうんじゃないかと心配するが、何となく声をかけられずにじっと見下ろしていた。
天使のような寝顔に、沖田は思わず見とれてしまった。
思わずその場にしゃがみこんで少女の顔を覗き込んでいる自分がいた。
長いまつげに形の良い唇、そして吸い込まれそうなほど白い綺麗な肌をしている。
じーっと見ていると、少女が気配に気づいたのが身じろぎした。
沖田ははっとなって少し少女から離れた。
少女はうっすらと目を開けると、視線を彷徨わせ、目の前にいる沖田を捕らえた。
そして沖田の顔を見ると、にっこりとほほ笑んだ。
その笑顔があまりにも可愛くて、沖田の心臓が跳ね上がった。
「おはようございます」
笑顔のまま少女がそう言った。
「お、おはようございます・・・」
思わず沖田もそう返す。
「いつの間にかねちゃったんだ」
少女はそのままごしごしと目を擦ると、周りを見た。
「こ、こんな所で寝てると風邪ひいちゃいますよ」
「そうですね。 ちょっと寒いです」
そう言うと、少女は足元にかけていたカーディガンを羽織った。
「お兄さんは誰ですか?」
やっと少女は意識がはっきりしたようで、沖田をまじまじと見ながら訊ねてきた。
「明日から教育実習でお世話になる沖田といいます」
少女があまりにも自分の顔をじっと見てくるので、沖田は気恥ずかしくなり目をそらしながら答えた。
「あー、何か先週先生が言ってたなぁ。 私のクラスにも来るみたいですよ」
くすくすと笑いながら沖田を見上げる。
またもや沖田はその笑顔に見とれてしまった。
「あ、あなたは?」
「私は3年C組の富永セイといいます」
そう言うと、セイは座ったままペコっと頭を下げた。
「3年C組・・ 私が受け持つクラスだ・・」
「本当ですか? すごい偶然ですね。 明日からよろしくお願いしますね、沖田先生」
「こっ こちらこそよろしくお願いしますっ!」
沖田はあわてて頭を下げた。
「ぷっ」
いきなりセイは噴き出した。
「えっ」
何を笑われたのか分からず、沖田はきょとんとセイを見ている。
「だってぇ 先生なのに生徒にそんな腰低いなんてっ」
セイはケラケラと笑っている。
沖田は徐々に自分の顔が赤くなってくるのがわかった。
「お、大人をからかわないで下さい」
それを聞いたセイは、更に笑った。
「子供にからかわれないで下さい」
「・・・・」
尚もお腹を抱えて笑っているセイを、沖田はただ悔しい気持ちで見ていた。
「明日から楽しみです。 沖田先生みたいな人が来てくれるなんて」
「・・・・ありがとうございます」
思わず年下相手に拗ねた表情をしてしまった。
「沖田先生って、可愛いですね」
「かっ 可愛いってっ!」
真っ赤になって反論しようとした時、自分の名を呼ぶ声が遠くの方から聞こえた。
「先生、呼ばれてますよ?」
「あっ!!」
すっかり今はまだ職員会議の休憩中だった事を忘れていた。
時計を見ると、すでに始まりの時間が過ぎている。
「やばいっ! 戻らないと!」
急いで立ち上がり、ちらっとセイに目を向けた。
「頑張って下さいね」
セイは面白そうにそう言うと、ひらひらと手を振った。
「ありがとうございます・・・」
「ではまた明日」
にっこりほほ笑むセイに、沖田もつられてほほ笑むと、急いで声のする方へ走った。
校内で迷っていたと言い訳をして戻った沖田は、長時間の職員会議を終えやっとのことで学校を出た。
初日から散々だった。
しかし、沖田の気持ちは何故か浮かれていた。
今日出合った富永セイが理由なのは明らかだった。
会議中彼女の事が頭から離れず、ちっとも会議には集中出来なかった。
同じ教育実習生で参加している友人からも、何をそわそわしていたのかと笑われた。
まさかこの自分が何歳も年下の女子高生に一目ぼれするなんて・・
沖田は自嘲気味に笑った。
しかし明日からしばらくの間、あの笑顔が見れるのかと思うと嬉しくなり足取り軽く家路に向かった。
「今日から3週間、このクラスでお世話になります、沖田総司と言います。 よろしくお願いします」
そう言ってやや緊張気味に頭を下げた。
パチパチと教室から拍手が起こった。
照れたように笑いながら顔をあげると、1番後ろに座っているセイと目が合った。
セイは昨日と同じ笑顔のまま皆と同じように拍手をしてこちらを見ている。
「沖田先生? どうかしましたか?」
担任の教師にかけられた声にハッとした。
自分でも気づかないうちにセイを見つめてしまっていたようだ。
「すみません、ちょっと緊張してしまって」
頬を赤くしながら、沖田はそう言った。
その瞬間、教室からは小さな笑いが起こった。
ホームルームが終わると、生徒達が沖田の元へ集まってきた。
一斉に質問が始まり、沖田はたじたじになった。
1人1人の質問に丁寧に答えながらも、沖田はちらっとセイに目をやった。
セイは数人の女生徒に囲まれて、何やら楽しげに話している。
それを見ると、何だか残念が気持ちになった。
そろそろ1時間目が始まる時間になり、沖田は担任に連れられて教室を後にしようとした。
教室を出る瞬間、もう1度セイを見た。
しかしセイはやはり友人とおしゃべりに夢中だった。
もうちょっと興味を持ってくれても良いのに・・・
小さく溜息をつくと、教室を出た。
それから沖田の忙しい毎日が始まった。
本来学生である沖田が生徒たちに授業を教えるということは簡単な事ではない。
セイのいるクラスでの授業では彼女に気をとられて集中出来ない事も多かったが、他のクラスではかなりまじめに教えていた。
単位の為に実習に来たのだが、意外と自分には教師が向いているのかも知れないと思い始めた。
何よりも、生徒たちが可愛くて仕方がない。
実習が始まってじゃら3日目、この日も沖田は遅くまで教室に残り1人明日の授業の為に仕事をしていた。
カラカラカラ・・・
ドアが開く音に頭をあげた。
「沖田先生発見」
セイが笑顔で教室に入ってきた。
ドキッとしながら、それを悟られないように沖田も笑顔を返した。
「富永さん。 どうしたんですか、こんな時間まで」
「部活の後輩に頼まれて教えてたんですよ」
そう言いながら、セイは沖田の座っている席の隣に座ると、沖田の手元を覗き込んできた。
「何やってるんですか」
いきなり至近距離に来たセイに、沖田はたじろいだ。
「あ、あの・・ 明日の授業の予習というか・・・」
「ふぅん・・・」
セイはじっと沖田の書いていたノートを見ている。
心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思うほど近くにいるセイに、沖田はどうして良いか分からずただ固まっている。
「先生って大変なんですねー」
いきなり顔をあげると、沖田を見てにっこりほほ笑んだ。
「ええ、まあ・・・」
顔が近い・・・
真っ赤になったまま顔を背けたが、セイは全くそんな事気にする様子もなく沖田の座っている机に頬杖をついた。
「あの・・ 富永さん?」
「はーい」
「そろそろ暗くなってきましたし、帰った方が良いんじゃないですか」
今は教師と生徒という立場だが、沖田もまだ22歳の大学生だ。
誰もいない教室に2人きりで好きな女の子と一緒にいては、理性がもたない。
「ふふっ そうですね」
セイはその場に立ちあがった。
「じゃあ先生お仕事頑張って下さいね」
そう言うと、沖田の頭をぽんぽんと軽く叩いた。
「ちょっ ちょっと富永さんっ!」
子供をあやすような行動に、沖田は真っ赤になってセイを見上げた。
「あははっ 先生可愛いんだもん。 じゃあまた明日ー。 さよーならー」
可愛く手を振ると、セイは荷物を持って教室を出て行った。
沖田はしばらく真っ赤になったままセイの出て行ったドアを見つめていた。
完全に女子高生に遊ばれている。
悔しいが、やっぱり好きになった者負けなのか憎めない。
女性経験が少ない自分が悪いのだろう。
沖田は持っていたシャーペンを机に投げ出すと、頭の後ろで手を組んだ。
何を考えてるんだ、自分は。
彼女は期間限定といえども自分の生徒なのに。
それに相手は高校生だ。
犯罪・・・にはならないが、恋愛対象にはならないはずなのに。
それに恋愛をする為に教育実習に来た訳ではない。
そう思っても、なかなか頭からセイの顔が離れない。
この学校にいるのも3週間だ。
それが終わってまた大学に戻れば元の生活が始まる。
どうせ一時的な感情だろう。
そう考えると、沖田は再び机に向って仕事を始めた。
実習生活も2週間が経った。
だいぶこの学校にも教える事にも慣れてきた。
この2週間で分かったことは、セイは男女問わず生徒からとても人気があることだった。
常に彼女の周りには友人がいる。
彼氏は・・取り合えずいないようだ。
ついそうやってセイの事を観察してしまう自分が何だか恥ずかしかった。
放課後毎日のように教室に残って次の日の授業の為にノートを纏める。
そして、なぜか2日に1回はセイがやって来て沖田をからかっては帰っていく。
毎回からかわれて悔しい思いをしているのにも関わらず、セイが来るのを心待ちにしてしまう。
かと思えば、授業中や他の生徒たちがいる間は、全く沖田の事などいないかのようにこちらを見ることは一切ない。
そんなセイの態度に、どんどん沖田はハマっていってしまっている。
これでは実習生活が終わっても、セイの事は忘れられないのではないかと不安に思ってしまう。
カラカラ・・
今日もまた沖田が1人仕事をしているとセイがやってきた。
「せーんせ」
わざと呆れた顔をして顔を上げた沖田に、セイは全く気にする様子もなく近づいてきた。
そして隣に座ると、いつものように沖田の隣に座る。
「何ですか?」
じっと沖田の顔を見てくるセイに、沖田は内心緊張しながらも平静を装ってセイを見た。
「私が来るのを待ってるかと思って」
「なっ!」
真っ赤になって慌てる沖田を、セイはふふっと笑ってただ見ている。
「先生って彼女いるんですか?」
「な、何ですか、急に」
「何となく。 だってあんまり女の子に慣れてない気がするから」
「・・・・」
ムッとなってセイから顔をそらした。
「ほら、すぐそうやって拗ねるし」
「・・・用がないなら帰って下さい。 忙しいんですから」
ぷくっと頬を膨らませながらそう言った。
「まーた。 先生ってば。 本当は帰ってほしくないくせに」
くすくすとセイは笑っている。
・・・完全にバカにされている。
「私が帰っちゃったら1人になっちゃいますよ? 遅くまでこんな所に1人だと淋しいでしょ?」
そう言ってまだ笑っているセイを、横目で見る。
悔しくて悔しくて仕方がないのに、どうしても言い返せない。
自分には教師としての威厳が全くないのか。
「大人の男ですからね。 1人でも淋しくないです。 さ、早く帰りなさい」
少しでも威厳を保とうと、少し厳しめでそう言った。
「はーい、分かりました」
立ち上がると、セイはまた沖田の頭に手を置こうとした。
しかしその手を沖田はつかんだ。
「そう何度も子供扱いされませんよ」
わざと感情を込めない口調でそう言うと、セイを見上げた。
「・・・」
腕を掴まれたセイは、少し驚いた表情をして沖田を見た。
「もうここには用事がなければ来ないで下さいね。 あなたの帰りが遅くなると心配ですし」
セイはその事には何も言わずにっこりとほほ笑むと、「じゃあまた明日」と言って教室を出て行った。
その瞬間、沖田ははぁっと息を吐いた。
頑張って平静を装ってはいたが、心臓はドキドキしっぱなしだった。
掴んだセイの腕が妙に細くて柔らかかった。
まだ手に残るその感触に、沖田は真っ赤になりながらギュッと手のひらを握った。
実習期間の3週間が経った。
沖田にとっては、初めての経験ばかりで早く過ぎて行った気がする。
あれから放課後セイが教室を訪ねてくる事はなかった。
来るなと言ったのだから当然なのだが、沖田は毎日何となくセイが来ることを待っていた。
教室でも自分の事を一切見ることも話しかけてくる事もないセイは、放課後会わなくなると全く接点がなくなる。
授業中も、沖田は意識してしまっていた為、セイを指すこともなかった。
妙な淋しさは感じるものの、どうせ実習が終わってしまえば会わなくなるんだと自分を納得させようとしていた。
「今日まで本当にありがとうございました」
最後の挨拶をする沖田の前では、クラスの女子達のすすり泣く声が聞こえる。
男子生徒も、沖田の前に来ると握手をしたりハグをしたりしてきた。
さすがの沖田も、生徒たちが自分の為にこんなに悲しんでくれるのを見て感極まって思わず涙が浮かんできた。
時折気になってセイに視線を向けるが、無表情でこちらを見ているだけだった。
彼女は自分がいなくなる事を微塵もさみしいと感じてくれていないのだろうか。
ホームルームが終わり、生徒達は沖田と挨拶を交わしながら帰って行った。
ただ、セイだけは目だけを沖田に向けると、会釈して何も言わず教室から出て行った。
あまりにも慌ただしく過ぎて行った日々が終わり、何となく心にポッカリと穴が開いたような気分になった。
名残を惜しむように、沖田は3週間過ごした教室に1人戻ってきた。
職員達からもらった花束を1番手前の机に置くと、何となく教壇に立ってみた。
教師になるつもりなどなかったのだが、先生も悪くないなと感じてしまう。
感慨深げに教室を見渡すと、沖田は帰ろうとドアの方を見た。
「!」
いつからそこにいたのか、ドアの前にはセイが立っていた。
「富永さん・・」
急に現れたセイに、沖田は驚いた。
セイはほほ笑むと、教壇をはさんで沖田の前に立った。
「お疲れさまでした」
「あ、ありがとうございます」
「来週から、もう沖田先生来ないんですねぇ」
笑っているが、何となく目に淋しさが含まれているように感じる。
「えぇ、来週からはまた大学生に戻ります」
「・・・・」
何も言わず、セイはじっと沖田の目を見る。
「な、何ですか」
見つめられている事が恥ずかしくなって、沖田が体を後ろにそらそうとした時。
いきなりセイがグイっと沖田のネクタイを掴んで自分に引き寄せた。
「っ!!!」
急に触れたセイの唇に、沖田は目を見開いて固まった。
目の前にセイの顔がある。
一体何が起こったのか分からず、ただされるがままになっていた。
しばらくして、ようやく唇を離したセイは、沖田の目を見てうれしそうに笑った。
「な、な、何をするんですかっ!!!」
真っ赤になったまま、後ろによろけた沖田は、黒板に背中をくっつけた。
「あははっ 先生真っ赤ですよー」
無邪気に笑うセイを、信じられない気分で見いていた。
「あなたねぇっ・・・」
文句を言おうとしたのだが、言葉が出てこない。
「だって先生、私の事好きなんでしょう?」
「えぇっ!!!」
一気に体温が上昇した気がした。
「先生奥手みたいだから」
「はぁっ!?」
沖田は倒れそうになるのを必死でこらえた。
するとセイは教壇を回り込んで沖田の前に来た。
今度は何をされるのかと、沖田は黒板に張り付いたまま身構えた。
しかしセイは黙って沖田に手を差し出してきた。
「お別れですね」
「え」
先ほどとは違い、急に悲しそうな顔になったセイに沖田はきょとんとセイを見下ろした。
「先生と出会ってとても楽しかったです。 ありがとうございました」
無理やり沖田の手を取って握ると、握手をしたままブンブンと腕を振った。
そして悲しそうに笑うと、手を放し沖田に一礼した。
「さようなら」
呆然として声を出すことも出来ない沖田をその場に残し、セイはスタスタと教室を出ようとした。
「きゃっ」
気がつくと、沖田はセイの腕を掴み自分の方へセイを引き寄せていた。
「沖田先生っ!?」
驚いたセイは、腕の中で身じろぎした。
沖田は腕の力を更に強めた。
沖田は自分でも何故そんなことをしてしまったのか分からずにいた。
しかしセイの柔らかい抱き心地と放たれる香りにそんな事どうでも良い気がした。
「富永さん・・・」
ようやく沖田は静かにセイの名を呼んだ。
「はい」
「私は初めて会った時からあなたが好きでした」
言うつもりなど全くなかったのだが、するっと言葉が出てきた。
「はい、知ってました」
「・・・。」
飄々と答えるセイに、思わず言葉を失ってしまう。
「だって先生分かりやすいんだもん」
腕の中のセイはまたもやくすくすと笑っている。
悔しい悔しい悔しい
完全に年下に手玉に取られている気がする。
「分かってて、私の事無視してたんですか」
放課後以外自分の事をとことん眼中に入れなかったセイを思い出した沖田はムッとした。
「何の事ですか」
しれっと答えるセイに、沖田は更に腹が立った。
バッとセイを離すと、セイの頭の後ろを掴んだ。
セイは突然の行動に驚いて目を見開いた。
だが思考がついて行く前に唇を塞がれた。
なんども口づけを重ねたあと、肩で息をしながら沖田はセイを離した。
セイも荒い息をしながら、横にある机に手をついた。
「私は・・・・大人の男ですよ」
「知ってますけど・・」
今さら何を言い出すのかと、セイは首をかしげた。
「大人をからかわないで下さい」
セイはきょとんとした。
「はぁっ!?」
「大人の男をからかうと、こうなるんですっ!!」
真っ赤になったまま、沖田はぷーっと頬を膨らませた。
「ぷっ」
思わず沖田の言葉に噴き出してしまった。
「ちょっ 何で笑うんですよう!」
「だってぇ、沖田先生 面白い」
お腹を抱えて笑うセイをただ憮然と見下ろしている。
「子供にからかわれないでください」
そのあとも、けらけらと笑っているセイを、沖田はムスッとむくれたまま何も言えず見ている。
苦しそうに机によりかかりながら、涙を拭き笑顔で沖田を見上げた。
「そっ それよりもっ! あなたはどうなんですかっ!」
やけくそ気味に沖田は真っ赤になって叫んだ。
「何がですか?」
「何がってっ! 私の事・・ その・・ 好き・・なんですよね?」
自分からキスしてきたということは、セイもきっと自分の事を好きなはずだ沖田は思った。
しかしセイの態度があまりにも飄々としていて、いまいち自信がない。
「あー、そんな事ですか」
「そんな事って」
「あっ もうこんな時間っ! もう帰んなきゃだ」
そう言うと、セイは笑顔でさようならと言って沖田に背を向けた。
「えっ ちょっ 富永さんっ!?」
沖田はあわてて荷物を掴むとセイを追いかけた。
「ねぇ、どうなんですかっ?」
セイに追いついた沖田は、セイの横に並んで歩きながら訊ねた。
「お腹空きましたねぇ」
「えぇっ?」
「おごって下さいv」
「おごってって・・ 別に良いですけど・・」
「本当ですか? カニが食べたいです」
「却下です」
「えぇ〜っ」
「って、そんな事よりもさっきの話どうなったんですか!?」
「じゃあー・・ フランス料理が良いです」
「却下です! っていい加減にしてくださいよ〜っ」
「もう、沖田先生って本当に可愛いんですから」
そう言うと、沖田の腕を組んだ。
突然の行動に、沖田は真っ赤になる。
「生徒に手出しても良いんですか、先生?」
楽しそうに沖田の顔を覗き込んだ。
「良いんです! 明日からはもう大学生ですから」
「そっかぁ。 じゃあ明日からも食事おごって下さい」
「そんなお金ありませんよっ! 学生ですよ! ・・・って、えっ!? 今のって・・」
「はい、行きますよー。 私、本当にお腹空いちゃいました」
沖田の質問など聞き流して、セイは沖田の腕を引っ張りながら学校を出た。
「富永さんっ! ちゃんと言ってくださいよう!!」
沖田の空しい叫びが、夜の街に響いていった。
*************************************************************************************
あさげさまよりリクエストを頂きました、
『女子高のセイちゃんに一目ぼれの総ちゃん、甘甘で!!』との事だったのですが、またもや
甘甘じゃなくなってしまいました(号泣)
本当に本当に本当に申し訳ありません(≧Д≦)
色んなパターンを考えたのですが、結局このような結果となってしまいました・・・
このリクエストに関しては、いつかリベンジさせて下さいっ!!
今度こそ、甘甘でもっと違う総司くんの一目ぼれを書かせて頂ければと思いますっ!
あさげさま、リクエストを頂きまして、ありがとうございました★
2008年12月8日