未来への地図 9
なかなか戻ってこない総司に痺れを切らした土方は、そっとセイの部屋に来てみた。
念のため中に入る前に中に部屋の中に聞き耳を立ててみた。
中から笑い声が聞こえてきた。
そおっとドアを開けて中を覗くと、2人は見つめ合い楽しそうに何やら話している。
土方は、音を立てないようにドアを閉めた。
そして安心したように笑い、その場を後にした。
「セイ、聞いても良いですか?」
総司はセイの手を握りながら、訪ねた。
「はい、何ですか?」
セイも嬉しそうに総司を見上げて答える。
「これからも・・・ その・・・ ここに今まで通り来ても良いですか?」
それを聞いて、セイの顔が緩んだ。
「はいっ! もちろんです! 絶対に来てくださいね!」
飛び切りの笑顔で言ったセイの顔は、とても可愛かった。
総司は、自分のつまらない嫉妬でセイを傷つけた事を、心から後悔していた。
記憶をなくしているセイが、自分の事を好きじゃなくても、セイと一緒に居られる事が幸せなんだと実感した。
セイに求められたいのではなく、自分がセイを求めているのだ。
そんな事前から分かっていたのに、セイから愛される事が当たり前になっていた今までは、その事を忘れてしまっていた。
それからも、総司は今まで通りセイの元に見舞いに行うようになった。
「セイl! さっきお母さんから聞いたんですが、来週の検査で結果がよければ退院できるそうですよ!」
病室に入ってきた総司は、開口一番嬉しそうにセイに伝えた。
セイの顔もぱぁっと明るくなった。
「本当ですか? わぁっ 嬉しい!」
総司は嬉しそうに笑っているセイのベッドの隣に座った。
「それで・・・ どうします?」
「・・? 何をですか?」
セイは、訳が分からないという顔で総司を見上げた。
「えっ・・・と。 そ、その・・・ す、住むところなんですが・・」
総司は顔を真っ赤にしながらセイに尋ねる。
セイは、まだ首をかしげている。
「は、ハッキリ聞きますが、もう一緒に住む家があるんです。 2人で!」
それを聞いたセイも、一気に顔を赤らめた。
「え・・ ふ、2人で?」
「や、やっぱり嫌ですよね? 婚約者と言ってもあなたには記憶がありませんからね。 やっぱり記憶がなくなるまではあなたはお母さんと一緒に暮らしたほうが良いかもしれませんね。 あ、でも安心してください。 何かあっては困るので、私もお家にはちょくちょく様子を見に行きますからっ。」
総司は早口でまくし立てた。
セイは呆気にとられて総司を見ている。
「え、えー。 じゃっ 今日は私はこれでっ!」
その場に居づらくなった総司は、その場を立ち上がろうとした。
「ま、待ってください!」
セイは、総司の袖を掴んた。
「な、何でしょうかっ!」
総司はやっぱり顔を真っ赤にしたままセイの目を見れずにいる。
「えっっと、その。 こんな私が一緒でも良いんですか?」
「えぇっ!?」
予想外の言葉に、総司は驚いた。
「私記憶がないから色々とご迷惑をおかけしてしまうかも知れませんが、それでも大丈夫ですか?」
「そ、それって・・・」
セイは頬を赤らめながら、総司を見上げた。
「もし総司さんが良ければ、一緒にいさせて下さい。」
総司はあまりの嬉しさに、ぽーっとセイを見下ろしていた。
「そ、その方が記憶も早く戻るかも知れないし・・」
セイも、自分の発言がかなり大胆なものだった事に気づいて、どんどん顔を赤らめながら、下を向いた。
ドアの向こうには、涙を浮かべて微笑んでいるリンがいた。
自分の娘には絶対に幸せになってほしい。
今のセイに必要なのは自分ではなく総司なのだ。
「じゃ、じゃあいつでもセイが来ても良いように部屋を用意しておきますから」
総司は嬉しそうに微笑んでセイを見た。
「ありがとうございます!」
コンコン
控えめに部屋がノックされ、リンが入ってきた。
「何だか楽しそうね。 何のお話かしら?」
「あ、お母さん。」
「はい、これ良かったら」
と言って、お菓子を総司に渡した。
「わぁっ! 良いんですか? これ大好きなんですっ!」
嬉しそうに受取り、早速食べようとした。
・・・が、手を止めてリンに向き直った。
「その前にお母さんにお話があるのですが。」
「はい、何ですか?」
リンは嬉しそうに総司を見た。
「セイが退院したら、その、い、一緒に住もうかと・・・」
さすがに記憶がないセイと2人で暮らしたいというのは言いづらかった。
しかしリンは笑顔で「分かりました」と答えた。
「でも、私のところにも2人で遊びに来てくださいね」
「もちろんですっ! お母さんこそ、いつでも来てくださって良いんですからね!」
「はい、行かせて頂きます。 セイにはまだまだ花嫁修業が必要ですからね」
と言って、2人で笑った。
総司とリンのやり取りを見ながら、セイは恥ずかしそうに微笑んでいた。