未来への地図 6



総司はぱたりと来なくなった。
セイは、総司が来る予定の曜日は毎回期待して待っていたが、2週間全くくる気配のない総司に、
諦めかけていた。
どうして総司が怒ったのか、全く分からない。
しかし、記憶がない今自分からしつこく電話をしたり連絡を取ると言う事は、どうしても気が引けて出来ないでいた。
総司が来なくなり、気落ちしているセイを母親のリンも心配していた。
リンもリンで、記憶がないセイをどう励まして良いのか分からず腫れ物に触るように接していた。

日課にしていた散歩にも出ず、食事もほとんど食べないセイを見て、今まで仲良く話していた患者達も、何があったのかと心配していたが、話しかけても「なんでもない」と言い張るセイに、どうしようもないでいた。



「総司、あいつ最近どうだ?」
一緒に昼ごはんを食べに行った先で、土方は総司に尋ねた。
「・・・・分かりません」
「はぁ? 何言ってんだ? 毎日見舞いに言ってんじゃねぇのか?」

「実は・・・」
と言って、総司はセイに対して言ってしまった事を土方に話した。

「お前バカだろっ!」
土方は怒りとも呆れとも取れる顔をして総司に言った。
「自分でもそう思います。」
「何もない病院で、楽しみ見つける為に友達作っただけだろうが。 それをつまらん嫉妬起こしやがって。  今のあいつには頼れるのはお前しかいないって事分かってんのか?」
当然の事を言われて、総司は落ち込んだように下を向く。

「すぐに行って来い。 それで謝れ。」
「それは出来ません。」
「あほ! このまま行かなければどんどん会いづらくなるだけだろうが」
「もう既に会いづらくなってますよ。 それに、セイは記憶がないんです。 私の事だって以前のように好きじゃないでしょうし。 私が怒ろうがセイには関係ないんですよ、きっと。」
総司の言葉を聞いて、総司がいじけている本当の理由が分かった気がした。

「そうか。 お前がいじけてる理由は嫉妬だけじゃねぇな。 あいつが記憶をなくした事でお前の事を前のように好きじゃなくなっちまったと言う事が1番の原因だろう。 それが今回の事で不満が爆発したんだ。 違うか?」
「・・・そうです。 セイに会いに病院へ行くたびにセイが思い出してないかと期待して行きます。 でもその度に期待を裏切られるんです。 それでもセイを支えたいと思うしセイに会いたいと思う。
なのにセイはそんな私の気持ちなんてそっちのけで他の男と仲良さそうに話してるんですよ。」
総司は箸で皿をコンコンと軽く叩きながらはなす。
「お前の気持ちは分かる。 でもあいつだって辛い状況なんじゃないのか? お前に対しての気持ちがあるかどうかは俺には分からん。 でも今頼れるのはお前しかいないだろう。 それをそんな別れ方してそれきり見舞いにも行ってないんじゃ、あいつは誰を頼れば良いんだ? 母親だってろくに話もしてないって言ってたじゃないか。」
土方は優しく総司諭すように話す。
それでも今はセイに会いにいけません。 こんな状態で行ってもセイを嫌な気持ちにさせるだけですから」
それきり、総司は何も話さなくなった。
土方はどうするべきかと考えた。





「おぅっ 調子はどうだ?」
突然病室のドアが開かれ、土方が中に入ってきた。
「あっ・・ 土方さん」
本を読みながらベッドに横になっていたセイが、飛び起きた。
土方の後ろを覗き込む。

「あぁ、残念ながら今日は1人だ。 お前に話があって来た。 入って良いか?」
さすがに女1人の病室に入るのは気が引けたのか、一応断る。
「はい、どうぞ。 イス用意しますね」
と、セイは折りたたみのイスを開いた。

「傷はどうだ?」
「もうかなり良くなりましたよ。」
微笑んで土方に答える。

「痩せたな。 ちゃんと食ってるのか?」
その質問に、セイは下を向いた。
「いえ・・ 最近あまり食欲がなくて」
「どうした?」
理由は総司だと分かったが、あえて訪ねた。
「ただ食欲がないだけです。」
下を向いて手持ち無沙汰に答える。
「今日はお1人でなんて、どうされたんですか?」

「総司の事で話があって来た。」
土方の言葉に、セイの顔色が変わった。