未来への地図 4
セイが入院してから1ヶ月がたった。
総司は毎日仕事が終わると必ず病院へ寄り、週末には泊り込んでセイの看病をした。
体の傷はだいぶよくなってきたが、依然記憶は戻らない状態だった。
「セイ! 体の具合はどうですか?」
今日も仕事を終えた総司がセイの部屋を訪ねた。
最初はほぼ寝たきりだったセイは、足の骨折もほぼ直り歩けるようにまで回復した。
「あ、総司さんこんばんは」
セイは笑顔で迎える。
「今日は会社の近くのケーキ屋さんで新作が出ていたので買ってきちゃいました」
と言って、ケーキの箱をセイに渡す。
「わぁっ ありがとうございます♪ 一緒に食べましょう」
「総司さん、クマひどいですよ?」
セイは、ケーキを嬉しそうにほおばっている総司の顔を見て、心配そうに言う。
「そうですか? 全然大丈夫ですよ」
と言って総司は笑った。
実際、総司はかなり疲れていた。
病院へ寄っても、帰ってから夜中まで毎日仕事をしていた。
朝は早くから出社して仕事を仕上げる。
体はくたくたなのだが、どうしても1日に1度はセイの様子を見に来たかった。
そんな総司にセイはだんだん惹かれ始めていた。
元は婚約者だと言っても、記憶をなくている自分にこんなに色々としてくれる総司を、セイは信頼して
いたし、セイ自身も総司が来てくれる事を毎日楽しみにしていた。
しかし、ここ最近の総司のやつれ方はひどかった。
甘いものは良く買って食べているようだが、あまり食事はしていないようで、最初見た時より明らかに痩せていた。
それに、顔色も悪いしクマもひどい。
さすがにこれ以上毎日お見舞いに来て欲しいとは言えない状況だと気づいていた。
「総司さん、毎日お見舞いに来てくれるのは本当に嬉しいんですけど、総司さんお仕事大変なんでしょ?」
「全然大変じゃないですよ。 それに、セイの顔を見ないと、疲れも取れませんから」
と、何事もないような口調でに話す。
毎回この話になると、総司は話を逸らしていた。
しかし、今回はセイは負ける訳にはいかないと思っていた。
「今の私には、総司さんしか居ません。」
「と、突然何をっ!」
総司は顔を真っ赤にして、口に入れた3個目のケーキを思わず噴出しそうになった。
「もし、総司さんが倒れてしまったら、私頼れる人が他にいないんです。 総司さんが疲れている姿も見たくありません。」
「疲れてませんてばっ」
セイはキリっとした目で総司を見る。
「いいえ、本当はかなりお疲れのはずです。 その顔色とクマで分からないはずないじゃないですか! それに最近痩せたでしょ?」
「ぐっ・・・ そ、それは・・」
「来て頂く日を減らしてはどうでしょうか? 例えば週末だけとか・・・」
「そんなの私が耐えられません」
総司は悲しそうな顔でセイを見る。
セイはその言葉がとても嬉しかったが、総司の体の事を考えてあえて流した。
「私も毎日総司さんには来て欲しいです。 でもそれで体こわされるのは絶対に嫌です。 週末だけ、来てもらえませんか?」
総司は、セイの言葉に長く1人で考えていた。
本心ではもっと睡眠時間が欲しいとは思っていた。
セイの言ったとおり、今自分が倒れる訳にはいかなかった。
「・・・・・分かりました。 じゃあこうしましょう! 週末には来ます。 でも、平日も1日だけ来ても良いですか? 例えば水曜とか。 やっぱりセイに1週間に1度しか会えないのは嫌なので。」
「じゃ、じゃあ水曜と週末と言う事で・・」
セイはそこまで言われると、やはり嬉しくて思わず受け入れてしまった。
「じゃあ、次は金曜の夜に来ますからね♪ それまでに仕事終わらせて来ます」
セイは、これで総司にもゆっくり休んでもらえると思い安心した
「じゃあ、ケーキ食べましょうか」
と言って、総司は食べかけのケーキをまた食べ始めた。
セイは、1個が食べきれないでいるのだが、まだ箱の中には2個ケーキが残っている。
「総司さん・・ 2人しかいないのに6個も買ってきてどうするんですか?」
「セイと私で3個ずつ食べようと思って買ってきたんですよv」
セイは、気持ち悪くなってきた。
(違う意味で入院が長引きそう・・)