未来への地図 15


「久美ちゃん? 知ってますよ」
食事をしながら、セイは今日あった事を話そうと久美の事を総司に訪ねてみた。

「会った事はありませんけど、セイが高校生だった頃良く名前は聞いてました。 仲良しグループのうちの1人だってあなたが良く言ってましたよ」
総司は、セイの作ったハンバーグを頬張りながら昔の事を思い出して微笑んだ。
「本当ですか? 久美ちゃんも、総司さんの事を私から聞いてたって言ってました。 彼女の事思い出せないけど、私の事を知ってる人に会えてとっても嬉しかったです」
「セイが嬉しいと私も嬉しいです。 近くに住んでるんなら、この家にも呼んではどうですか? 私もセイの友達なら会いたいですし」
「えっ? 良いんですか?」
セイは口に運ぼうとしていた箸を置いて、身を乗り出した。
「もちろんですよ。 あなたには、この家で自由にしててもらいたいんです。 私は何も縛る事をしたくないし、したいことをしてもらって良いんですよ。 変に気を使ったりしないで下さい」
総司の優しい言葉に、セイは嬉しくて泣きそうになった。

「総司さん、私は何を総司さんにお返ししたら良いですか?」
「えっ!? 突然何を言い出すんですか?」
セイの言っている意味が分からず、総司は不思議そうに聞き返した。
「だって、記憶がない私にこんなに色々してもらっているのに、私はまだ何も総司さんにお返ししてないんです。 私ばかりが総司さんに助けてもらっているんですよ。 私だって総司さんに何かしてあげたいんです」
「何言ってるんですか、セイ? 今こうしてあなたがこの家にいてくれる事が、私にとっては何よりも幸せな事なんですよ。 これ以上に欲しいものなどありません」
「でも、それは私が望んだ事ですし・・・」
「だから余計に嬉しいんじゃないですか。 以前のセイならともかく、記憶がないあなたが、今でも私と一緒にいたいと想ってくれるんですよ?」
それを聞いたセイは、頬を染め上目遣いに総司を見た。
「ほら、結局また私を喜ばせてるじゃないですか」
「あははっ じゃあ1つ私のお願い聞いてくれますか?」
「もちろんです! 何ですか?」
セイはぱぁっと顔を輝かせて訪ねた。
「今日も一緒に寝てください」
総司の言葉に、セイは首まで真っ赤になった。
「良いですか?」
総司はニコニコしながらセイに問いかける。
「はい・・」
恥ずかしくて下を向きながら、小さな声でセイは答えた。
「ありがとうございます♪」
総司は幸せそうに微笑むと、また食事を食べ始めた。
そんな総司をじっと見ていたセイだったが、フッと笑ってセイもハンバーグを口に入れた。




「良いお湯でした。 セイも入ってきて下さい」
髪をバスタオルで拭きながら、総司が洗い物をしているセイに声をかけた。
「あ、はい。 洗い物が終わったらすぐ入ります」
そう答えるセイに、総司は微笑むとリビングのソファに腰をかけた。

「?」
テーブルの横に隠すように置いてある雑誌が目に入り、総司は手にとってみた。

「求人誌?」

置いてあったのは、数冊の求人誌だった。
ところどころに折り目が入っている。

「あっ!!」
洗い物を終えたセイが、声を上げ総司に駆け寄ってきた。
そして、総司の手から急いで雑誌を奪い取る。

「セイ、どうして求人誌なんか・・・」
総司の問いに、セイは気まずそうに総司を見た。
「あの・・・ 仕事を探そうかと思って・・」
言いづらそうに、セイが答える。

「セイ、ちょっと座りなさい」
「はい・・・」
総司の言葉に、素直に総司の前に座った。

「どうして仕事を探しているのですか?」
「あの・・」
言葉に詰まるセイに、総司はふぅっとため息をついた。
「怒っている訳ではないのですよ? それに、私はセイが仕事をする事に反対するつもりはありません。 ただ、今はまだ記憶が戻った訳ではないですし、仕事を始めるのは早いんじゃないかと思うんです」
「はい・・」
「あなたの事だから、私にこれ以上迷惑をかけたくないからと思っての事でしょう?」
セイは、図星をつかれ何も答えられず下を向いてしまった。
「仕事を始めるのは、もう少し待ってみてはどうですか? 私が帰るのを待つだけの生活は、もしかしたらつまらないかも知れません。 でも、今仕事を始めてあなたに何かあったらと思うと、気が気じゃないんです」
「はい」
しゅんとしながらセイは答えた。
「でも、あなたの気持ちはとても嬉しいです。 ありがとう」
総司はにっこり微笑んだ。
セイは顔を上げて総司を見た。
「ぷっ なんて顔してるんですか? 私はあなたを責めてるつもりはありませんよ。 逆に前向きに行動しようとしているあなたを見るのはとても嬉しいです」
総司の笑顔につられて、セイも笑顔になった。
「疲れたでしょう? お風呂に入ってきなさい。 ゆっくりつかるんですよ?」
「はい」
セイは立ち上がり、風呂場に向かった。