未来への地図 11
「え・・・ ここにこれから暮らすんですか」
セイは、連れてこられたマンションを見あげて唖然とした。
「はいv どうですか?」
どう見ても、これは分譲マンション。
とりあえず賃貸マンションか何かに住むと思っていたセイは、びっくりした。
「これはまさか買ったんでしょうか・・・」
「そうですよ?」
「そ、そうですか・・・」
「どうしました? さぁ、中に入りましょう」
中に入ると、新品の家具がそろっていた。
新品のマンションに新品の家具。
(何だか本当に新婚さんになったみたい・・・)
セイは、部屋の中を見ながらほんのり頬を赤くした。
「おい、総司。 俺はもう帰っても良いか?」
後ろから不機嫌な声が聞こえた。
「えー?? もうですか? お茶でも飲んで行って下さいよぅ。 土方さんの好きなブルーマウンテンありますよ!」
「いや、2人で話したい事もあるだろう。 今日はこれで帰らせてもらう。 じゃあまた月曜会社でな」
そう言って、土方は部屋を出て行った。
「もう、お茶くらいしてってくれても良かったのに」
「そうですね」
セイは笑って答えたが、この部屋に総司と2人きりになった状況に、内心ドキドキしていた。
「あ、ちゃんとセイの部屋もありますよ!」
「えっ?」
「だ、だって・・・ いきなり同じ部屋だと・・・ その・・」
総司は顔を真っ赤にしながらあたふたしながら答えた。
それにつられてセイも真っ赤になった。
「とにかく! この家のものは全て私とあなたのものなので、何でも自由に使って下さいね! 何も遠慮はいりませんから」
総司は早口でまくし立てた。
「は、はいっ」
その日は、セイも退院したてという事で、家でゆっくりとした時間を過ごした。
しかし、お互いに緊張してギクシャクした状況で、逆に疲れていた。
実際、総司はセイが自分の事をどう思っているのか気になって仕方なかった。
ただ、一緒に住んでも良いと言ってくれた事で、多少は自分に好意を持ってくれているのだろうとは思っていたのだが、それが恋愛感情なのかどうかは本人の口からは決定的な事は何も聞いていないので分からない。
しかし、それを聞く勇気もなかった。
「何か、緊張しますね」
総司と向かい合わせのソファに座ったセイが、苦笑いしながら言った。
「そうですね・・ やっぱり一緒に住むのは早かったですよね。 すみません、私ったら」
総司は一緒に住もうと言ったことを後悔していた。
セイにこんなに気を使わせてしまうのなら、やはり記憶が戻るまで母親と暮らさせた方が良かったのかもしれない。
「いいえっ! そんな、謝らないで下さい! 私も総司さんと一緒に暮らしたいと思ったんですからっ!」
「えっ!?」
「あ」
思わず本心を言ってしまったセイは、顔を真っ赤にして口に手を当てた。
「本当ですか?」
総司は、あまりの嬉しさに声を震わせた。
「えっと・・ その・・ はい」
セイは恥ずかしさで下を向いてしまった。
「それって・・ もしかして私の事・・・」
「えぇぇぇっと・・」
総司の問いかけに、セイは答える事が出来ず、顔を手で覆って下を向いている。
総司は嬉しくて涙が出そうになりながらセイを見つめた。
まさか、記憶がなくなってもまた自分の事を好きになってくれたというのか。
「セイ?」
「・・・・はい、そう・・・です」
顔を上げないまま、セイは答えた。
総司は、黙って立ち上がりセイの目の前に立った。
突然の総司の行動に、セイも顔を上げて総司を見上げた。
少しの間見つめあった後、総司はセイの隣に座りそっとセイを抱きしめた。
「嫌だったらすみません」
総司は、これまでセイに触れたくて仕方がなかった。
しかしセイの記憶が戻るまでは我慢しようと決めていた。
なのに、セイの自分に対する気持ちを聞いてしまったら止められなかった。
突然抱きしめられたセイは、びっくりして総司の腕の中で固まっていたが、恐る恐る総司の背中に腕を回した。
セイの行動が総司は嬉しくて、ぎゅっとセイを抱く腕の力を強めた。