未来への地図 10
「総司・・ いい加減その気持ち悪い顔やめてくれ」
食堂でランチを食べていた土方は、我慢できなくなり総司に言った。
「だって〜、幸せなんですもーん」
にやにやしながら答える。
こいつを病院に連れて行ったのは間違いだったかも知れん・・・
土方は本気でそう思っていた。
「あっ! セイ明日退院なんですっ! 土方さんも来てくれますか?」
「それは良いが・・」
そこまで言って、土方は口をつぐんだ。
2人のイチャイチャを目の当たりにすることになるだろうと思うと、気が滅入る。
「じゃあ、明日10時に迎えに来てくださいね♪」
「はぁっ!? 何で俺がっ!! 自分の車で行けっ!」
「車検に出しちゃってるんですもーん」
「・・・」
これ以上一緒にいると、ピンク色の空気に汚染されそうだになった土方は、黙って立ち上がった。
「じゃ、よろしくお願いしますね! 土方さんv」
無視してその場を後にした。
結局総司を迎えに行った土方は、総司を乗せ病院へ向かった。
「新居の住所ナビに入れちゃいますね」
嬉しそうにナビに住所をインプットしている総司を、土方は黙ってみていた。
しかし、ついこの前までの作り笑いをしていた総司の事を考えると、内心嬉しくて仕方なかった。
こいつにはあいつしかいないからな。
今までにも彼女はいたのだろうが、土方に紹介してきたのはセイが初めてだった。
それから2人を見ているが、お互いを必要とし合っていた。
そして必要としながらも依存しすぎない理想のカップル。
お互いを尊重し、愛し合っている。
自分はそんな恋愛をしてこなかったなと思う。
可愛い後輩が幸せになるという事は、土方にとっても微笑ましい事だった。
「セイ! 迎えに来ましたよ!」
総司がセイの病室に入ると、1組のカップルがいた。
「あ・・ お客さんでしたか・・」
誰もいないと思い、いつも通りラブラブモード全開で入ってしまった事を一瞬後悔した。
・・・が。
そのカップルの男の方に見覚えがあった。
セイが以前中庭で話していた男だった。
「あ、総司さん・・」
セイも、喧嘩の原因になった藤堂平助が居るのを見られ、焦った。
「あれ? もしかしてセイちゃんの彼氏さんですか?」
藤堂は、人懐っこい笑顔でニコニコと話しかけた。
「はい」
総司は答えるが、顔が引きつっている。
「俺、以前までここに入院していた藤堂平助です。 今日セイちゃんが退院するって聞いて、お祝い言いに来たんですよ。 こっちは彼女のユウです。」
紹介された彼女は、ぺこっと頭を下げた。
総司の反応を、セイははらはらしながら見ていた。
「沖田総司です。 わざわざセイのお見舞いに来てもらっちゃってありがとうございます」
セイの心配をよそに、総司の態度は普通だった。
しばらく話をして、藤堂とユウは帰っていった。
「総司さん・・」
2人が帰り、気まずくなったセイは総司の様子を伺った。
「良い人そうな人達でしたね」
総司はニコニコとセイに言った。
「え??」
総司の反応が以外でセイは驚いた。
「やだなぁ。 そんな顔しないで下さいよ。 あの事は私だって反省してるんですから」
その言葉を聞き、セイはホッとした。
「荷物はこれだけですか? 下で土方さんが待ってますよ。 長くなっちゃったから怒ってるかも知れませんけど」
総司はセイの荷物を持ちながら言った。
「はい、これだけです。 土方さんも来てくれたんですか? 急がなくちゃですね」
久々に私服を着て、軽く化粧をしているセイを見て、総司はドキドキしていた。
「さ、行きましょうか」
そう言って、セイの手を握った。
突然握られた手にびっくりしたセイだったが、あまりにも自然なその行動が嬉しかった。
総司は総司で、いつもの癖で手を取ってしまい一瞬焦ったが、素直に着いて来てくれるセイに喜びを感じていた。
下へ降りると、不機嫌そうな顔で2人を待っていた土方がいた。
「おせーぞ。」
「すみませんっ! お友達が挨拶に来てくれてたんです。 それに土方さんが来てくれてるとは思わなかったので」
申し訳なさそうにセイは答えた。
「良いから乗れ。 家まで送ってやるから」
「はい!」
後部座席で幸せそうに微笑みあっている2人をバックミラーで見ながら、土方は2人の新居へ向かって車を走らせた。