居酒屋 新撰組
毎週金曜日になると、この居酒屋新撰組では必ず開かれる集会があった。
その名も『金曜会』
少々名づけが安易過ぎる気がするが、そこはスルーして頂いて・・・
あ、誰か着ました。
今日の1番のりは、壬生保育園ばら組に通っている勉くんのパパ、斉藤さんです。
斉藤さんは、まだ誰も来ていない事に気づいても、全く気にしません。
注文を取りに来た店員さんに「いつもの」と言うと、微動だにせずじっと酒が来るのを待っている。
その姿はまるで仏様・・・・
次に来たのは、同じく壬生保育園ひまわり組に通っている優奈ちゃんのパパの平助さん。
「あ、斉藤もう来てたの?」
斉藤は微動だにしない。
「あ、そっか。 お酒がまだ来てないから瞑想してるんだね」
と、藤堂さんは可愛く良いながら斉藤さんの隣に座る。
注文を取りに来た店員さんには生グレープサワーを頼んだ。
そこへ、うるさい2人組みが来た。
「よーう! まだ2人しか来てないのかぁ?」
「俺もう今日は昼過ぎから楽しみでうずうずしてたんだぜぇ」
騒がしく入ってきたのは、たんぽぽ組の茂くんと磯子ちゃんのぱぱ、永倉さんと原田さんだ。
「原田さん達来たら、いっきにうるさくなったよー」
藤堂さんが、嬉しそうに言う。
「なんだ? 斉藤はまた瞑想か? 早く飲み物持ってきてやれー」
と店員に冗談めかして叫ぶ。
「後は誰が来てないんだ?」
「総司と土方さんがまだだよねぇ?」
そこで、やっと斉藤の日本酒がピッチャーで運ばれてきた。
「あ、斉藤来たぜ」
やっと斉藤は目を開け、他の誰とも口をきかず酒を注ぐ。
「日本酒ピッチャーで飲む奴は斉藤ぐれぇだな」
相変わらず無表情の斉藤さんだが、大好きなお酒が来てとっても上機嫌になっている。
ドタドタドタドタドタドタッ
何だかうるさい足音が聞こえてきました。
「斉藤さん!!!! 許しませんからねっ!」
と、席に来るなり涙目で斉藤さんに怒鳴ってきたのは、ばら組の鈴ちゃんのパパの沖田総司さん。
飲んでいた者は一同唖然として沖田さんを見ている。
「な、なんだよ総司。」
「そうだよ。 来て早々何泣いてんだよ」
沖田さんは皆を無視し、斉藤さんを睨んでいる。
「私のセイを取ったでしょ!!!」
「「「え〜〜〜〜っ!!」」」
当の斉藤さんは、全く動じずお酒を飲んでいる。
総司は、斉藤さんの隣に座っている藤堂さんをどかせて、無理やり斉藤さんの隣に座る。
「何とか言ってくださいよぅ!!!」
沖田さんは斉藤さんを揺らしながら泣きながら叫んだ。
「何の事だかさっぱり分からんな。」
「嘘つかないで下さい!」
「第一、彼女にはあんた達の結婚式以来1度も会ってない。」
実は斉藤さん、沖田さんの奥様のセイさんの事が昔は大好きでした。
でもこれは沖田さんしか知りません。
今は斉藤さんにも時尾さんという素敵な奥様がいらっしゃるので、きっともうセイさんの事は良い思い出と思っている事でしょう。
「本当ですか?? だって、昨日セイが、私と別れて斉藤さんと再婚するって言ってましたよ!」
ブーーーーっ!!
それまで全く動じていなかった斉藤さんは、その言葉に思わず飲んでいたお酒を噴出してしまいました。
「何だ? 総司。 本当にお前のかみさんそんな事言ったのか?」
「えーっ セイちゃんて斉藤の事好きだったの?」
と、周りは楽しそうにわいわいと盛り上がっている。
今日の話題は、沖田さん夫婦と斉藤さんのスキャンダルに決まったみたいです。
「おい総司。 どういう事か説明してみろよ」
いきなり話しかけてきたのは、とっくに到着していたくせに、影から楽しそうにこっそりこの騒ぎを
見物していた、土方さん。
土方さんは何を隠そう、壬生保育園の保父さんだ。
「土方さぁぁぁぁぁぁんっ」
土方さんを見つけるなり、飛びついて泣いてます、沖田さん。
「いちいち抱きつくな、鬱陶しい!」
土方さんは沖田さんを無理やり引き剥がしてイスに座り、「生と枝豆」と店員さんに注文しています。
「で、何があったんだ?」
土方さんは、さぞ楽しそうに沖田さんに尋ねます。
でも沖田さんはそんな事に気づかず、本当に心配してくれているものと信じきっています。
「昨日、セイにプレゼント買ってきたんです。 絶対喜ぶと思って、サンタさんの刺繍がしてある腹巻と毛糸のパンツを50枚買ったんですよ! そしたら、それを見るなりセイ怒っちゃって・・・」
全員呆然として沖田さんを見ている。
あ、永倉さんは口に運ぼうとしていたから揚げ落としました。
「お前・・・ もっとましなもん贈れねぇのか?」
土方さんはちょっと引き気味です。
「だって、女性は冷え性って言うじゃないですか? セイが風邪ひいたらかわいそうと思って、何枚も重ねても大丈夫なように沢山買ってきたのに・・・ それに、もうすぐクリスマスだからサンタさんのプリントがあれば喜んでくれると思ったんですよぅ」
沖田さんがそれを買ったときの店員さんの顔が目に浮かぶ・・・
「そしたらセイなんて言ったと思います?? 、斉藤さんの奥さんは、斉藤さんから素敵な下着もらったり花束を毎月贈ってもらってるって。」
一同斉藤さんを見る。
表情には全く出ていませんが、斉藤さんは心の中では泣いている事でしょう。
何だか荷物をまとめ始めましたね・・・
「だから、私と別れて斉藤さんと再婚するんだーっって言うんですよ! 」
「総司、お前アホか?」
土方さんはもうすっかり呆れてしまってます。
「私だってちゃんと言い返しましたよ! 重婚は犯罪ですって!」
(((そこじゃねーだろっ!)))
皆さん、すっかりテンションが下がってしまったようです。
お酒が進まなくなってしまいました。
土方さんのビールと枝豆が運ばれて来てますが、泡が既になくなってきてますね。
「・・・・総司。 お前らの夫婦喧嘩にいちいち俺達を巻き込まないでくれ。」
土方さんは頭痛がし始めた頭を押さえてます。
「私は真剣ですっ!」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
「あっ 何で皆となりの席に移動するんですかっ」
皆は沖田さんを無視して、隣の席で盛り上がり始めました。
沖田さんは1人でしくしく泣きながら「せぃぃぃぃ」とつぶやいてます。
「すみませーん、うちの旦那来てませんかぁ〜?」
そこに可愛い声がした。
声の方を見ると、先ほどまで噂になっていた沖田さんの奥様のセイさんが、娘の鈴ちゃんを抱き立っていました。
沖田さんは、セイさんをみるなり、嬉しそうに立ち上がりました。
「セイ!! お迎えにきてくれたんですかっ??」
皆さんも、「総司良かったじゃねぇか。」
「怒ってないってよ」
と励ましてくれます。
すると、セイさんはすたすたと沖田さんに近づき、
「はい、これ。 今日お財布忘れていってたでしょ? 持ってきてあげましたから。 どうぞごゆっくり飲んできてください。 あ、どうせなら明日からお休みだし、2〜3日泊り込みで飲んでいらしたらいかがですか?」
と、とても素敵な笑顔で沖田さんにお財布を渡しながら言いました。
そして、全員が石化している中、
「それでは皆さん、うちの旦那をよろしくお願いしますね」
とびきりの笑顔で言って、さっさと帰ってしまった。
沖田さんはしばらく動けないでいます。
「そ、相当怒ってんな、あれは」
「可愛い顔してるのに怖いんだね、セイちゃんて・・・」
「・・・・・(久しぶりに見が、やはり可愛かった・・・ 斉藤心の声)」
「総司」
土方さんは沖田さんの肩をポンと叩く。
「今日は付き合ってやる。 飲もう」
と、未だ立ち直れないでいる沖田さんを自分達の席に座らせる。
「今日はおごりだ、総司!」
「どんどん飲んじゃえー」
と、今日も金曜会は盛り上がる。
沖田さんは泣きながら、あまり飲めないお酒をヤケ酒とばかりに次々煽っていく。
「セイのばかーっ」
次の日の朝帰った沖田さんは、ドアロックの掛かったドアの前で、泣きながら正座して
「セイーーっ ごめんなさいー! もうしませんからー」
と、謝っているのを近所の人に目撃されていた。