慟哭  9話




総司は、以前斉藤がセイに出会ったという墓を訪れた。
場所を知らなかったのだが、里から聞いていたのだ。

セイは、1日に1度は必ず墓に参っているという。
しかし毎日時間はまちまちで、いつ墓に行けば会えるは分からない。

それでも会える可能性があるならと、総司はここに来てみたのだ。
あたりを見渡すが、セイの姿はない。

総司は、取り合えずセイが姿を現すかも知れないと思いその場に座り込んで待つ事にした。

総司の頭の中は、先ほどの松本の言葉がぐるぐると回っていた。

あの時セイを連れ出していれば・・

そんな事ばかり考えてしまう。
自分がついていればあんな事にはならなかったのではないかと。




しばらくじっとセイが来るのを待っていたが、だいぶ日が傾いて来た。
総司は、はぁっとため息をつき立ち上がった。

今日はもう来ないだろう。
今の状態のセイが、暗くなってから1人で外に出るはずがない。
そう思い諦めて屯所へ戻る事にした。



屯所に戻った総司は、まず土方の部屋を訪れた。
「おぉ、総司。 丁度良いところに来たな」
土方の部屋へ入ると、そこには近藤の姿があった。
「近藤先生。 いらっしゃったんですか」
総司は、微笑みながら2人の前に座った。

「総司、これを食べなさい」
近藤は総司に手元にある団子の入った箱を差し出した。
「わぁっ 頂きますっ!」
嬉しそうに団子を掴み、頬張った。
「先生はこちらで何をしてらしたんですか?」
「いや、ちょっとトシと久しぶりに話しをしていただけだよ。 特に何をしていた訳ではない」
近藤の言うとおり、雑談をしていたのだろう。
土方が邪魔をされて多少機嫌を悪くしているのが分かる。

「ところで総司。 何か用だったのか?」

今日松本に会った事、そしてセイに何があったのかを聞いた事を土方に話そうと思いここへ来たのだが、とても
そんな話が出来るような空気ではない。
それにもしその話をここですると、自分が知ってしまった事をここにいる大好きな師はきっと心を痛めるだろう。

「いえ、暇だったので土方さんに遊んでもらおうと思っただけですよ」
「ちっ お前は何でいつも俺んとこばっかきやがるんだ。 もっと他にいるだろうが」
そこまで言った土方は、ハッとした。

しまった。

土方は心の中で舌打ちをした。

「だって、もう神谷さんもいないし甘味処に付き合ってくれる人がいないんですもん。 斉藤さんなんて絶対一緒に行ってくれませんしね」
土方の思いを余所に、総司は明るい声で答えた。
「それに、今は土方さんからかって遊ぶのが楽しいですから」
そう言うと、土方の発句帳を手に取った。

「お前っ! 返せっ!」
総司の手から奪い取ると、総司の頭をボカっと殴った。
「痛いじゃないですかぁ」
「うるせぇっ  団子全部やるからとっとと出て行きやがれっ!」

土方は団子の箱を総司に押し付け、総司を無理やり部屋から押し出した。
「えぇ〜っ!! どうしてですかぁ! 私も近藤先生とお話がしたいですよぅ」
そう土方に訴えるが、土方は相手にしない。

ピシャンと締められた襖を見て、総司はふぅっと息を吐いた。

近藤に悲しい顔を見せる訳にはいかない。
総司は、さもセイの事など気にしていない風を装うのに必死だった。
正直、土方に追い出されて安堵した。

「明日も行ってみよう」
総司はそうつぶやくと、その場を離れた。




「何で総司を追い出した?」
ふんっと鼻を鳴らしてドカッと座り込んだ土方に、近藤は尋ねた。
「別に」
「・・・そうか」

土方は分かっていた。
自分の言葉をわざと総司が茶化して誤魔化したのを。
そして、本当はセイの話をしに来たのだろうという事も薄々感ずいていた。

土方は、近藤に気づかれないよう小さくため息をついた。



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