慟哭 3


セイが隊を出てからひと月が経った。
最近では、セイの事を口にする者も少なくなってきていた。

「では皆さん今日も元気に巡察に出かけますよー」
総司は、1番隊を率いて巡察に出ようとしていた。

「総司、気をつけて行けよ〜」
1番隊と入れ替わりに戻ってきた10番隊の組長である原田が、すれ違いざまに総司の肩をぽんと叩いた。
「原田さん、ありがとうございます。 行ってきます」
総司は原田に微笑みながら答えた。

その様子を、じっと冷たい目で見ている人物がいた。

10番隊隊士の、中村五郎だった。

何だよ、沖田先生の野郎。
神谷がいなくなったってのに何であんな元気なんだよ。
可愛がってたくせに。


そう、中村はセイの脱退がひと月経った今も気になって仕方がなかった。
突然病と言って脱退したセイが、嘘ではないかと思っていた。
巡察中も、町を歩けばいつの間にかセイを探してしまう。

病で脱退というからには、松本法眼の所にいるのかと思い何気なく偵察にいったのだがセイらしい人物は
いる気配がなかった。

(一体どこにいるんだよ、神谷・・)
セイがいなくなってからというもの、中村の頭の中はセイの事でいっぱいだった。


そして、ここにもセイの事が頭を占めている人物が1人。
セイの父と兄の墓の前にいた。
「神谷はいまどこで何をしているのだ」
線香をあげながら、斉藤はつぶやいた。

『兄上〜』
そう言って可愛い笑顔で走ってくるセイの姿を思い浮かべる。

「どうか神谷に会わせてくれ」
そう言って、墓に向かって手を合わせた。




「沖田先生、どうされたんですか?」
先ほどから立ち止まってぼーっと何かを見つめている総司に、隊士が不思議に思って話しかけた。

「あ、すみません! 何でもないです」
慌ててそういうと、総司は再び巡察に集中して歩き始めた。

まただ。
最近いつもそう。
セイの背格好に似た若い娘を見ると、思わず立ち止まって見入ってしまう。
遠くにいる娘だと、セイかどうかを判別出来るまで見てしまう。

普段は、セイがいなくなった事を気にも留めてないそぶりをしているが、ここ最近になって特にその行動はひどくなっているように思える。

(何て女々しいんだ、私は)
そう言って心の中で毒づいてはみるものの、やはり気を抜くと自分でも気がつかないうちにそのような行動に出てしまっている。

総司は、思いっきり頭を振った。

しっかりしろ!
こんな事では1番隊組長は務まらない!

そう自分に言い聞かせ、巡察に集中する事にした。



先日、気になった総司は里の元を訪れた。
しかし、里の住んでいた家は既に空き家になっていた。
セイに養ってもらっていた里は、セイが脱隊した事によりここには住めなくなってしまったのか。
総司は、セイが脱隊した本当の理由を里なら知っているのではないかと思った。
しかし、自分にも何も言わず出て行ったセイの事を考えると、里に聞けなくて良かったと思い直した。



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